NTTデータが2013年9月から定期的に開催するオープンイノベーションフォーラム「豊洲の港から」。このほど、2019年度の第1回定例会がNTTドコモ・ベンチャーズのイベントスペースにて行われ、華々しくスタートを切った。次世代ビジネスを牽引する有力ベンチャーと大企業が活発に意見を交わしたイベントの様子をレポートする。
 NTTデータが2013年9月から定期的に開催するオープンイノベーションフォーラム「豊洲の港から」。このほど、2019年度の第1回定例会がNTTドコモ・ベンチャーズのイベントスペースにて行われ、華々しくスタートを切った。次世代ビジネスを牽引する有力ベンチャーと大企業が活発に意見を交わしたイベントの様子をレポートする。

課題は多いが、解決した先に未来が見えてくる

 第二部のパネルディスカッションではベンチャー4社に加え、NTTドコモ コネクテッドカービジネス推進室 戦略企画担当 大 慶二郎氏、NTTデータ 第一公共事業本部 第一公共事業部 市場創造推進室 課長 町田宜久氏が参加。今後数年間でMaaSがどのように発展していくべきかを中心に意見を交わした。

パネルディスカッションの様子。モデレーターはNTTデータの残間氏が担当した

 ディスカッションに先立ち、NTTドコモの大氏は、同社が得意とする人流把握の技術を活用した“移動の需要マッチング”に取り組んでいる事例を解説。実用化済みのAIタクシー、九州大学のAI運行バスなどを挙げながら「NTTドコモはアセットと顧客接点の多さが特長。消費者向けのサービスをフックにして、将来的にはまちづくりの観点から新規ビジネスを生み出していきたい」と語った。

NTTドコモ コネクテッドカービジネス推進室 戦略企画担当 大 慶二郎氏

 次にNTTデータの町田氏が、同社の自動運転のトライアルについて報告。「先ほどのピッチにもあったように、地方になるほど交通課題は多い。地元の交通事業者と組んでその地域での運行サービス事業を展開する。そこに自動運転が役立てるように、我々が仕組みを提供する」と話した。まずは特定地域限定での自動運転となるレベル4を目指すが、各地で実証実験を行い、技術面では群馬大学と連携するなど、具体化に向けて着々と準備が進む。

NTTデータ 第一公共事業本部 第一公共事業部 市場創造推進室 課長 町田宜久氏

 パネルディスカッションは「今後3〜5年間のビジョンについて。どのようなステップで進めていこうとしているのか」との質問から始まった。A.L.I. Technologiesの片野氏は「弊社が取り組んでいるのは空中領域。いずれは空の交通手段も含めてすべてつながる世界観を目指したいが、数年先では無理がある。本格的なサービス提供まではまだまだ時間がかかるだろう」と語った。

 “宇宙からの視点”を提供するアクセルスペースの宮下氏は、「3~5年ならAxelGlobeが完成している予定なので、地球のほぼすべてを毎日更新して見れるようになる。最新の交通状況が日々アップデートされる状態だ」と回答。さらに衛星が得意な俯瞰の視点を活用して、事故発生マップのAI解析にも衛星画像が使えるのではないかと予想した。

未来を見つめる片野氏、宮下氏

 電脳交通の北島氏は「地域のバスがクリアできない問題を、ドアツードアのタクシーが解消するのではないかと言われている。この2〜3年で、ドライバーが人を運ぶ価値とは何かを定義しなくてはならない。だが、その答えはない」と話す。さらにMaaSに関しては「最大の課題は、誰がどう主導して責任を持ち、費用を負担するかにかかっている。それに関してもこの2〜3年で、1つの形が見えてくるのではないか」とした。

 CBcloudの皆川氏は「地域からは人がいなくなっているのに、届けたいモノは増えている。客貨混載といった事例が地方でどんどん発生しているのはそのためだ」と、時代に即したニーズが生まれていることに触れた。そして数年後というわけではないが、その垣根が消えるブレイクポイントを見越して、配送ドライバーに新たな価値提供をしていく必要があることを強調した。

北島氏、皆川氏は現実に起きている社会課題を解決しようと奮闘する

 NTTドコモの大氏は「先ほど話した移動データのマーケティングを通じて、BtoBの領域に活用できる未来を見込んだビジネスを考えていきたい」と、自社の強みを活かしたビジネス創出に挑む姿勢を見せた。

 NTTデータの町田氏は「2022年には通常の移動サービスでも自動運転が許可されているような法整備を望む」と話した。またバスとタクシーの規制を緩和して「バスのオンデマンド化や乗り合いタクシーの実現ができたらさらに自由度が高まるはず」と、従来の交通手段でも、やり方次第では十分に利便性が高まるとの見方を示した。

 2つめの質問は「サービスやソリューションを実現するための課題とは何か?」。片野氏は「どこまで行けば安全なモビリティとして認知されるのか。浮いて走れることによる渋滞の解消、災害地での移動などに対して、規制がどのように変わっていくのかにも注目している」と、率直な感想を漏らした。

 宮下氏は「宇宙活動法、衛星リモートセンシング法という法律が整備されたことにより、逆に指針ができてやりやすくなった」と言う。日々更新される衛星画像利用に関してはセンシティブな個人情報の扱いをどうするかの課題はあるものの、「それを考えたら始まらない。まずは機体を打ち上げてサービスを構築する」(宮下氏)と決意を述べた。

 「タクシーの場合、エリアに免許がひもづいている。お客さんがたくさんいるからと言って都会には行けない。広義の社会資産としてもまだまだ障害が大きい」と切り出したのは北島氏だ。現実的にドライバーのなり手がいない状況を変えるためには「ビジネスとしてもう少し人が来る、人の注意を惹きつけられる場所があるかどうかが大事」と訴えた。

 皆川氏は「日本人は今、ECで購入したら無料でモノが届くことがごく当たり前になってしまっている。だが届けてくれることは本当はすごいことであり、届ける側もそこを認識しなくてはならない。小さなことだが、配達される側が感謝するだけでも違ってくると思う」と、日本におけるドライバーの価値が低いことに警鐘を鳴らす。続けて都心部ではシェアリング配送サービスのUber Eatsの配達パートナーが増えている例を出し、「空いている時間で荷物を運ぶバイトのスタイルが確立されれば、もっともっと物流の効率化ができるのではないか」と指摘した。

 大氏が課題とするのは「リアルタイム移動データをいかにして確立していくか」という点。リアルタイム性の精度を高めることで「今はこの場所が混んでいてこちらが空いている、そうした情報を即時に共有できれば利便性はかなり高まる」とした。

 町田氏は、「自動運転がすべてを解決するバラ色の手段ではないことをまずは知ってほしい」と言う。これは、実証を重ねる中でいろんな課題が見えてきた当事者ならではの言葉だ。認識の差を埋めるためには「等身大の自動運転を体感してもらい、現状を理解した上で取り組んだほうがいい」とアドバイスした。

 ワクワクする未来を見つめるベンチャーと、足元の緊急課題を何とか救おうとするベンチャーが同席した今回の定例会。その一方で膨大なデータとアセット、タッチポイントを持つNTTドコモやNTTデータは、大企業にしかできないスケールの大きな協業や地域実証をリードしている。

 いずれにしろ、MaaSはそれぞれのステークホルダーがシームレスに連携してこそ成り立つ世界観だ。その意味でも、オープンイノベーションの粋を集めた取り組みとも言える。100年に一度のモビリティ革命が起きようとしている今、企業規模を超えた有機的なアライアンスによって、少しでも早く人びとの生活を変える次世代サービスが生まれることを望む。

■関連サイト

オープンイノベーションフォーラム「豊洲の港から」
http://oi.nttdata.com/

第10回 豊洲の港から presents グローバルオープンイノベーションコンテスト
http://oi.nttdata.com/contest/

<前へ   

お問い合わせ

ドコモ・イノベーションビレッジ事務局
E-mail:village-application@nttdocomo-v.com