日経 xTECH Special

パートナーと共創で価値を創造 センシングやネットワークを強みに、AIエッジを推進

沖電気工業株式会社は、エッジ部分にAI機能を持たせて顧客や社会の課題を解決する、「AIエッジ」コンセプトを推進する。2019年10月には、汎用性の高いAIエッジコンピューター「AE2100」シリーズを発表。合わせて、AIベンダーやインテグレーターなどのパートナーを募ることで、共創を通じて顧客に価値を訴求し、パートナーと共にビジネス拡大を目指す。

 製造業や社会インフラが抱えるさまざまな課題の解決に、AI(人工知能)を活用する動きが広がってきた。例えば、ものづくりにおける品質管理、設備の予兆保全、構造物の劣化予測、交通網の運行管理の最適化などに、AIが得意とする認識や推定を適用して、精度や効率の向上を図るのが狙いだ。

 こうした領域におけるAIは、周囲の環境条件などのさまざまなセンシングデータを入力するため、いわゆるIoT(Internet of Things)との親和性が高い。

 数多くの産業システムや社会インフラを手掛けてきた沖電気工業株式会社(以下、OKI)が取り組むのが、まさにこのIoTとAIの組み合わせだ。同社が得意とするセンシングデバイスや端末デバイス、920MHz帯マルチホップ無線「SmartHop」、データ処理・活用ソリューション、交通や建設、流通や製造といった業種別の技術資産やソリューション資産に、新たに「AIエッジ」を組み合わせて、エコシステム・パートナーと共に顧客の課題の解決を図っていく(図1)。

図1
図1

OKIが取り組むAIエッジコンピューティングと、提供ソリューションの一例

AIエッジコンピューティングを追求

 OKIが注力するのがエッジ部分でのAIである。エッジとは、クラウド(サーバー)側ではなく、機器やセンサー側を指す言葉だ。

山本 氏
沖電気工業株式会社
情報通信事業本部
IoTプラットフォーム事業部
スマートコミュニケーションシステム部
部長
山本 高広

 「ディープラーニングなどのAI処理は、高い性能を持つクラウドなどを利用するのが一般的です。しかし、ものづくりや社会インフラの制御ではリアルタイム性が求められることも少なくありません。センシングデータすべてをクラウドに上げようとすれば、データ・トラフィックやセキュリティの問題も発生するでしょう。そこでOKIでは、『リアルタイム・インテリジェンス』を掲げ、応答性を高められるエッジ側にインテリジェンスを持たせる『AIエッジ』を推進していくことにしました」と、OKIの山本高広氏は説明する。

 センサーなどで集めたデータからニューラルネットワーク・モデルを構築する処理は、計算リソースの豊富なクラウド上で行って、そのモデルをエッジ側に実装して認識や推定などの処理を行うのが、OKIが提唱する「AIエッジ」の大まかな仕組みである。

 同社は「AIエッジ」コンセプトに沿った案件として、例えば画像や音響、光ファイバーなどのセンシングデバイスを用い、映像認識や波形解析などのAI技術のソリューション活用を推進し、さまざまな実績を積み重ねてきた。

汎用AIエッジコンピューター「AE2100」シリーズを発表

 OKIは、AIエッジアーキテクチャーをより広く展開するために、AIエッジコンピューター「AE2100」シリーズを新たに開発し、2019年10月3日に発表した(図2)。

図2
図2

OKIが2019年10月に発表した、AIエッジコンピューター「AE2100」シリーズのハードウェア仕様

 「AE2100」シリーズはIntel Atom E3950プロセッサーにYocto Linuxを組み合わせた汎用的な産業用コンピューターで、画像認識を中心とするニューラルネットワーク処理の大幅な性能向上を実現するために、AIアクセラレーターであるインテルの「インテル® Movidius™ Myriad™ X VPU(Vision Processing Unit)」をオプションで2個搭載できるのが特徴である。

島田 氏
沖電気工業株式会社
情報通信事業本部
IoTプラットフォーム事業部
スマートコミュニケーションシステム部
担当課長
島田 貴光

 「これまで当社では、FPGA(Field Programmable Gate Array)を用いるなどして案件ごとにAIエッジを実装してきましたが、より幅広いアプリケーションに適用できるように、また、パートナーの皆様にも活用していただけるように、『AE2100』シリーズはあえて汎用性を重視して開発しました。OKIの強みであるセンサーネットワーク『SmartHop』などの足回りインタフェースに加え、インテルの『インテル® Movidius™ Myriad™ X VPU』が搭載できますので、AIエッジコンピューターとして十分な機能と性能を備えていると考えています」と、製品企画と開発に携わったOKIの島田貴光氏は説明する。

 OSにはYocto Linuxを採用し、その上に、エッジとしての実行環境を構成するMicrosoftの「Azure IoT Edge」が搭載される。ディープラーニングの学習モデルは、TensorFlowなどの一般的なフレームワークで作成したのち、インテルのツールキット「OpenVINO™ ツールキット」でコンテナに変換し、「AE2100」シリーズ上のAzure IoT Edgeで実行する流れになる。

 OKIの920MHz帯マルチホップ無線「SmartHop」は、いわゆるLPWA (Low Power, Wide Area)の一つで、通信経路を自律的に確立するなどの工夫によって高い接続信頼性を実現しているのが特徴だ。40社を超えるパートナーから延べ100製品以上が提供され、日産自動車をはじめとして、工場、倉庫、プラントなどに数多く導入されている。

*Atom、Myriadは、Intel Corporationの登録商標です