IT活用で建築・土木の現場は大きく変わる!〜いつでもどこでもつながる快適な現場を作るコツ〜

いかに人手不足を解消するか。これは建築・土木業界にとって、共通した課題だといえるだろう。建築・土木業で長らく続いていた構造不況や、少子高齢化の影響、2020年に向けた建設ラッシュなどで、現場の人手不足は深刻さを極めている。こうした状況を打開しようと、多くの企業がITの活用に乗り出している。ITツールを使えば、現場の様々な課題を解決できるからだ。ただし、様々なITツールを現場で使いこなすには、乗り越えるべき「壁」があるのをご存知だろうか。それが、いつでもどこでもつながるネットワーク(通信環境)の整備だ。ここでは、建築・土木業界で、いつでもどこでもITツールを使える快適な現場を作るコツについて紹介したい。

建築・土木業の人手不足に効くIT活用

国土交通省が行った建設労働需給調査結果(2019年1月調査)によれば、建設技能労働者(建設工事の直接的な作業を行う労働者:型わく工、左官、とび工、鉄筋工など)の全職種で人手不足となっている。またこの調査では、2011年7月以降、現在に至るまで慢性的に不足の状況が続いていることが明らかになっている。

さらに厚生労働省が2019年2月1日に発表した「一般職業紹介状況」によると、2018年の建設技術者(建築・土木・測量技術者)の有効求人倍率は、18年平均で6.18倍に達した。こうした状況などを踏まえると、建築・土木業各社では、19年についても深刻な労働者不足が続くことが懸念される。

慢性的な人手不足は、労働環境の悪化につながり、それが原因で若手を中心とした人材が離職し、さらなる人手不足を招くという負のスパイラルを生じさせてしまう。

こうした状況を打開しようと、建築・土木業界では、積極的にIT活用に取り組むケースが増えつつある。

例えばグループウエアを用いた承認フローはその1つ。従来のような紙による申請処理を電子化し、パソコンやスマートフォンなどのデバイス上で申請・承認できるようにすれば、出退勤や休暇届をはじめ、立替経費や出張旅費といった出納処理も現場に建てた仮事務所でその日に行えるようになる。

これ以外にも図面データや現場写真などを、管理部門や他の会社と共有したり、ビデオ会議を現場と本社で行えるようにすれば、移動にかかる時間やコストも削減できるだろう。

ネットワークがIT活用のカギを握る理由は

このように建築・土木現場におけるIT利用は、現場が抱える課題解決に必要不可欠なものになりつつある。しかしこの実現に向けて、やっかいな「壁」がある。それが「ネットワーク(通信環境)」だ。

日常生活で、スマートフォンなどを使っていると、ついつい「ネットワークはつながっているのが当たり前」という認識になってしまいがちだ。しかし現場の拠点と本社をつなげようとすると、その設定に思いのほか苦労してしまうケースが後を絶たない。

というのも建築・土木業の現場の場合、実際のネットワーク設定作業を情報システム部門といった専門部署ではなく、現場担当者が兼任で行うケースが多いからだ。一般的に現場担当者はITの専門家ではないため、ネットワークに関する基本的な知識に乏しい場合が少なくない。その結果、セキュリティなどは特に考慮されず、「とりあえずつながっているだけ」のネットワークになってしまうわけだ。

さらに建築・土木という特殊性も大きなハードルとなる。建築・土木現場に建てられる事務所は原則的に工事期間のみの利用を前提とした仮設仕様。そのため、IT設備も変更や撤去が可能な簡易なものを利用しなければならない。要は、いちいちコストをかけていられないのである。

しかしその一方で、建築・土木の現場では、図面や現場写真など重いデータをやり取りすることが多い。ネットワーク環境を適切に設定しておかなければ、通信が寸断したり、画面がフリーズしてしまったりと、アプリケーションを快適に活用することが難しくなってしまう。スクラップ&ビルドを前提にしながら、通信の安定性・信頼性は求められる。ただし、担当者の専門知識は乏しい。これがIT利用の大きなボトルネックになっているわけだ。

もちろん、企業によっては、情報システム部門が設定を行ってくれる場合もあるだろう。その場合でも、全国に散らばる現場に出向いて、毎回ネットワークの開通・設定を行うのも大変な工数や日数がかかってしまう。

課題解決の手段として期待を集めるSD-WANとは?

それでは、手間・暇をかけず、現場で簡単に安全なネットワークを構築するにはどうすればよいのか。その有効な手段として期待を集めているのがSD-WAN(Software-Defined WAN:仮想化されたWAN)だ。

SD-WANは「Software」という文字が示すとおり、仮想的なネットワークを構築し、それをソフトウエアで制御する技術だ。「ソフトウエアで制御する」ということは、「ハードウエア(物理的な回線やネットワーク機器)に依存しなくなる」ことを意味する。

こう書くとなんだか難しく聞こえるかもしれないが、その場合はネットワークを道路に例えるとわかりやすい。もし新しい現場事務所ができたら、そこに道路を通す。いろいろな車(データ)を行き来させる必要がある。ただしその際は、どれくらいの交通量(データ)なのか見極める必要がある。狭ければ渋滞になるし、広すぎれば無駄なコストがかかる。大事な車を通す場合は、安全(セキュリティ)も確保しておかなければならない。一旦開通した後も、思ったより道路が狭いと感じれば広げる必要がでてくるし、本社だけでなく、別のショッピングモール(クラウド経由のアプリケーション)との間に道路を通す必要もあるかもしれない。

従来のネットワークでは、こうしたことを考慮した上で、担当者が現地でネットワーク機器の設置・設定を行ったり、社内ネットワークの調整・確認を行う必要があった。そのため時間や工数もかかっていた。その点、SD-WANの場合は、いわばバーチャルな世界(仮想上)でそれを行える。具体的には、パソコンやタブレットなどの管理画面上で集中して設定・変更できるので、新しい現場事務所をネットワークに加えることも短時間で対応できるのだ。現地で必要なことは、工期とコストから最適な回線を選んで敷設し、SD-WANの「エッジ機器」(写真)を設置することだけでよい。

しかもSD-WANなら、回線は何でもいい。「フレッツ」回線が使えるならそれでもよいし、地元のケーブル企業が提供する通信回線がある場合には、その回線を使ってSD-WANに組み入れることも可能だ。もし暫定的に間に合わせるだけならLTEネットワーク(4G回線)でも構わない。

建築・土木現場の場合、工事が終われば、事務所をそのまま違う場所へ移転することもあるだろう。そうした場合にもSD-WANならスピーディに対応できる。移転先の事務所にネットワークを敷設したら、旧事務所からエッジ機器を移すだけでよい。

工事が終了した後の撤退時のコストも最小限に抑えられる。事務所に敷設したネットワーク回線を解約し、エッジ機器を本社もしくは次の事務所に送るだけでよい。エッジ機器は次に開設する事務所で使えるので、その点でもコストを抑制できる。

SD-WANは大企業に限ったサービスではない

さらに注目しておきたいのが、SD-WANが大企業に限ったサービスではない点だ。すでに中堅・中小企業でも手の届くサービスが登場している。その代表例ともいえるのが、NTTPCコミュニケーションズの提供する「Master'sONE CloudWAN」である。拠点ごとの月額料金はわずか17,000円(税別)。これであれば大きなコスト負担にはならないはずだ。

セキュリティについても安全だ。各エッジ装置間で行われる通信は、常に暗号化されるため、簡単に外部から閲覧/盗聴ができない。さらにエッジ装置から直接インターネット接続を行う際には、標準のファイアウオール機能を利用できる。

さらに安全を期したいなら、『「Master'sONE CloudWAN」 セキュアパッケージ』がおすすめだ。海外発のSD-WANのほとんどがインターネットの利用を前提にしている。日本企業では、これが導入のハードルになりやすい。

それに対し「Master'sONE CloudWAN」 セキュアパッケージは、NTTPCが提供する閉域網(インターネットを介さないネットワーク)上でSD-WAN機能が利用できるため、さらに安全性は高まる。また、フレッツ光ネクストの機能であるIPv6 IPoE(IP over Ethernet)にも対応している。技術的な説明は割愛するが、IPoEは最新の接続方式で、従来方式に比べて混雑することなくスムーズに通信でき、大容量のファイルを送る場合も「ネットワークが遅い」と感じることは少ない。

今後NTTPCコミュニケーションズでは、さらなる機能の拡充を進めていく予定だという。その1つがLTEやWi-Fiへの対応だ。実現すれば、内蔵されたSIMを使って通信でき、すぐにでもIT利用を始めることができるようになるはずだ。

人手不足や労働環境の改善から、様々なIT利用が進みつつある建築・土木業界。ITのメリットを最大限に生かすには、実はネットワークの見直しもセットで考えることが大きなポイントなのである。