カスタマーエクスペリエンスフォーラム2019 レビュー

 @ホテル雅叙園東京

冷静(デジタル)と情熱(アナログ)のアイダ?

いま一度現場に目を向けることの必要性

元日本ロレアルCDO、元インスタグラムジャパン事業代表責任者長瀬 次英 氏

 「カスタマーエクスペリエンスフォーラム2019」の幕開けを飾った、こちらの基調講演。会場を埋め尽くした来場者の前に立った長瀬氏は、インスタグラムや日本ロレアルなど、様々な企業でマーケティングに携わってきた経歴の持ち主である。

 セッションの冒頭、長瀬氏はそんな経験を振り返りながら、「マーケターが描くカスタマージャーニーと顧客が購入する動機は必ずしも一致しないこと」を説明。

 それは数多くのカスタマージャーニーに、過去のデータが基になっていることによる現実とのギャップがあることや「顧客がサービスを利用する際の感情」という視点が抜けていることが背景にあると語った。

 それでは購買時のリアルタイムな顧客の感情を知るにはどうすればよいのだろうか?

 長瀬氏曰く、その答えは「現場に目を向けること」だ。

 「買った瞬間でしか、人の気持ちはうかがえない。『なぜそれを買ったんですか』とそこで聞かない限り、買った理由はわかりません。逆に、それさえわかれば簡単です。(中略)つまり現場における顧客データが重要だということです。昔は実際の店舗で、販売員の方が日誌をつけるなどして、データを取っていたと思います。オンラインでもオフラインでも、それを顧客に聞くべきです」(長瀬氏)

 そして、現在、オンライン上で最も注目すべき現場とは、認知から購買までの購買行動すべてが行われるスマートフォン上のコミュニケーションであると話し、次のような言葉を続けた。

 「現在、オンラインの世界で、一番確実にカスタマーエクスペリエンスを上げる場所はスマホです。なぜならば、顧客はスマホを見ている間にカスタマージャーニーを瞬時にこなし、買おうとしているからです。ですので少なくともそこのスマホという『場』に入った人は確実にコンバージョンさせるべき。そして、そのためにはお客様の趣味嗜好やパーソナルデータといった情報が必要になるのです」

 つまりスマートフォン上の顧客行動をリアルタイムでとらえ、その情報に合わせた接客を行うことが重要だということである。

一連の購買行動(=カスタマージャーニー)を表した図。現在、そのすべてがスマートフォン上で行われるようになっている

図を拡大する

日本企業が生き残るカギはおもてなし

 また「例えば店内のデジタル・サイネージで、インスタグラマーの写真の投稿やレコメンドのコメントを表示したりしますが、あれは店頭でのネット検索を防ぐ要素になる。(講演のタイトルに挙げた)冷静(デジタル)と情熱(アナログ)の両方を融合させてきっちりお客様との接点をつくり、関係性を構築すること――現場に立脚することが次のステップになるんじゃないかと思います。サイネージの例を出しましたが、現場で改めて情報を与えることが重要になってくる。つまり現場のメディア化がカスタマーエクスペリエンスを上げるために重要になる」と長瀬氏は説明。

 デジタル技術を駆使して、把握した顧客データに合わせて顧客の興味をひく情報を発信すること(=接客すること)で、購買を阻害する情報への接触を防ぐ効果があることに言及しながら、現場における接客の重要性を改めて強調した。

 さらに長瀬氏は「ちょっと大それた話になりますが、現場を重視することでしか、日本は勝てないと思います」と語り、オンライン、オフラインにかかわらず、現場を重視したマーケティングを行っていかなければ、日本のマーケットで日本企業は存在感を失いかねないと警鐘を鳴らした。グローバル企業のオンラインサービスに対抗するには、日本文化や日本人に合わせた「おもてなし」を行っていくしかないというわけである。

 講演の最後、「現場を大切にしてビジネスをしていくことを前提にしたデジタルツールが生まれることが今後は重要になってくると思います」と話した長瀬氏は、オンラインはもちろん、オフラインでも、現場の「おもてなし」を実現できるようなデジタルツールの登場を期待していることに触れて、降壇。

 約40分にわたる講演が終わると会場からは大きな拍手が送られた。その内容は来場者にとって示唆に富むものだったようだ。

INDEX

デジタル時代における顧客体験のあり方
~MAを活用した最新手法のご紹介~

SATORI マーケティング営業部 部長 兼 カスタマーサクセスグループ グループ長
高橋 美絵 氏

FJORD Trends 2019 - デジタルの大掃除・価値の探求へ

アクセンチュア アクセンチュアインタラクティブ ビジュアルデザイン・ディレクター
苅谷 森嗣 氏

BtoB企業における営業活動のデジタルシフト
~データを活用した顧客とのコミュニケーション実践事例~

コニカミノルタジャパン 執行役員 総合企画室 オムニチャネル戦略推進 部長
岩崎 也寸志 氏

顧客満足だけではない!成果につながる顧客体験とは?
~CVR30%増などWeb接客成功事例から秘訣を解説~

Sprocket 代表取締役
深田 浩嗣 氏

優れたカスタマーエクスペリエンスの鍵を握る、データマネージメントの重要性
~事例から学ぶ最新動向と活用例~

インフォマティカ・ジャパン セールスコンサルティング本部 第二セールスコンサルティング部 部長
宇津木 太志 氏

商品機能価値から商品体験価値へ
-スペック主義からスタイル主導へのパラダイムシフト-

Contentserv 代表取締役
渡辺 信明 氏

アプリが可能にする顧客体験向上とロイヤルカスタマー醸成

ヤプリ コミュニケーション部 マーケティングスペシャリスト
島袋 孝一 氏

STARBUCKS RESERVE ROASTERY TOKYO
~体験の中に眠るTECHNOLOGY~

スターバックスコーヒージャパン スターバックステクノロジー本部 本部長
亀山 博史 氏