スポーツのビジネス化レビュー

パーソルキャリア

2019.3.20 Wed.

虎ノ門ヒルズフォーラム(東京)

スポーツ界に転身する
ビジネスパーソンが増加中
活気ある地域づくり、
豊かな文化の醸成に貢献

スポーツ界とビジネス界の垣根は以前と比べて格段に低くなり、プロスポーツチームの運営組織に転身するビジネスパーソンが増えている。こうした人材の力を得て、スポーツビジネスの経営の質も着実に高まっている。パーソルキャリアが運営する転職サービス「doda」編集長の大浦征也氏を司会に、野球、サッカー、バスケットボールの運営に携わる3人を招いて、スポーツビジネスの現状と今後について語り合った。

大きく変革しつつあるスポーツ界
異業種の人材が活躍できる現場に

パーソルキャリア株式会社
転職メディア事業部
事業部長 兼 doda編集長
公益財団法人スポーツヒューマンキャピタル 理事
大浦征也

日本政府が掲げるプロジェクト「未来投資戦略2018」の1つに、スポーツ産業の活性化が挙げられている。2012年のスポーツ市場規模は約5.5兆円といわれるが、2025年に約15兆円を目指すとしている。政策的な取り組みが促進される一方、民間企業もスポーツビジネスへの関心が高まっている。

「スポーツ業界に転身!転職者のリアルな実情」と題されたセッションには、パーソルキャリアが運営する転職サービス「doda(デューダ)」の編集長・大浦征也氏のほか、実際にサッカー、野球、バスケットボール分野でプロスポーツの運営に携わる3人が登壇した。日本プロサッカーリーグ(Jリーグ) 事業・マーケティング本部の郡司晃岳氏、千葉ロッテマリーンズ 事業本部 マーケティング部の高坂俊介氏、Bリーグの川崎ブレイブサンダース 広報部の畔柳理恵氏である。


公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)
事業・マーケティング本部
放映・集客推進部
放映グループ
郡司晃岳
株式会社千葉ロッテマリーンズ
事業本部 マーケティング部 部長
高坂俊介
株式会社DeNA川崎ブレイブサンダース
広報部 マネージャー
畔柳理恵

これに先駆け「doda」では2018年11月に、異業界の人材とスポーツとをつなぐ新たなサービス「SPORT LIGHT」の提供を開始した。大浦氏はこう説明する。

「近年、スポーツビジネスは大きく変わりつつあります。マーケティングやテクノロジーなどのスキルを持つ人材が、スポーツ運営に参画するという動きが本格化しているのです。マネジメントの質が高まれば、競技レベルも向上するでしょう。こうした好循環を生み出す上で、様々な経験を持つ人材は不可欠です。そこで、スポーツとビジネスをつなぐ人材のプラットフォーム『SPORT LIGHT(スポーツライト)』を立ち上げました」

スポーツ業界への転職を促進させる新サービス「SPORT LIGHT」を2018年11月1日より提供を開始(https://doda.jp/sportlight/

規模は小さくても多様な仕事がある
「マネジメント能力」「広い視野」も重要

郡司氏は総合商社に約8年間勤め、石油化学品のビジネス現場に身を置いた。その後、公益財団法人スポーツヒューマンキャピタル(SHC)のトレーニングコースに参加し、Jリーグに転身した。SHCは「スポーツ経営人材の育成」に注力しており、研修プログラムなどを提供している。

「海外駐在から帰国して、自分の内面と対話する時期がありました。スポーツに関わる仕事をしたいという思いが高まり、様々なスポーツビジネスについて学んで、最終的にはサッカーを選びました」(郡司氏)

高坂氏はEC事業やコンサルティングなどの分野で経験を積んだ後、コンサルタントとして千葉ロッテマリーンズの業務を支援。その縁もあって千葉ロッテマリーンズに入社する。現在はチケット販売やファンクラブ運営、CRMなどマーケティング全般を統括している。

「前職のときもそうですが、『ビジネスを通じて地域を盛り上げたい』というのが私のモチベーションです。その意味で、スポーツというリアルなコンテンツには大きな可能性がある。地域の役に立ちたい、だからスポーツビジネスに身を置いているという人は多いのではないでしょうか」

畔柳氏は出版社や人材サービス会社で働いた後、Jリーグのクラブ運営を経験し、プロバスケットボール分野にたどり着いた。

「以前の仕事で働きすぎて体調を崩したことがあり、次は本当に面白いと思えることをしようと考えました。以前からスポーツ観戦が大好きだったこともありJリーグクラブに入り、いくつかの組織を経てプロバスケットボールクラブの運営に携わるようになりました」

野球とサッカー、バスケットボールは日本における3大プロスポーツだ。ニュースなどに取り上げられる機会も多く、特に地元では熱狂的なファンも多い。

「プロスポーツのビジネス規模は他の産業と比べると小さいですが、その影響力は大きい。市場としての成長余地が大きいだけに、ビジネススキルを持つ人材の流入により、一層の事業拡大と地元の活性化が期待できると思います」と大浦氏は語る。

スポーツ運営の現場で有効活用できるスキルは様々だ。高坂氏は「入ってみて分かったのは、このビジネスが非常に複雑だということです」と打ち明ける。チケット販売やマーチャンダイジング、スタジアムの運営など多くの種類の仕事がある。それだけに、多様なスキルを生かせる可能性がある。一方で、「複雑な仕事を束ねて方向づけるマネジメント能力も求められます」と高坂氏は続ける。郡司氏も「広い視野が必要」と考えている。

「スポーツビジネスには多くのステークホルダーがいます。また、時代の変化に伴い、まったく新しい環境が生まれることもある。それらを俯瞰した上で、いろいろな要素をつなぐ力が必要とされています」(郡司氏)

プロスポーツチームがデジタル活用に注目
ファンと直接つながり価値創造を目指す

マーケティングやセールスだけでなく、デジタルとビジネスをつなぐスキルも重視されるようになった。

例えば、千葉ロッテマリーンズではスマートフォンを活用したチケット購入が、前売チケットの7割に達しているという。「スマホを通じて得たデータをいかに分析して、顧客満足度の向上やビジネスに生かすか。それが今後の大きな課題です」と高坂氏は語る。

他のプロスポーツチームやJリーグのような競技団体にとっても、デジタル活用は最大の関心事の1つといえるだろう。「TwitterやFacebookのような大きなプラットフォームから、いかに自分たちのコンテンツにユーザーを呼び込むか。それが1つの大きなテーマです」と畔柳氏は言う。

かつては、ファンクラブ向けのポイントカードなどを使ったマーケティングを推進する動きもあった。今ではデジタルの力を使って、はるかに容易にファンと直接つながることができる。デジタル活用のフロンティアは広大だ。技術的なバックグラウンドを持つ人材が活躍できる場も増えている。

「現在、スポーツ業界におけるリクルーティングは非常にオープンになっていると思います。ファンに向き合う仕事という面で、B to C経験者のほうが馴染みやすいイメージが強いかもしれませんが、私のようにB to Bビジネスから転職する人間もいます」(郡司氏)

スポーツ産業拡大の動きの中で、多くのスポーツチームが組織を徐々に拡大しつつある。

「自分のスキルを生かし、新しいことにチャレンジする。スポーツ界のいろいろなところに、そんなチャンスがあります」と大浦氏。今、2019年のラグビーワールドカップ日本大会、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えて、多くのスポーツ競技が盛り上がりを見せている。これをきっかけに、日本のスポーツ文化をより豊かなものにできるか。アスリートだけでなく、ビジネスパーソンが果たすべき役割は極めて大きい。