特別トップインタビュー 近未来・元年「2020」気鋭の企業に訊く
STマイクロエレクトロニクス

5Gによる市場の変革を次の成長の糧に

自動車と産業分野に注力
サポート体制の強化で
市場シェア拡大へ

STマイクロエレクトロニクス
本社セールス・マーケティング・
コミュニケーション・戦略 社長
日本法人代表取締役社長

マルコ・カッシス

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電気自動車やプラグインハイブリッド車の駆動を効率化するSiC(炭化ケイ素)パワー半導体、さらにはインダストリアル分野向けの32ビットマイコンやセンサーで業界をリードするSTマイクロエレクトロニクス。全社のセールス・マーケティング・コミュニケーション・戦略部門を統括し、日本法人社長も兼務するマルコ・カッシス氏に取り組みを聞いた。

2019年のビジネスを市場の動きとともに振り返ってください

カッシス 2019年はさまざまな分野で「ディスラプション(既存の枠組みを壊す大変革)」が見られた1年でした。その一方で半導体マーケットは、WSTS(世界半導体市場統計)の統計値や予測値に示されたように、貿易摩擦なども一因となって市況は悪化しました。

 そのような難しい状況にあっても、当社は成長を続けており、2019年第3四半期(7~9月)の全社の売上は、前期比で+17.5%となる約26億ドルを記録しました。営業利益率および当期純利益に関しても前期に比べて増加しています。

 事業戦略としては、これまでと同様に、売上のそれぞれ約30%を占める自動車とインダストリアル(産業分野)に注力しています。また、パーソナル・エレクトロニクス分野および通信・コンピュータ分野に関しても、当社の強みが発揮できる領域を中心に取り組みを進めています

SiC半導体で業界をリード

最初に自動車分野に対する取り組みを聞かせてください。

カッシス 電動化とデジタル化が自動車産業をけん引しており、自動車に搭載される半導体の数量は継続的に増加しています。

 そうした中で当社は、電動化に必要な半導体ソリューションにおいて業界のリーダーであり続けること、および、デジタル化に必要な半導体ソリューションにおいて業界のリーダーであり続けることの2つを戦略的な目標として掲げています。

 このうち電動化に関しては、電気自動車やハイブリッド自動車のモーター駆動やバッテリー充電に使われるパワー半導体が好調です。従来のIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)よりも低損失なSiC(炭化ケイ素)パワー半導体で業界トップクラスのシェアを獲得していて、既に20社以上に採用されています。ルノー・日産自動車・三菱自動車のオンボード・チャージャに向けたSiCパワー半導体のサプライヤにも選ばれました。

 SiC事業の売上は2018年の1億ドルから2019年には2億ドルへと倍増しており、2025年までに市場シェアの30%以上の獲得を目指す考えです。

 もちろん既存のIGBTやパワーMOSFETについても引き続き拡充を図っていきますし、次世代のGaN(窒化ガリウム)の実用化も進めていきます。

 デジタル化に関しては、これまで単機能で構成されていたECUが、複数の機能を集約したドメイン・コントローラーへとアーキテクチャが変わりつつあることを受けて、マルチコア構成の車載マイクロコントローラー「Stellar」を製品化しました。高速かつ高集積の次世代の相変化メモリ(PCM)を内蔵しているのが特長で、低消費電力の28nm FD-SOIプロセスで製造されます。また、ADASや自動運転に使われる24GHzおよび77GHzのレーダー・ソリューションや、V2X(車車間・路車間通信)の実現に必要なコネクティビティーにおいても強みを持っています。

体制を強化し顧客に対応

次に、インダストリアルに対する取り組みを教えてください。

カッシス 組込みプロセッシングにおいて業界のリーダーの座を確立していくこと、そして、アナログ製品およびセンサー製品における成長の加速と、パワーマネージメント製品の拡充を図っていくことが戦略上の大きな目標です。

 インダストリアル分野では、さまざまな産業機器がつながるインダストリアルIoT、インテリジェント化および自律化、エネルギー効率の向上、セキュリティの確保などが進んでいて、頭脳としてのマイコンの他、センサー、コネクティビティー、パワー、アナログなど、半導体ソリューションの需要は一層高まっています。

 中でも、今年は、産業機器で求められる演算処理とリアルタイム処理の同時実行が可能な汎用マイクロプロセッサー「STM32MP1シリーズ」や、機械学習コアを搭載したモーション・センサーをラインアップに追加しました。また、32ビットマイコン「STM32」にAIを実装するための組込みAI開発ツール「STM32Cube.AI」の提供も行っており、エッジAI開発を加速させる環境を整えています。

こうした成長市場において、多様化する顧客ニーズにどのように応えていく考えでしょうか。

カッシス インダストリアル分野が顕著ですが、市場ではさらなる細分化が進んでいて、小規模なお客様も増えています。そこで、さまざまなお客様に対応できるように、営業組織の再編を行いました。また、フィールド・エンジニアの増員もグローバル規模で進めています。社内のリソースに加え、販売代理店や開発エコシステムなどの社外のリソースも合わせて提案能力やサポート能力を最大化する、いわゆるGo-to-Market戦略を推進し、お客様のニーズに応えていきます。

 さらに、お客様の需要拡大に応えられるように、供給能力の向上にも取り組んでいます。例えば、SiCについては、SiCウエハーを製造するスウェーデンNorstel社の株式の過半数を取得したほか、SiCウエハーの業界大手であるCree社と向こう数年にわたって150mmウエハーの供給を受けることで合意しました。また、イタリアのミラノ郊外にあるアグラテ工場では、300mmウエハーに対応した新たなファブを建設中です。

5Gによる変革を次の勝機に

最後に、3年間程度のスパンで今後の展望をお聞かせください。

カッシス 当社は市場よりも速いスピードで成長を続けることを常に目指しており、中期的には年間売上120億ドルを達成したいと願っています。

 自動車やインダストリアルに引き続き注力するのはもちろんですが、新たな商機として期待しているのが5Gの実用化です。5Gによって、自動車、インダストリアル、コンシューマーなどすべての分野でディスラプションが起こることは確実です。さまざまな半導体ソリューションに新たな需要が生まれることを期待しています。当社が持つ高い技術力を武器に、研究開発にも積極的に投資しながら、市場の変革をリードし、お客様のニーズに応えていきます。

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ET & IoT Technology 2019で展示した組込みAI画像認識デモ

お問い合わせ

STマイクロエレクトロニクス株式会社
TEL:東京:03-5783-8200 大阪:06-6397-4130 名古屋:052-259-2725
URL:https://www.st.com/