人工知能サミット2019
REVIEW
〜新時代を迎えたAI経営の展望と課題〜
テクノスデータサイエンス・エンジニアリング
執行役員
常務
池田 拓史 氏
ガートナーが2018年10月に発表した「日本におけるテクノロジーのハイプ・サイクル」を引用し、「現在AIはピーク時を超え、幻滅期に入っています」と指摘するテクノスデータサイエンス・エンジニアリングの池田氏。
「2015年に話題になった、キッチンで料理するロボットや、2016年に注目された洗濯物を折り畳むロボットなどは、未だに実現されていません」と、その根拠となる具体例を紹介した。
それらのロボットが実現できない理由について、池田氏は現在のAIが抱える、2つの問題点を指摘する。
1つは、「コンピュータにとっては、人間とチェスをするよりも、1歳児レベルの知覚と運動スキルを実現することのほうがはるかに難しい」という問題だ。もう1つは、「ロボットは、現実に起こりうる問題全てに対処することは難しい」という問題だ。
ここで池田氏は、2019年春に開催された、インダストリー4.0による産業革命をテーマに、ドイツで開催される世界最大規模の産業見本市「ハノーバーメッセ2019」での事例を紹介した。「今年は、製造業における主要プレーヤーの展示を見ても、AIを使ったロボットが、無人化を目指していないことが印象的でした」と述べる。「これまで、ロボットの導入は、無人化によって人件費などのコストを削減することが目的であると考えられてきました。ですが、現在、シーメンスや安川電機などが目指すスマート工場のコンセプトは、人間とロボットとの協働です」(池田氏)。
そのようにシフトしている理由について、池田氏は、「結局、全ての作業をロボットにカバーさせると莫大なコストがかかってしまいます。これでは、ロボット導入の本来の目的である、コスト削減は実現できません。製造業においては、業務が主役であり、AIは脇役です。今は、ロボットと人間がお互いの弱点を補うことが重要なのです」と述べる。
AIは万能ではない。池田氏は、AIが適用可能な企画領域は、大きく2つに限られると述べる。「1つは、企業の業態や業務内容などの用途に合わせてフレームをカスタム設計する“カスタム型”。もう1つは、フレームの固定が可能な用途に絞る“レディメイド型”です」。
さらに池田氏は、AIは事前に学んだ学習データの範囲を超えられず、予測(確率計算)、評価(尤度計算)、知識抽出(コンパクト化)の3つのタスクしか実行できないと述べる。
「したがって、ビジネスの問題をAIで解決する際も、これらのタスクに置き換えなければなりません。そのためには、フィジカルの世界とデジタルの世界との、橋渡しを担う役割を持つエンジニアが必要になります」(池田氏)
その役割を持つエンジニアとは、AIで解決すべきテーマを選ぶ「AIディレクター」、そのテーマを数理問題(デジタル化)に落とし込む「シニアデータサイエンティスト」、デジタル化されたミッションを実行するためのプログラミングを行う「データサイエンティスト」、得られた解をシステムに実装する「AIプロジェクトマネージャー」といった、4つのスキルを持つと、池田氏は説明する。
DX組織を作る際には、どのようなロードマップが考えられるのか。
「まず、最初に“アセスメント”を行い、データ活用のニーズ、データの量と質、想定される解決パターン、阻害要因など、AIで解決すべきテーマについて客観的に評価します。次に、組織の土台となる“データや環境の整備”を行います。この段階では、まだ組織づくりは難しいので“準備室” をつくり、クイックウィンできるようなテーマを選びます。そして、少しずつ社内で存在感を発揮する活動を行い、徐々に人も増やしてようやく“部門を設立”してDXのエンジンを動かし始めます」(池田氏)
AIを活用したDX組織をつくる際のポイントとして、池田氏が強調するのが、クラウドプラットフォームの活用だ。「AIの訓練にはコンピューティングパワーが必要なので、AIモデルを作るのにもっとも有力な手段は、クラウド上でAIのエンジンを構築することです」(池田氏)。
また、製造業ではエッジが重要になり、「今後は、クラウドとエッジを行き来させる、コンテナ技術がキーポイントになっていきます」と、池田氏は展望を述べた。
テクノスデータサイエンス・エンジニアリングは、複数のクラウドプラットフォーマーとも協働してAIアプリケーションの構築に力を入れ、データサイエンス部門の設立支援も行うなど、AIで新しい挑戦に踏み出そうとしている企業を支援する。
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