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CASE STUDY 03 /TMC経営支援センター(コンサルティング業・グループ従業員120人)5.5人力の「ロボット」が夜中も働く経営支援会社が知った最新ICT驚異のパフォーマンス!

CASE STUDY 03 /TMC経営支援センター(コンサルティング業・グループ従業員120人)5.5人力の「ロボット」が夜中も働く経営支援会社が知った最新ICT驚異のパフォーマンス!

人手に頼る単純作業を減らし人材を有効活用する。そのために、「ソフトウエアロボット」と「人工知能(AI)」で生産性を大きく高めた事例を紹介する。中小企業向けの人事労務支援などを手掛けるTMC経営支援センターだ。しかも、効果はすぐに表れた。同社は2つのICTソリューションを活用して、人材不足という長年の悩みを解決し新たな一歩を踏み出した。

課題
増加する業務に増員で対応するのは限界。単純作業が多く、モチベーション維持も悩み
解決
最新ICTソリューションで紙書類のデータ化や単純作業の自動化に成功。「人でないとできないこと」に集中できるようになった

業務量の増加に人海戦術では限界
単純作業の効率化に「ロボット」を活用

岡部 正治 氏
TMC経営支援センター
代表取締役会長
岡部 正治

 「仕事を取ってくれば取ってくるほど、人を採用しなければならない状況が続いていました。新規人材には教育も必要ですし、辞めていく人も少なくありません。特に単純作業の業務にかかる負荷を下げることが長年の課題でした」

 こう語るのは、栃木県那須塩原市に本社を構えるTMC経営支援センターで代表取締役会長を務める岡部正治氏だ。同社では、データ入力や申請状況の確認といった単純作業が発生し、これが全体の業務量の3分の2ほどを占めるという。これまで人海戦術で対応していたため、受注増には人材の増加で対応しなければならなかったが、タイムリーな人材確保は現実的ではない。人材確保の課題に対応するために、単純作業の生産性を高める方策を検討してきた。

 TMC経営支援センターは、主に中小企業の人事労務関連の業務のコンサルティングやサポートを行っている。多様な業務の中には、労働保険や社会保険の手続きの代行や、給与計算代行がある。例えば労働社会保険では、企業から従業員の入社や退社、変更などの連絡があったときに、官庁に届け出て手続きを完了するまでを代行している。

 手続きのための情報は、電子メールなどのデジタル情報のほか、FAXや電話による連絡も少なくない。顧客のデータをシステムに入力・登録して、官庁に電子申請し、申請後には手続きが受理されたかどうかの状況を確認。手続き完了後は官庁から文書をダウンロードして、顧客企業にメールで手続完了を報告する。これら手作業の業務が通常で月に600件、異動が多い春先には月に1200~1300件にも上るという。

葛西 美奈子 氏
TMC経営支援センター
代表取締役社長
葛西 美奈子

 TMC経営支援センター代表取締役社長の葛西美奈子氏は、「単純作業の生産性を上げるために、作業をロボットに置き換えることを考えていました。パソコン上の処理をソフトウエアロボットが自動実行してくれるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を見たときに、『これだ!』と思いました」と話す。

 RPAについて2018年ころから1年ほど下調べをしていたところ、NTT東日本からOCR(光学的文字認識)とRPAをセットにしたソリューションの提案を受けた。OCRには人工知能(AI)の技術が使われ、手書き文字などの認識率も高いとの触れ込みに興味を持ち、2018年12月から具体的な検討を始めて、2019年2月には本格導入前のテスト運用を開始するに至った。

ロボットは夜間も働き
5.5人分の仕事を淡々とこなす

 テスト運用では、まず2つの業務の効率化を図った。利用したのは、NTT東日本のAI-OCR「AIよみと~る」とRPA「おまかせRPA」を組み合わせたソリューションだ。

 1つが受付処理の自動化で、FAXで受け取った情報をAI-OCRで読み取ってデータ化し、RPAで基幹システムに自動登録する。もう1つが、官庁へ電子申請した後の申請、届出の審査状況の確認と、手続き完了後のデータダウンロード、顧客への送信メール作成までの一連の作業をRPAによって自動化するものだ。メールは人が最終確認した後に送信している。特に進捗状況確認は、1件1件Webページで確認する必要があり、非常に業務負荷が高かったという。

TMC経営支援センターでのAI-OCRとRPAの活用
TMCが取り組む業務の効率化
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自動作成される送信メールの例
サンプルメール
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 RPAを導入するに当たって工夫した点は、顧客企業から事務手続きの連絡を受ける際のフォーマットの修正だ。AI-OCR で読み取りやすいように選択項目をチェックボックス式にするなど、事業所ごとに異なっていたFAX用のフォームを新フォーマットで統一。「RPA導入をきっかけに業務効率化を進めるため、仕事の進め方も含めてこうした細かい見直しも必要でした」と岡部氏は振り返る。

改良後の「入社(加入)連絡票」
入社(加入)連絡票
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AI-OCRで読み取りやすいように、例えば性別欄などがチェックボックス式になっている

 RPAを動かす「シナリオ」はTMCグループで自社作成した。NTT東日本の技術部門から手厚いサポートがあったことで安心して作成できたという。

 具体的には、シンプルなシナリオほどエラーが起きにくい。そのため、現在の業務フローをそのままシナリオ化するのではなく、全体のフローをNTT東日本の助言の下に見直した。また、タイマー設定の間隔などについても、エラーが起きにくくなるよう調整した。

 2019年2月に開始した試験運用では、想像を超える大きな効果が得られた。葛西氏は「AI-OCRは手書きのFAXでも識字率が約98%と高く、満足がいくものでした。読み取り後に人によるチェック工程を入れることで、間違いをつぶしています」と話す。

 総合的な効果としては、入社退社変更業務で1日当たり2人分、電子申請の更新状況のダウンロードで同じく2人分、それ以外の業務で1.5人分の業務がRPAによるロボットに置き換えられた。「人間は休憩をしたりトイレに行ったりする時間もありますから、実際にはさらに2倍ぐらいの効果が得られているでしょう。また、RPA導入は時間換算の効果だけではなく、単純労働の苦痛から人間が解放された部分にも大きな効用があると感じています」と葛西氏は高く評価している。

RPAで置き換えたTMC経営支援センターでの単純作業内容
入社・退社・変更手続きの受付=2人分の作業量
  入社 退社・変更 合計
1日の処理件数 20件 20件 40件
1件当たりの時間数 30分 15分  
標準処理時間数 600分 300分 900分
1日の所要時間数 10時間 5時間 15時間
入退変更手続きの電子申請進捗更新・公文書ダウンロードおよび手続き完了メール作成=2人分の作業量
  電子申請進捗更新 ダウンロード メール作成
1日の標準処理件数 350件 120件 30件
1件当たりの時間数 1分 3分 5分
標準処理時間数 350分 360分 150分
給付処理の電子申請の進捗更新・公文書ダウンロードおよび手続き電子メール作成=1.5人分の作業量
  電子申請進捗更新 ダウンロード メール作成
1日の標準処理件数 250件 80件 20件
1件当たりの時間数 1分 3分 5分
標準処理時間数 250分 240分 100分

 岡部氏は、RPAによるロボット導入で作業効率が向上できた効果として、「いままで忙しくてできなかった仕事に取り組めるようになった」ことを挙げる。「これまでは顧客にメールを送るまでの作業で手一杯だったのが、ロボットがメール作成までしてくれることで、その後に『手続きが終わりました』と人でしかできないフォローの電話をできる余裕が生まれ、次につながる営業的な動きを誘発できるようにもなりました。しかし、業務効率化が予想以上に進み、できた余裕をまだ十分に活用できていないほどです」

 官庁のサーバーに対して、進捗状況を問い合わせて完了書類をダウンロードする業務は、RPA導入によって夜間に行っている。こうした状況に対して、「官庁の側から深夜に人を労働させているのでは? と問い合わせが入ったという笑い話もあります」(葛西氏)。夜間でも休まず働くRPAの労働効率性の高さが、ブラックな労働状態ではないかと誤解を招くことになったのだ。

顧客である中小企業にも
自信をもって勧められる

 2019年2月にAI-OCRとRPAのテスト運用を開始したTMC経営支援センターでは、業務のピークを迎える4月には本格稼働へと移行した。「完成形を目指すのではなく、走りながら考える、短いシナリオを作って効果を測っていく、というスタンスがうまく効果に結びついたのだと思います」と葛西氏は振り返る。

 岡部氏は、「実際にはロボット化することは手段で、古いやり方に固執するような業務の習慣をリセットすることに意味があると考えています。人を増やすのではなく、人を高めて多くの業務に対応できるようにするために、RPA導入による業務の見直しは重要なことです」と働き方の変革への同社のポリシーを語る。

 RPAを動かすためのシナリオは、情報システム部門などの専門家ではなく、業務に詳しい現場の部門の担当者が作成できるほど容易なものだ。「行政と企業の間を取り持つ業務では、紙が非常に多いので、ロボットによる自動化はまだまだ効果を上げられると感じています」(葛西氏)。現在も、住民税の手続きなどのシナリオを順次作成しているほか、年末調整の時期までには扶養控除申告書などの手続きもAI-OCRとRPAでの自動化を目指している。

 「導入・運用のコストは、それまでかかっていた人件費を考えれば安いものです。今後、単純作業を減らして人ならではの生産性を上げる効果はさらに高まると考えています。自分たちが使ってみて、効果を感じているからこそ、顧客である中小企業にも自信をもって薦められるソリューションです」と岡部氏は太鼓判を押す。

 「人を増やして量を増やすよりも、人を高めて質を上げるに向かう」(岡部氏)という経営戦略の転換にもつながりつつある。AI-OCRとRPAを組み合わせたソリューションは、コスト削減から働き方改革まで確実な効果をもたらす。企業規模にかかわらず、企業の変革を支えるカギといえるだろう。

RPAを稼働させているパソコン
手前がRPAを稼働させているパソコン。単純作業削減に大きく寄与している
株式会社TMC経営支援センター
株式会社TMC経営支援センター

URL:http://www.tmc-jinji.com/
所在地:栃木県那須塩原市大原間西1-10-6
設立年月日:1985年6月
資本金:3500万円
従業員数:160名(グループ全体)

中小企業に対する人事労務のコンサルティング業務、官庁への事務手続き代行業務などを手掛ける。グループにはTMC経営支援センター、社会保険労務士法人TMC、TMC給与計算センター、TMC司法書士事務所などがある。本社は栃木県那須塩原市にあり、埼玉県の大宮支店から青森県の青森営業所まで東日本を広くカバーする。

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