“エモくて映(ば)える”出張撮影サービスとして人気のラブグラフに、NTTドコモ・ベンチャーズが出資した。さっそくNTTドコモの「dフォト」とコラボし、新たな写真サービスの開拓に挑んでいる。シナジーと今後の展望について、関係者が語った。
  “エモくて映(ば)える”出張撮影サービスとして人気のラブグラフに、NTTドコモ・ベンチャーズが出資した。さっそくNTTドコモの「dフォト」とコラボし、新たな写真サービスの開拓に挑んでいる。シナジーと今後の展望について、関係者が語った。

たった1人から始まった記念写真業界のパラダイムシフト

 ラブグラフをご存知だろうか。家族、恋人、友だちなど、かけがえのない関係にある人たちとの“色あせない記録”を残す出張撮影サービスである。サービスページの作例をご覧いただければわかるように、その作品群は抜群にエモく、ぐっと心に迫るものばかり。SNS全盛で写真に対する審美眼が急激に高まった昨今だが、そんな厳しい批評眼を持つユーザーさえも唸らせる高いクオリティを誇る。

ラブグラフのトップページ。“エモくて映える”作例が数多く掲載されている

 それもそのはず、ラブグラフに登録しているのは厳格な審査を経て採用されたカメラマンたちばかり。撮影技術はもちろんのこと、それ以上に撮影対象者の懐に入り、自然な表情を切り取るコミュニケーション能力を重視する。公園や花畑、海など開放的なロケ地にこだわるのもそのためだ。これまでのようにスタジオの中で撮ったかしこまった写真はラブグラフには存在しない。その点でも、記念写真業界のパラダイムシフトと言っても過言ではないだろう。

 今の時代のニーズを捉えたこのアプローチは、CEOである駒下純兵氏がカメラマンであることが大きい。関西大学に入学後、写真家を目指してカップルの写真を撮っていた彼は、自らの作品をホームページで公開したのを機に、あれよあれよという間に各地から依頼が舞い込むようになったという。その反響を目の当たりにして、駒下氏は2015年にラブグラフを起業した。

 以降は順調に成長曲線を描いている。これまでに16000組を撮影し、ユーザーからの平均評価は5点満点中4.90。躍進ぶりを反映するかのように、2019年2月にはNTTドコモ・ベンチャーズをはじめとする複数の投資家を引受先とした総額約2億円の第三者割当増資を実施。つづく3月には独自のカメラマン育成プログラム「LGC(Lovegrapher Creation)」を発足させ、トレーニング体制も整えた。

増資により、まずはクリエイターの育成に注力する

 NTTドコモ・ベンチャーズでは出資を機に、NTTドコモグループとのシナジーを検討。そこで結びつけたのが「dフォト」だ。dフォトは撮影した写真をフォトブックなどにプリントアウトするサービスで、両者のターゲット層が一致することを踏まえてこれまで共同キャンペーンを実施してきた。2019年9月10日からは、両者のコラボによる出張撮影キャンペーンが始まった。dフォトユーザー限定で割引価格で出張撮影ができるもので、上々の滑り出しを見せている(申し込み期限は2019年10月31日)。

 この絶好のタイミングで関係者に話を聞いた。参加したのはラブグラフ CEO & Photographer 駒下純兵氏、NTTドコモ コンシューマビジネス推進部 ライフイベント フォトビジネス担当主査 佐藤裕介氏、NTTドコモ・ベンチャーズ ディレクター 舞野貴之氏の3人。

渡りに船だった協業、いずれはカメラマンの作業支援テクノロジー開発も視野に

――改めてラブグラフの概要を教えていただけますか。

駒下氏 おもにカメラマンの撮影マッチングプラットフォームです。近年、デジタル一眼カメラの性能が向上し、かっこよく、きれいな写真を撮影できるカメラマンが増えてきましたが、それだけに競争も激しくなかなか仕事に結びついていません。

ラブグラフのビジョンを説明する駒下氏

 その一方で、美しい家族写真や恋人との写真を残したいとのニーズが増えています。ユーザーはもっとラフに撮りたいけれども、写真館でセット撮影をすると数万円かかってしまいます。これらは既存の写真館産業が担ってきたマーケットで、その構造は長く変わっていませんでした。

 ならばその隙間を埋め、リプレースしようと考えたのです。他社のマッチングサービスはフリーランスカメラマンの空き時間を登録する、つまりすでにプロとして活動している人が対象の場合が多いのですが、我々はアプローチが異なります。ラブグラフでは、良いカメラを持っている人たち、それで写真を撮ってみたいと考えている若い人たちがカメラマンのターゲット。なので20代の人たちが多く、ラブグラフで初めてカメラマンとして仕事をする人たちが大半を占めます。だからこそ良い意味で、クオリティコントロールがしやすいメリットもあります。

 要するに、UberやAirbnbと構造が似ているんです。自分が持っている車、部屋をムダにせずシェアするのと同じ感覚で、カメラという遊休資産をいかにお金に変えていくかというビジネスモデル。その点は他社との違いだと思います。

――NTTドコモ・ベンチャーズとNTTドコモがラブグラフと知り合ったきっかけは。

舞野氏 すでにラブグラフに出資されていたベンチャーキャピタルに出資の機会を紹介いただきました。でも私自身は以前から認知していたんです。事業としてはシンプルですが、特色ある独自のポジションを築いているベンチャーだなと。写真のマッチングサービスは欧米でも珍しくありませんが、どれだけユニークなのかを知りたかったので、すぐに話をしに行きました。

佐藤氏 私はdフォトを担当していますが、1年ほど前に舞野さんからお声がけいただいたのが協業の始まりです。dフォトでは、ユーザーに魅力的なコンテンツを提供したいとの思いから、過去にもスタジオ写真館との期間限定キャンペーンなどを実施してきました。その後、さらなるパートナー連携を拡大したいと考える中で、市場調査から“出張撮影ビジネスが伸びてきている”という情報をキャッチしていたので、ラブグラフとは非常に相性がいいだろうと。

――まさに“渡りに船”だったんですね。

駒下氏 本当にそうです。ラブグラフとしては投資と協業、双方が実現できていいことずくめです。

――とはいえ大企業とベンチャーですから、協業に至るまでに苦労もあったのでは。

佐藤氏 いえ、事業連携は比較的スムーズに進みました。駒下さんの業界セミナーでの講演を聞いたメンバーから「面白そうなベンチャーがありますよ」と聞いていましたし、何よりNTTドコモ・ベンチャーズのお墨付きがあったのが大きかったですね。社内で反対する人は1人もいなかったと記憶しています。

佐藤氏は、ラブグラフとの連携は円滑に進んだと話す

 ただ、そのスピード感には驚きました。初めて会ったその場で「じゃあすぐやりましょう。ドコモさんはいつからできますか?」と聞かれて。時計の針のスピードがまったく違う。そのスピードに合わせるため、必死に社内調整をしています(笑)。

――橋渡しをしたNTTドコモ・ベンチャーズの狙いは。

舞野氏 私自身、dフォトのユーザーで家族のフォトブックを作ったりしますが、写真のほとんどは私がスマホで撮ったもので、当然自分が写っていないわけです。そこでdフォトのユーザーにも家族やカップルで写真を残したい方は大勢いるはずだと考え、それぞれ連携することでお互いにバリューが出ると確信していました。また、出張撮影のビジネス自体も伸びていますし、海外のスタートアップを見ても高い評価を得ている類似の企業もあるため、投資として妥当性があると判断したのです。

両者のシナジーを確信していた舞野氏

――具体的にどんな協業を進めてきたのでしょうか。

佐藤氏 送客キャンペーンです。dフォトには大変多くのお客さまがいますが、昨年、dフォト会員が割引価格でラブグラフの出張撮影サービスを受けられるキャンペーンを実施したんです。初回は1カ月半でキャンペーンページへのアクセスが約5万件、そして実際の申し込みが約100件ありました。キャンペーン利用後にアンケートを実施したところ、9割の方がラブグラフを利用して大変満足だったと回答しました。

駒下氏 1つのキャンペーンから月間100件規模の申し込みがあるなんて、こちらとしては予想を遥かに超える成果でした。今日からまたキャンペーンが始まるので、お互いの利点を活かしながら進めていきたいと思っています。

――最後に、これからの展望について教えてください。

佐藤氏 現在の顧客基盤を考えると、まだまだ伸びしろはあります。NTTドコモとしてはこれからもラブグラフさんといろいろな課題を解決していけるのではと考えています。100人が1000人に、1000人が10000人になるよう、一緒に成長していけたらいいですね。

舞野氏 ここまではキャンペーン展開での連携でしたが、もう一段高いレベルでシナジーを生むためにどうするかを考えています。例えばNTTドコモグループの資産を活かして、カメラマンの作業負担を減らしていくテクノロジーが開発できれば面白いですよね。投資側としてはマッチングサービスだけではなく、テクノロジーのポテンシャルにも期待しています。

駒下氏 テクノロジーによる効率化は、我々も中長期戦略に掲げているものです。いかに写真選出やレタッチの時間を減らし、カメラマンの生産性を向上させるかが今後の鍵だと思います。機械学習を使ってレタッチを学習させれば、わずかな時間で済む自動レタッチも夢ではない時代です。そこに投資することで優秀なカメラマンのリソースが空き、我々のサービスも強化されるでしょう。そしてさらに成長すればNTTドコモ・ベンチャーズに還元できる。これこそベンチャーならではの戦い方だと思います。

テクノロジーを軸にカメラマンの世界を変えたいとする駒下氏。今後の連携にはNTTドコモのアセットが生きてくるはずだ

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