テラル株式会社(TERAL) - 日経 xTECH Special

テラル株式会社100th

ポンプ・送風機のメーカーであるテラルが2018年11月、広島県福山市の本社工場敷地内にショールーム併設のオフィスビルを新築し、「Nearly ZEB(ニアリーゼブ)」の認証を取得した。ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化の狙いやその意義、活用技術の注目点、今後の展開について、同社代表取締役社長の菅田博文氏と早稲田大学理工学術院創造理工学部建築学科教授の田辺新一氏が本音を語り合います。


菅田創業100周年となる2018年を迎え、本社工場オフィスを建て替えることにしました。建築コンセプトは、当社が掲げる社是“水と空気で未来を創る”をベースとし、次世代への企業姿勢を体現することです。この目的をかなえるためにZEBに取り組みました。省エネと快適性を両立した工場敷地内オフィスのモデルを目指しています。

田辺先進的な企業はZEBをつくる時代です。いわば、今後のメーンストリームとも考えられ、世界的にもZEB建築は増えています。その先取りを広島で実現したのは、とても素晴らしいですね。

菅田外皮の高断熱・高気密化に加え、庇、外付けフィン、外気利用などパッシブな手法と、井水熱利用、太陽光発電、風力発電、マイクロ水力発電などアクティブな手法の双方を活用し、エネルギー消費量の77%削減を可能にしました。

商品化に向けて開発中の技術も活用する。マイクロ水力発電機は、大学との共同研究で水車ユニットを技術開発して以来、開発を進めているもの。ここでは井水系統からの電力回収に利用する。小型風力発電機は、大学との共同研究で開発したバイオミメティクス(生物規範)技術を用いる。鳥の翼などの動きを解析し、それを風車の羽根車に利用することで、低風速で稼動し、しかも風速や風向の変化に追従しやすい、効率的な風力発電機を目指す

拡大
輻射冷房に独自の湿度制御
日本標準になる可能性も

田辺77%削減とは、なかなかです。エネルギー消費量の削減というと、暗さや暑さに耐えるがまんの省エネになりがちです。しかし、ここはそれがない。柱のない南に面した開放的なオフィス空間(50×20m)は、まさに働きやすさを感じさせます。これこそ本来、ZEBの目指すものです。社員の皆さんがプライドを持って働けることこそ大切です。

菅田2階の執務スペースは、井水を利用した天井輻射冷房や床からの滲み出し暖房による快適な空調を実現しています。社員の知的生産性向上や健康に配慮しました。
 輻射冷房ではパネルに結露を生じさせないように湿度コントロールが必須のため、マルチモードローター空調機を用いました。ローター速度を制御し、冷房時はデシカント機能、暖房時は全熱交換器機能、と使い分けられます。日本国内に先駆けての試みです。

田辺輻射冷房は欧州では標準的な空調方式ですが、日本では最近、外皮性能が高まり、照明設備やOA機器の空調負荷が減って採用できるようになってきました。ただ日本では、除湿をどうするかが課題です。
 マルチモードローター空調機を用いた方式は、運用データを蓄積していけば、日本で標準的なものになり得ます。吸湿したローターの再生に太陽熱を利用し、自然エネルギーとの親和性も高い。運用データが、楽しみです。

菅田広島県内のオフィスビルで初めて「Nearly ZEB」を取得し、ZEBリーディング・オーナーとして登録しました。これまでも、流体技術や解析技術を基にポンプや送風機の高効率化でCO2排出削減や環境改善事業に取り組んできました。今後はそれらを生かしたZEB化を提案し、地域に貢献していきます。

田辺既存の技術をようやく花開かせることができる時代になってきたわけですね。イノベーションは何かタネがあって初めて形になります。今回のチャレンジが次のイノベーションにつながることを期待します。


これまでも環境改善の提案
ZEBで働く姿に笑顔が

菅田そうですね。製品提供はもちろん、それらを組み合わせたシステムやその運用の提案にまでつなげていきたいと考えています。
 環境改善へのソリューション提案としてはすでに、工場の暑熱対策や作業所の有機溶剤対策などを手掛けてきました。技術力と独自のノウハウに基づく提案力を強みに、現場調査から、設計、確認申請、施工、アフターサービスまで、一貫したサポート体制の下、快適な環境づくりをお手伝いしています。

田辺暑熱対策や有機溶剤対策とは、ZEB化と同様に快適性を高める提案と言えます。これまでも「働き方」に密着したソリューションの提案を展開していたというのは面白い。

菅田今後は、エネルギー管理システム(BEMS)による自動制御はもとより、社員が一丸となったきめ細かな省エネ運転活動にも取り組み、設計値以上の成果を上げていきたいと考えています。さらに工場全体の環境を見直し、緑化計画を進めるとともにリフレッシュ施設などを順次整備し、工場としての環境モデルを目指す方針です。

田辺環境対策と言うと「コスト」という印象が強かったですが、最近は「投資」として評価されるようにもなっています。いわゆるESG(環境、社会、ガバナンス)経営が注目されるようになり、その観点で投資しないと、企業価値が下がる時代です。
 建築物のように長く使うものほどCO2排出削減に向けて早く対策しないと、ロックイン(固定化)してしまいます。それを防ぐ意味でも、ZEB化やZEBリーディング・オーナーの役割は重要です。
 何より感銘を受けたのは、ここで働いている社員の皆さんが、笑顔であるということ。これこそ、ZEBで働く姿の理想だと思います。


テラル株式会社 本社工場オフィス

構造・規模/鉄骨2階建て 延床面積/1963.4㎡ 設計/株式会社プランテック総合計画事務所 施工/株式会社大林組、ダイダン株式会社、株式会社きんでん ショールーム設計・施工/株式会社大広、株式会社大広西日本、株式会社大広ONES、株式会社日展


〔お問い合わせ〕

テラル株式会社 本社 〒720-0003 広島県福山市御幸町森脇230
TEL.084-955-1111 FAX.084-955-5777
 www.teral.net
ISO14001 環境マネジメントシステム適用
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