企業が生き残るために

業務とシステムの改革を同時に成功させる新手法

企業は生き残るための行動をとらなければならない。景気や市場は動き続け、AI(人工知能)や5G、自動運転など新しいテクノロジーによって事業の環境も変わっていく。カギはこうした変化に応じて業務と情報システムを改革し続けることだ。それを可能にする新手法がある。ビジネスシステムイニシアティブ協会(BSIA)のシンポジウム2019で発表された事例を報告する。


特定非営利活動法人のBSIAはビジネスを成功に導くために主体的にIT(情報技術)を使う具体策を学び合う場を提供している。

課題1

生き残るには?

変化し続ける
強みを磨く
無駄をとる

BSIAシンポジウム2019では『モノづくり工場の改善・改革(TPS)&イノベーションのテコであるITとのシナジー効果による誰でもすぐに出来る企業競争力向上事例「ユニバーサルプロジェクト」』と題した報告があった。

発表者はユニバーサルジョイントのメーカー、協和工業株式会社の鬼頭佑治代表取締役社長と、業務とシステムの同時改革のための手法を提供する有限会社ユニバーサル・シェル・プログラミング研究所の當仲寛哲代表取締役である。

二つの部品をつなぎ合わせる継手の中で、つなぐ角度を自由に変えられるものをユニバーサルジョイント(自在継手)と呼ぶ。自動車や建機などに必須の部品である。協和工業は小型ユニバーサルジョイントのトップメーカーで、冷間鍛造という世界で初の製法を実現させた技術力を持つ。

こうした強みに磨きをかけつつ、モノづくり工場の改善・改革を続けていく。生き残るには企業の芯になる強みが不可欠だが、同時に変えるべきところは変え、無駄をとることが欠かせない。協和工業は「0・1/2・2」という活動に取り組んでいる。0(ゼロ)とは止めること、1/2は半分にすること、2は2倍の価値を生むことである。

          

課題2

代わり続けるには?

業務とシステムの改革を
同時進行させる

だが、協和工業には懸案があった。情報システムである。生産管理パッケージソフトウエアを入れたものの、事務が楽になるどころかうまく機能せず、現場の社員がPCの前に座り、システムを動かすために時間を割く、といった行動が当たり前になった。

これはおかしいと鬼頭社長はシステムを作り直したが、システムへの入力作業が現場に負荷をかけ、しかも正確な情報がとれない状態が続いた。製造ラインへの指示、ラインの稼働状況の把握は人手でこなしており、現場からの問い合わせが多発していた。

鬼頭社長は本当に必要な業務を改革し、必要ならそこでシステムを使おうと考えた。いわゆるシステムの要件定義はあえてしない。現場の困りごとを集めてシステムの要件にすると、例えば「調べにくいから調べやすくしてくれ」といった要件が出てくるが、それをそのままシステムにしていてはきりがない。むしろ「調べなくて済む」やり方を考えるべきだという。

業務とシステムの改革を同時にやれるパートナーとしてユニバーサル・シェル・プログラミング研究所を鬼頭社長は選んだ。

          

課題3

業務とシステムを
同時に改革するには?

徹底した目的指向
正確なデータ収集
目的ごとに順次開発
現場で開発・改良

ユニバーサル・シェル・プログラミング研究所は鬼頭社長が望む、目的指向のやり方をかねてより実績してきた。現状を肯定せず、業務と現場を改革することに重点を置き、システム開発は改革の手段と位置付ける。

業務とシステムの改革にあたっては試行錯誤を繰り返し、現場の実力に合わせて進めていく。議論ばかり重ねた後、理想的なシステムを一気につくるようなことはしない。

ユニバーサル・シェル・プログラミング研究所のエンジニアは協和工業の現場に入り込み、現場の設備移動や床のライン引きにも参加し、どうすれば人とモノの流れが良くなるかを現場と一緒になって考えた。

まず、生産計画を立案するシステムを開発した。従来手作業でこなしていた作業をほぼ自動化し、ミスがないようにする。

精度の高いデータをリアルタイムに収集することにも取り組んだ。業務改革に必要な生産実績や稼働状況に絞り、ラインの機器にセンサーを付け、自動収集する。従来は手作業で収集していたため正確性に難があった。

          

いきなり複数の業務を自動化したり、多種多様なデータを集めたりはしない。現場が新しい仕組みを使いこなせるようになり、次の改革が必要になってから対象業務やデータを増やしていく。

計画立案やデータ収集のシステムはユニバーサル・シェル・プログラミング研究所が提唱する「ユニケージ」という手法で素早く開発し、既存の情報システムとつないだ。新システムの処理結果は既存システムへ自動入力できる。既存システムを一気に作り直すのではなく、必要な新システムをつないでいくやり方を選んだ。

計画と実績のデータを正確にすると共に現場へ公開し、拠点間・部署間・担当者間の連携をよくすることに取り組んだ。同じデータを見ればコミュニケーションのロスを減らせる。

改革により、2週間分の部門計画の作成は4時間で済むようになった。従来は手作業だったため、丸1日かかっていた。実績入力から解放されたため、作業リードタイム短縮の意識が高まった。鬼頭社長によると事務の残業はほとんどなくなった。

業務とシステムを同時に改革するユニバーサルプロジェクトは続いており、原価計算や調達計画をよりよくしていく。方針は「製造現場を中心にしつつ会社組織全体を巻き込み、部署間の連携を深め、自動化・見える化を推進する」ことだ。

          

課題4

変化に強い基礎技術とは?

小回りが利く
洗練されている

業務とシステムを臨機応変に変えていくためには経営トップが先頭に立ち、改革をいとわない企業文化を育む必要があるが同時に、変化に強いシステム開発技術を持たなければならない。協和工業が採用した「ユニケージ」は変化に強い条件を備えている。

まず、小回りが利く。シェルと呼ばれる小さい機能を組み合わせてシステムをつくっていく。トレーニングを受ければ企業の現場担当者の手でシステムを組める。記述するプログラムは短くて済み、すぐに動かして確かめられる。コンピューターをほぼダイレクトに利用し、余計なソフトウエアを使わないので高速処理が可能である。

そして洗練されている。ユニケージはUNIXと呼ばれる基本ソフトウエアを利用している。UNIX やそこで使われるシェルは長年にわたって改善がほどこされ、練り上げられたテクノロジーになっている。翌年になってがらっと仕様が変わり、互換性がなくなる、といったことにはならない。UNIXはほぼすべてのコンピューターで利用でき、他のシステムとの接続もしやすい。

改革の勘所

業務とシステムを同時に改革する勘所をまとめておこう。

  • ・経営者が業務とシステムを改革する基本方針を出す
  • ・全社最適を目指しつつ、現場の実力に合わせて進めていく
  • ・目的を明確にし、そのために業務とシステムをどう変えるかを考える
  • ・現場に入り、業務の改革や部門間のコミュニケーションを支援する
  • ・柔軟なシステム開発手法を採用する
  • ・センサーなどを使い、現場をリアルタイムで見える化する
  • ・スクラップ&ビルドでなく既存のシステムも活かす
  • お問い合わせ
  • 有限会社ユニバーサル・シェル・プログラミング研究所
  • Universal Shell Programming Laboratory
  • 電話 03-3432-1174
  • Email koho@usp-lab.com