コワーキングスペースを半年間無償で提供するNTTドコモ・ベンチャーズの取り組みが、2019年10月から第2期に入った。スタートアップとのリアルな接点を築くための「場創り」は、どのような効果をもたらしているのか。ここまでの成果を振り返るとともに、第2期メンバーの意気込みを聞いた。
 コワーキングスペースを半年間無償で提供するNTTドコモ・ベンチャーズの取り組みが、2019年10月から第2期に入った。スタートアップとのリアルな接点を築くための「場創り」は、どのような効果をもたらしているのか。ここまでの成果を振り返るとともに、第2期メンバーの意気込みを聞いた。

スタートアップを守りつつ、大企業と渡り合える実力を育む

 NTTドコモ・ベンチャーズでは、厳しい審査を通過したシード/アーリーステージのスタートアップを対象に、2019年4月から社内のコワーキングスペースを無償で提供している。現在は第1期(2019年4月1日~9月30日)が修了し、第2期(2019年10月1日~2020年3月31日)がスタートしている状況だ。

 企業同士の触れ合いによって、新しい化学反応やシナジーが生まれることを目的としたこの取り組み。第1期に入居した5社はさまざまな成果を挙げており、NTTドコモ・ベンチャーズ 代表取締役社長の稲川尚之氏は「高い成果を得た」と振り返る。

 「シナジーの観点では、入居した5社のスタートアップにさまざまなイベントなどへと参加してもらったことで、大企業から発注を受けるケースも生まれた。例えば、恋愛ナビゲーションサービスを展開するAillは『NTT DOCOMO VENTURES DAY 2019』への登壇をきっかけに某大手航空会社との協業検討につながった。さらに、5社のスタートアップがNTTドコモ・ベンチャーズのコワーキングスペースの利用をアピールしてもらえたことは、宣伝効果の側面でも意味があった」(稲川氏)

NTTドコモ・ベンチャーズ 代表取締役社長 稲川尚之氏

 スタートアップを対象としたコワーキングスペースの無償提供は6ヵ月を1クールとしており、期間が終わると入れ替えを実施することが基本ルールとなっている。そこで、第2期のための新規スタートアップを募集したところ22社の応募があり、第1期の5社と合わせた27社で審査が行われた。

 「改めて審査をしたものの、やはり第1期の成果が軒並み良好だったことを踏まえて、第1期のスタートアップ5社には、第2期もそのまま活動を続けてもらうことにした。一方で、コワーキングスペースにはまだ余裕があったことから、新規で3社のスタートアップを追加することを選択。今期は脱落するスタートアップがなく追加のみとなったが、また半年後に改めて評価し直す予定だ」(稲川氏)

 第2期の新規メンバーに対しては「過度な期待はしていない。いままでの延長線上で自由に活動してほしい」と稲川氏。もちろん、可能な限りの支援をしていくつもりだが、「すでに自立できるだけの力はあると感じている。だから、いずれ必ず何かを成し遂げてくれるはず」と、各スタートアップの活動に手ごたえを感じている。

 また、NTTドコモ・ベンチャーズとしては「スタートアップと正面から向き合う」ことをポイントに挙げ、稲川氏は「しっかりとした育成ができる環境の構築こそが重要だ」と説く。本気で向き合えば「スタートアップでも大企業と渡り合える実力を持てる」と確信し、大企業との間に入ってスタートアップを守り育んでいく構えだ。

明確なビジョンを持って未来を見据える新規入居者たち

 続いて、第2期から新規で入居した3社の概要を紹介しよう。自社サービスの詳細や現状とともに、今後の展開や入居募集に応募した理由などについても聞いた。

●カタルスペース 代表取締役 吉本正氏

 カタルスペースは、都心にあるサービス業の店舗と地方のメーカーを結ぶマッチングプラットフォームを展開。都心の飲食店や美容室、キッズスクールなどからレジ脇や壁などにある空きスペースを提供してもらい、そこに地方メーカーの製品などを展示することで、新たな顧客の開拓を実現していくサービスだ。

 例えば、飲食店の飾り棚に食器などを展示するパターンは相性が良く、店舗によっては「その食器を実際に使ってもらうケースも出てきている」(吉本氏)。店舗側としては「新しい製品を無料で置けたり利用できたりする」ほか、コミュニケーションツールとして活用することで「新規客をリピーターに変えるきっかけになる」と吉本氏は語る。

 一方で、メーカー側としても「製品がもっとも映えそうな雰囲気を持つ店舗や、ターゲット層にあった店舗を狙い撃ちできる」といったメリットがある。また、製品と同じ場所にQRコードやICタグなどを設置してスマートフォンへ誘導すれば、「さらなる情報の認知や拡散、あるいはeコマースへの展開も期待できる」(吉本氏)といった点も興味深い。

 「地方のメーカーは、良い製品を作っていてもなかなか知ってもらえるチャンスが少ない。また、ロット数の問題で通常の流通ルートを上手く活用できないほか、ECサイトを作っても巨大なECモール内で埋もれてしまうことも多い。そこで、集客力のある都心の店舗に製品を置くことで、消費者が実際に目にして手に取ってもらえるケースを増やし、そこから購入につなげてもらいたい」(吉本氏)

 今回の入居にあたって、吉本氏がもっとも期待するのはNTTドコモの「ブランド力」だ。地方創生を軸に考えると、無名のスタートアップよりもNTTドコモの方が「圧倒的に信用度が高い」(吉本氏)ことから、そのバックアップに大きな期待を寄せる。登録数の年内目標は「150店舗・100社」。地方の銀行や信用金庫との連携強化も進めており、中長期的には3年以内に「500店舗・500社」を目指す。地方創生の起爆剤となれるのか、今後の成長に期待したい。

カタルスペース 代表取締役 吉本正氏

●ランデブー CEO 田中聡氏

 ランデブーは、アルバイトの人脈を活かしたリファラル集客をキャッシュに変換するサービスを展開している。田中氏は以前に飲食店を経営しており、そのときの経験から客のいない「アイドルタイム」に着目。その時間にスタッフが家族や友人などを呼んで集客した場合、そこに対してキャッシュバックすることでインセンティブが生まれる仕組みを構築した。

 「こういった取り組みを店舗単位でやっているお店はすでにある。しかし、大手以外ではこのような仕組みの構築や継続は簡単ではないことから、ターゲットを中小規模の飲食店に絞った。また、ポイントサービスなどでリピーターを増やす手法では、そもそもスタッフを介する必要がないことから、異なる手法で“いかにスタッフを仲介させるか”がこのサービスの肝となる」(田中氏)

 現在はまだテスト段階ながら一定の効果は出ており、多いケースでは「1人で月間100人以上を集客した」という例もあった。田中氏は「飲食店の情報を取り扱う大手Webサイトでも予約サービスを展開しているが、中小規模の飲食店では、1カ月で10組の予約があれば良い方だ。これに対して、1人のスタッフが月間20~30組呼べれば、その効果はかなり大きい」と分析する。また、来てくれた客にスタッフが「このサービスを利用したことで給料が上がった」と話すと、客側は「相撲のタニマチ(後援者)のような気分になり、前向きに協力してくれる効果も期待できる」(田中氏)。

 本格リリースは、2020年1月頃を予定。現時点では一部の店舗に限定したテスト利用だが、本格リリースからは利用店舗数を増やし、2020年3月までで100店舗を目標とする。今回の入居について、田中氏は「とても恵まれた環境だ」と感じており、同じような立ち位置の人が周囲にいることで「刺激を受ける」と語る。コワーキングスペースでの日々が実りあるものとなれば、大手Webサイトの予約サービスに比肩する日もそう遠くはないだろう。

ランデブー CEO 田中聡氏

●Co-LABO MAKER 代表取締役 古谷優貴氏

 Co-LABO MAKERのサービスはユニークで、研究設備のシェアリングプラットフォームを提供している。大学や企業で研究開発に携わっていた古谷氏は、「研究開発に利用する装置が余剰している」とつねづね感じており、この余剰装置を「上手く活用したい」と考えたのが現在のサービスを始めるきっかけだった。

 装置を利用する側は主に企業の研究職、提供する側は大学やベンチャー企業などで、研究設備やラボそのものを貸し出すことを想定する。また、特定の大学教授や企業からは「お金は不要なので、面白いことをやっている人を連れてきてほしい」といった要望もあることから、「産学連携の一翼を担う側面もある」(古谷氏)。

 利用者のニーズは間違いなくある一方で、古谷氏が現状の課題と捉えているのは、機密性などの観点から生まれる「研究施設や企業側のハードルの高さ」である。もちろん、通常でも企業の研究施設に外部の人間が入るケースはあり得るが、これまでになかったサービスとなるため「実現自体は不可能ではないが、新しいことに対するアレルギーがあり、交渉には手間がかかっている」と古谷氏。ハードルを下げる一環として、事故などに備えた保険の仕組みも独自に用意しており、互いのベネフィットを高めるような努力にも取り組んでいる。

 東北大学にも所属する古谷氏は現在、仙台市を拠点に置いている。しかし、顧客の多くが関東地区となることから、NTTドコモ・ベンチャーズのコワーキングスペースを「顧客に直接会ってサービスをブラッシュアップするための、関東における拠点として活用したい」との思いがある。

 短期的なビジョンとしては「サービスの質向上」を目標にしており、中期的には地盤を固めたうえでの「さらなる拡張」を目指す考えだ。現状では「オンリーワンのサービスながら、適用範囲が狭い」ことが課題となるため、単純なシェアリングにとどまらず「研究者がもっとカジュアルに利用できるようなサービスを生み出していきたい」と古谷氏は先を見据える。まだまだ始まったばかりのサービスだが、近い将来、日本の研究開発を下支えする存在へと育ってほしい。

Co-LABO MAKER 代表取締役 古谷優貴氏

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