カスタマーエクスペリエンスフォーラム2019 レビュー
@ホテル雅叙園東京

STARBUCKS RESERVE ® ROASTERY TOKYO
~体験の中に眠るTechnology~

スターバックス コーヒー ジャパン株式会社

スターバックスが今年2月にオープンさせた「スターバックス リザーブ® ロースタリー 東京」。コーヒーを介して提供される、非日常が味わえる空間、そして特別な顧客体験。この店舗を支える様々なノウハウ・技術に迫る。

満足度の向上は「つながりの瞬間」から

スターバックス コーヒー ジャパンスターバックステクノロジー本部
本部長
亀山 博史 氏

 スターバックスは2019年2月、東京・中目黒に焙煎工場を併設する店舗「スターバックス リザーブ® ロースタリー 東京」をオープンさせた。そこでも大切にされているのが、スターバックスが独自のサービスを提供するうえでいつも意識するという「つながりの瞬間」である。亀山氏は「コーヒーを通じて心からつながりを感じる、一瞬でもそんな時間を共有できたら、ちょっとしたことでも誰かにとっては最高に幸せな瞬間になるでしょう。どこのお店でも、コーヒーを飲むたびに毎回そんな時間が訪れるなら、お客さまや私たちだけでなく、世界中に明るい未来が待っています」と、スターバックスが考えるカスタマーエクスペリエンスの価値について述べた。

 つながりから生まれる体験こそがスターバックスにとっての強さであり、他には真似のできない価値を生み出すと紹介する亀山氏だが、「カスタマージャーニーの進化には、パートナー(従業員)ジャーニーを進化させることが重要です」と述べ、従業員の満足度向上が顧客の満足度向上にもつながっていくと紹介する。

非日常の体験が味わえる空間作り

 実際に「スターバックス リザーブ® ロースタリー 東京」では、どのようなカスタマーエクスペリエンスが提供さているのか。例えば、混雑で入店待ちをする際には、QRコードが印刷されたレシートが発券される。そのコードをスマホで読み取れば、自分の前に何組が入場を待っているかがわかるという。これによって、いつ入店できるかわからないのに、ただ列に並び続けることもなくなる。「あとどのくらいで入れそうかという目処が立てば、入店までの時間を無駄に過ごさずに、目黒川周辺を散歩するなど新たな体験が楽しめます」(亀山氏)

 店内では、コンピュータ制御された音響システムによって、4階建ての広い空間のどこにいても同じ音楽が流れているように感じさせてくれる。「スピーカーは天井の裏側に隠れているので、自然にどこからともなく音楽が耳に入ってくることも、日常にはない体験となるでしょう」(亀山氏)

「スターバックス リザーブ® ロースタリー 東京」ではデジタルとアナログを融合させた技術がカスタマーエクスペリエンスを向上させる。

図を拡大する

 スターバックスの店舗で販売するコーヒー豆は、建物内で焙煎して袋詰めまでが行われている。そういった過程も見てもらうことで、コーヒーに愛情を感じてもらいたいと亀山氏は考えている。しかし、コンピュータで制御された生産管理システムなどの最新技術は、見えないようにしているのだ。 逆に、あえてレトロなシステムを導入することで、特別な体験を味わってもらう演出がなされている。その一つとして、焙煎中のコーヒー豆に関する情報を、昔の空港にあった数字がパタパタと音を立てて変わる、アナログ式の掲示板を使って表示させている。また、コーヒー豆がパイプの中を通っていく“カラカラッ”という音も、あえて店内で聞こえるようにしている。「コーヒー豆が商品として生まれ変わるエモーショナルな瞬間を、お客さまと一緒に目と耳で分かち合いたいと思っています」(亀山氏)

 お店の外にも、覗き窓からコーヒーが焙煎されているところが見られる「ビュー・ファインダー」が設置されている。「お客さまがお店を出た瞬間に現実の世界に戻ってしまうのではなく、店外にも体験を継続させることで、余韻を残しながら徐々に現実に戻っていただきたいと思っています」(亀山氏)

すべての部門の協力がわくわく体験を生み出す

すべてにおいてデザインを優先させ、ビジュアルにもこだわりを持つ。それが感動体験に結びつくと、亀山氏は述べる。「利便性追求のためには、機能的な価値を与えることも必要ですが、それだけではお客さまの感動体験は生まれません。そこに、デザイン性や、わくわくさせるスターバックスらしさを、ほんの一手間加えることが効果的なんです」(亀山氏)

 公式モバイルアプリで事前に注文・決済を完了させて商品を受け取る「Mobile Order & Pay」では、自分のオーダーが「パナマ★01」や「メキシコ★01」など、コーヒーの原産地の名前で表示される。銀行窓口での順番待ちなどの場合、整理券には受付順を示す数字だけが印字され、自分が記号化されているように感じてしまう。「一手間を加えるだけで、カスタマーエクスペリエンスは大きく変わってくるのです。工夫次第でいろいろな体験がつくれると確信しています」(亀山氏)

 亀山氏が「スターバックス リザーブ® ロースタリー 東京」の中で一番好きな場所が、3階の踊場にあるという。そこには、スターバックスの創設者らと一緒に、テクノロジープロジェクトに関わったメンバーや店舗で働く従業員の顔が描かれている。「こんなことからも、従業員を大切にしていることがわかってもらえると思います」(亀山氏)

 テクノロジーやマーケティング、店舗設計だけでなく、すべての部門が協力し合わないと、顧客をわくわくさせる体験はつくれないと述べる亀山氏。「機能的な価値だけでなく、情緒的な価値も見つけ出そうとした時に、本質が見えてくると思います。なんのためにお客さまにサービスを提供しているのか、なんのためにデジタルを使うのかなどを考え直すきっかけになるでしょう」(亀山氏)

INDEX

冷静(デジタル)と情熱(アナログ)のアイダ?

長瀬 次英 氏

デジタル時代における顧客体験のあり方
~MAを活用した最新手法のご紹介~

SATORI マーケティング営業部 部長 兼 カスタマーサクセスグループ グループ長
高橋 美絵 氏

FJORD Trends 2019 - デジタルの大掃除・価値の探求へ

アクセンチュア アクセンチュアインタラクティブ ビジュアルデザイン・ディレクター
苅谷 森嗣 氏

BtoB企業における営業活動のデジタルシフト
~データを活用した顧客とのコミュニケーション実践事例~

コニカミノルタジャパン 執行役員 総合企画室 オムニチャネル戦略推進 部長
岩崎 也寸志 氏

顧客満足だけではない!成果につながる顧客体験とは?
~CVR30%増などWeb接客成功事例から秘訣を解説~

Sprocket 代表取締役
深田 浩嗣 氏

優れたカスタマーエクスペリエンスの鍵を握る、データマネージメントの重要性
~事例から学ぶ最新動向と活用例~

インフォマティカ・ジャパン セールスコンサルティング本部 第二セールスコンサルティング部 部長
宇津木 太志 氏

商品機能価値から商品体験価値へ
-スペック主義からスタイル主導へのパラダイムシフト-

Contentserv 代表取締役
渡辺 信明 氏

アプリが可能にする顧客体験向上とロイヤルカスタマー醸成

ヤプリ コミュニケーション部 マーケティングスペシャリスト
島袋 孝一 氏