カスタマーエクスペリエンスフォーラム2019 レビュー
@ホテル雅叙園東京

デジタル時代における顧客体験のあり方
~MAを活用した最新手法のご紹介~

SATORI株式会社

デジタル時代に求められる顧客体験とそれを実現するマーケティング施策について、SATORIの高橋氏が具体例を織り交ぜながら紹介した。

デジタルファーストな顧客の特徴は非対面と匿名

SATORIマーケティング営業部 部長 兼
カスタマーサクセスグループ グループ長
高橋 美絵 氏

 時代はデジタルへとシフトしている。そのデジタル時代の優れた顧客体験を「デジタルファースト」というが、それはどのようなものだろうか。

 高橋氏はデジタル時代の顧客を、「顧客ははじめにデジタル接点を選択するようになった」、「顧客はデジタルを最も信頼している」という2点で説明する。前者は、見込み顧客の情報収集がネットの検索から始まるということだ。ネットには情報があふれており、いくらでも自分で情報収集ができる環境が整っている。そのため、展示会やショールームに足を運んだり、メーカーやサービス提供会社に問い合わせをするより、まずインターネトで情報収集を始めるのだ。後者は、自らとつながったSNSでシェアされた情報や自身が主体的に探したデジタル情報を信用するということ。その結果、企業の担当者と話をしなくても、自力で十分な情報収集ができると思うようになっている。「営業から詳細な説明をしなければお客様に情報を提供できないと考えているのは売り手だけです。買い手は営業を呼ばなくても自分で情報収集はできると考えています」(高橋氏)

 ガートナー社の調査によれば、2020年までに、売り手と買い手のコミュニケーションの85%は非対面で行われるようになるという(※1)。また、Webサイトの訪問者のうち97%は個人情報を開示せず離脱してしまう(※2)。つまり、デジタル時代の顧客に売り手は会えないし、そもそも名前を明かしてもらえない。高橋氏は、「そんなデジタルファーストな顧客に対して、優れた顧客体験を提供する必要があります。そのためには、顧客に最適な情報を、デジタルを活用して非対面で届けることと、はじめの接点は匿名で始まっていることを理解し、コミュニケーションを設計することが必要です」と指摘する。

 この具体例として高橋氏が挙げたのは、同社が情報共有ツールを導入した際の選定手順である。同社は、マーケティング担当と営業担当が情報共有しやすい仕組みを整備するため、インターネット検索による情報収集から着手した。いくつかのキーワードで検索し、ヒットした記事で情報を収集した結果、当初漠然と考えていたSFAではなく社内チャットが効果的かもしれないと思い至る。社内チャットに絞ってさらに情報収集を続け、最終的に4社に対して資料を請求。さらに送られてきた資料から2社に絞り込み、営業担当者に説明を依頼した。

 すなわち、この事例では営業担当者が顧客と会えたのは最後の最後。しかも、それまでの情報収集はすべて買い手主導で、売り手にとっては相手を把握できない匿名客となっている。高橋氏は、「この最後の2社に残らなければ、会うことすらできません。そして2社に残るためには、Webサイトに課題と自社のソリューションがマッチするという情報をわかりやすく提供できている必要があります」と語る。

 この事例はBtoBだが、BtoCでも同様だ。「もっと広い家に引っ越したい」、「英語力を伸ばしたい」、「友人との食事会はどこに行こうか」。いずれも選択肢は無数にあり、見込み顧客はWeb上での情報収集から着手する。

デジタルファーストな顧客の選定行動は、ほとんどが非対面で行われ、実名がわかるのは最終段階近くになってから。非対面と匿名を前提としたコミュニケーション設計が求められる

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段階に合わせたコンテンツを的確なチャネルで提供

 高橋氏は、見込み顧客との接点を「接触」、「認知」、「興味喚起」、「行動喚起」の4段階で整理。そのうえで、「従来のデジタルマーケティングは、興味喚起から行動喚起を強引に進めたり、認知のみを狙うような施策が独立して存在する状態でした。しかし、顧客体験というのは、本来そういうものではないはずです。優秀なセールスマンが、興味がないはずのお客様をあっという間にその気にさせてしまう。そのテクニックを、Web上で展開するということでしかありません」と指摘する。

 そのために、4段階を正しくとらえ、見込み顧客のニーズに合致するコンテンツを、見込み顧客が各段階で利用するチャネルで提供する必要がある。まず接触段階で行うべき手法は3つ。1つめはコンテンツマーケティングである。自社の製品やサービスのターゲットとなる見込み顧客の課題を考えぬき、検索キーワードを洗い出して記事を作成する。SATORIでは、2年で100以上の記事を作成し、「メルマガ 開封率」、「マーケティングとは」といったキーワードで検索結果の上位表示を実現した。2つめは認知促進広告だ。過去に接触のあったユーザー情報を広告配信プラットフォームへ提供する。そして、その情報を「種」として、広告プラットフォーム内のAIに似たユーザーを探してもらい、広告配信をするという手法である。3つめはメディアの活用だ。そこに見込み顧客がいることがわかっていて、オーディエンスデータの相互利用ができるメディアが見つかれば、そのメディアの集客力を借りて、自社にとって興味関心度が高いユーザーに接触可能となる。

ポップアップやプッシュ通知で匿名客へアクティブな誘導を実現

 認知と興味喚起の段階では、製品やサービスを理解してもらうための啓発コンテンツが必要となる。そして、リターゲティング広告と自社サイト内での誘導施策が有効だ。自社サイトへの訪問履歴があるユーザーに対し、他サイトの広告枠で自社の広告を表示することによって自社サイトへの再訪を促すリターゲティング広告は、接触の段階で適切なメディアを活用することで、より濃いユーザーへ数多くアプローチできるようになる。一方自社サイト内での誘導施策は、潜在客に対して有効。たとえば、サイト内を回遊する様子から顕在客に近づいていると判断した段階で、ポップアップにより事例インタビュー記事に誘導するといった流れだ。「『SATORI』をご利用中のお客様で、ポップアップを利用した資料ダウンロード施策により、クリック率4%、コンバージョン率7%という結果が出たというご報告もいただいています」と高橋氏。見込み顧客の状況に合わせて最適な情報提供がもたらした結果といえよう。誘導施策にはプッシュ通知という方法もある。これは、自社サイトの特定コンテンツを何度か見ている、といったセグメントでターゲティングし、ブラウザへの通知というかたちで再訪を促すもの。ポップアップは自社サイト内でしか出せないが、プッシュ通知は外へ追いかけることができ、クリック率も5~10%と高い。もちろん広告費もかからない。

 優れた顧客体験を提供するには、Webサイト自体を見込み顧客の検討行動に合わせて誘導するようUIを整えることは重要だ。そこにこれらの新たなテクノロジーを加えることで、より優れた顧客体験を提供できる。ただし、やりすぎると嫌がられるので加減が必要だ。

 最後の行動喚起の段階でも、見込み顧客は匿名のままだ。しかし、自社に興味を持っていそうだとわかれば、広告やメディアを利用し、これまで紹介したリターゲティング広告、ポップアップ、プッシュ通知を使って行動喚起を行う。さらに、もうひとつ取り得る施策がある。メールと電話を活用したアプローチだ。「我々がチャットツールを選定した際、2社に資料請求を行いました。このタイミングで見込み顧客は名前を明かしてくれます。数社に絞った段階なので、情報収集もかなり進んでおり、もしかしたら電話やメールでのアプローチを受け入れてもらえる可能性があります。電話番号やメールアドレスがわかった時点で売り手から能動的に個別アプローチができるようになります」(高橋氏)

 デジタル時代の見込み顧客の行動に合わせて、4つのステップを理解し、それぞれに対して適切なタイミング、チャネル、コンテンツでアプローチすることで、CPA(顧客獲得単価)を上げることなく母集団を増やすことが可能になる。高橋氏は、「当社自身の成果では、MA(マーケティングオートメーション)と広告を同時に活用して、獲得効率を119%へ向上させ、獲得広告のCPAは他社に比べて約1/5でした」と胸を張る。

 「SATORI」は、匿名客と実名客両方に完全対応したMAツール。一般的なMAが実名になった後しかカバーできないのに対し、「SATORI」は匿名の段階から一気通貫で優れた顧客体験を提供できる。同社は創業4年ながら、既に「SATORI」の導入企業は500社にのぼる。ユーザーに選定理由を聞いたところ、42.9%がポップアップやプッシュ通知を活用した匿名客へのアプローチ、39.3%が導入費用、30.4%が導入の容易さ、26.8%がサポート体制を評価した。

 SATORIは、先日MAツールの認知度で、No.1を獲得(※3)。少人数の紹介セミナーなども用意されている。

  • ※1 出所:Gartner Predicts, Gartner Customer 360 Summit 2011
  • ※2 SATORI調べ
  • ※3 外部アンケートサービスによる自社調べ。回答総数1101。

INDEX

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