Industrie4.0やSociety5.0といったデジタルトランスフォーメーションの潮流は、産業機器の機能のソフトウエア化を加速させている。ただし、機能のソフトウエア化には、2つの課題が未解決のまま残されていることに、多くの産業機器メーカーが頭を悩ましている。1つは、海賊版や模倣品の開発を防ぐ確かな保護手段の確立。もう1つは、高度な技術とノウハウを注いだ価値あるソフトウエアの収益化である。これら2つの課題を解決し、欧米の産業機器業界にイノベーションをもたらしているのが、ドイツのWIBU-SYSTEMS(ウイブシステムズ)が提供するソフトウエア保護・ライセンシングのソリューション「CodeMeter(コードメーター)」である。
図1 WIBU-SYSTEMS株式会社 代表取締役 丸山 智樹 氏
WIBU-SYSTEMS
株式会社
代表取締役 丸山 智樹 氏

ファクトリーオートメーション(FA)やロボット、医療、交通、計測・メンテナンス……。こうした多くの分野で利用される産業機器の機能が、ソフトウエアによって実現されるようになった。

今では、システムの制御はもちろんのこと、画像処理や人工知能(AI)による推論といった、機器の価値を決める部分に高度な技術やノウハウを注いだソフトウエアが使われている。そして、柔軟に機能更新できるソフトウエアの特徴を活かして、産業機器の分野でも、パソコンやスマートフォンと同様にアップデートして常に最新機能を利用できる。

その半面、模倣品を作る手段である“リバースエンジニアリング”の対象になってしまった。ところが、産業機器の多くが、ソフトウエアのプロテクション(保護)をすることなく、市場投入されているのが実情である。

また、近年、産業機器に実装するソフトウエアには、製造業のビジネスモデルに革新をもたらす役割が期待されるようになった。機器や設備の売り切りビジネスから、サービス提供を中心とする高収益で継続的なビジネスへと転換したいと考える製造業は多い。機器の機能をソフトウエア化していれば、アップデートやメンテナンスといったアフターマーケットでのサービス提供、さらにはペイ・パー・ユーズ(従量課金)や定額のサブスクリプション(利用権付与)など、多様なビジネスモデルを展開できる。

そのためには、ユーザーのソフトウエア利用状況を把握し、管理・制御するライセンシングが欠かせない。しかし、仕組みを具体化する技術を持たないため、手をこまねいているのが現状だ。

ソフトを保護・管理するCodeMeter

製造業が抱える課題を解決し、ビジネス革新の障壁を取り除くための強力なツールとなる可能性を秘めているのが、WIBU-SYSTEMSのCodeMeterである(図1)。CodeMeterは、機能をソフトウエアで実現する産業システムに、大きく2つの機能を付加する。1つは、ソフトウエアやデジタル資産など知的財産(IP)を保護し、リバースエンジニアリングの脅威から守ること。もう1つは、ライセンス権限をソフトウエア全体もしくは機能単位で細かく付与・管理・制御し、ソフトウエアの収益化を後押しすることである。

CodeMeterの開発元であるWIBU-SYSTEMSは、1989年にドイツのカールスルーエで創立されたソフトウエアの保護とライセンシングのフレームワークを提供する企業である。2018年10月に日本法人が設立され、日本市場での技術提供を本格化させた。

同社は、いわゆるIT企業とは一線を画す、製造業に向けた技術提供にフォーカスしている。ドイツには、産業機械や自動車などの分野で、技術開発とビジネス創出の双方で世界をリードする企業が数多くある。「厳しい目を持つお客様に囲まれて、要求に応える技術を開発することで、CodeMeterは、ドイツをはじめとする世界の先進企業のビジネスモデルの根幹に関わる重要な部分に広く採用されています」とWIBU-SYSTEMS日本法人代表取締役の丸山智樹氏はいう。

機能のソフトウエア化とインターネットへの接続が当たり前となったことで、産業機器でも、リバースエンジニアリングの対象になるようになった。

実際、先進的産業機器を開発する企業は、リバースエンジニアリングによる被害を受けている。VDMA(ドイツ機械工業会)によると、メンバー企業の90%が製品の著作権侵害や偽造の被害を受け、その損失額は数十億米ドルにも及ぶという。厳格に保護されていると思われる軍用の戦闘シミュレーターでさえ、偽造の被害を受けている状況である。

こうした状況に対応するため、SSLのような暗号化技術を使ってネットワーク上のセキュリティ対策を厳格化する動きは活発化している。しかし、産業機器そのものに保護機能を盛り込む対策は進んでいない。これは、「万全の対策を施すため、どのような技術の利用が必要で、どのような対策手段があるのか周知されていないからです」と丸山氏は語る。

図1 WIBU-SYSTEMSのCodeMeter (左)CodeMeterで提供する機能とその効果、(右)CodeMeterの基本構造(産業用PCなどに向けたCodeMeter Runtimeの場合)

図1 WIBU-SYSTEMSのCodeMeter
(左)CodeMeterで提供する機能とその効果、
(右)CodeMeterの基本構造(産業用PCなどに向けたCodeMeter Runtimeの場合)
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リバースエンジニアリングから
価値ある知的財産を保護

独自技術を併用した厳重な保護システム

CodeMeterならば、ネットワーク上のセキュリティ対策が破られても、システム内の仕組みが見えないように暗号化・難読化できる。仮に外部の人間が保護対象となるソフトウエアに触れることができたとしても、即座に動作不能な状態になる。さらに、CodeMeterを開発ツールに組み込んでおけば、その成果物である設計データやAIの学習済みパラメーターなども保護することが可能だ。産業機器で動かすソフトウエアを、機器ユーザーが独自開発するための環境を提供している企業にとって、有効な保護手段となる。

ソフトウエア保護と個々のデータの暗号化には共通鍵暗号である128ビットAESを、デジタル署名やクラウド認証には楕円曲線暗号(224ビット)と2048ビットRSA暗号を使用。加えて、独自の保護・暗号化手法である「BlurryBoxcryptographicmethod」を併用し、厳重に保護している。これは、暗号化した後にファイルに散りばめて難読化したり、ハッカーが触れたことを検知してソフトウエアを停止させる技術である。

細かなライセンシングでソフトを収益化

CodeMeterは、保護対象とするソフトウエアのソースコードに、原則的にマクロなどを付けなくても利用できる。ローカルライセンスマネージャーと呼ぶ保護・ライセンシング機能で、対象となるソフトウエアをまるごとラッピングするようなイメージで保護する。CodeMeter自体を外部から見えなくすることもできるが、CodeMeterの存在をあえて見せて抑止力として使うこともできる。

ソフトウエアを利用する際には、SDカードやUSBメモリー形態をしたセキュアドングルの挿入やコンピュータ固有のソフトウエア・ライセンス・ファイルによって起動の指令を掛け、ライセンスが正しければ実行可能な状態になる(図2)。

CodeMeterは、様々な規模のシステムを保護対象にできる点が特徴である。PCのような比較的高性能なシステムへの実装を想定した「CodeMeterRuntime」、組み込みシステムや携帯機器、ストレージの容量に制限があるシステムに向けた「CodeMeterEmbedded」、マイクロコントローラーやFPGAへの実装を想定した「CodeMeterμEmbedded」と、保護対象のシステム規模に合わせて、3つのローカルライセンスマネージャーを用意している。

さらに、CodeMeterを活用すれば、ソフトウエアのライセンシングのモデルと条件を自在に設定して、厳密に管理・制御することが可能になる。ライセンスモデルは、シングルユーザー、利用の都度の課金、定額制のサブスクリプション、トライアルなどあらゆるモデルに適用できる。条件も、ライセンスの数、利用可能な機能、有効期限、利用回数制限、ライセンスの移譲など、様々な観点から指定できる。そして、ソフトウエアのユーザーの利用状況をサーバーからつぶさに把握し、それぞれのユーザーごとにきめ細かなライセンスの管理・制御が可能だ。2019年末には、クラウドライセンシングにも対応する予定である。

「私たちには、世界で実践されたソフトウエア収益化に関する数々の知見が蓄積しています。お客様のビジネス環境や製品特性を考慮し、価値あるソフトウエアをどのように収益化していくか提案いたします」(丸山氏)。CodeMeterは、これまで機器の売り切りビジネスしかできていなかった産業機器メーカーが、より高収益で継続的なビジネスを営むための鍵を握るツールだ。さらに、マイコンやFPGAを提供する半導体メーカーが、対応ソフトウエアの提供を収益化するためにも利用できる。

図2 ソフトウェア起動時に用いるドングルなどCodeMeterの認証媒体

図2 ソストウエア起動時に用いるドングルなどCodeMeterの認証媒体
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価値の中心となったソフトを高利益率で
継続的な収入源に

FAのリーダー企業は既にフル活用

世界では、CodeMeterを活用した、名だたる産業機器メーカーによるソフトウエアの収益化成功例が出てきている(図3)。

例えば、ドイツのSiemensは、同社製の産業機器やPLCを動かすソフトウエアを提供する「TIAPortal」のアクセス権の管理・制御にCodeMeterを採用している。採用の目的は、ソフトウエアの保護と収益化であり、ソフトウエア関連の売り上げを急激に伸ばしている同社にとっては、ビジネスの中核サービスの要所にCodeMeterを選んだ格好だ。Siemens製ソフトウエアを購入すると、ユーザーが権利を持つソフトウエアがサイトに出てくる。そして、ドングル中にある独自発行したデジタルパスワードによってアクセス権を確認して利用可能になる。その際、ソフトウエアを開発するエンジニアには編集権を与え、メンテナンス担当者には閲覧権だけを与えるといったライセンス管理も実施している。

米RockwellAutomationもまた、CodeMeterのユーザー企業である。同社のソフトウエア開発環境である「Studio5000LogixDesigner」のコンテンツ保護技術として採用した。開発したソフトウエアを同社製PLCに実装する際には、CodeMeterで保護したソースコードを入れたSDカードを介して実装する。PLCとSDカードの間で相互認証し、合致すればソフトウエアが実行可能になる。

SiemensとRockwellという、FA界を代表する企業がいずれも新ビジネスの中核にCodeMeterを採用している点に、時代の要請に応えるCodeMeterの高い価値を垣間見ることができる。

また、このような例もある。ドイツの医療機器メーカーであるAgfaHealthCareは、かつては自社製X線診断装置の消耗品であるフィルムの販売で、高収益なビジネスを営んでいた。しかし、X線診断装置のデジタル化が進み、コンピュータ上で撮影した画像をすぐに確認できるようになったため、消耗品の収益を失ってしまった。そこで同社は、CodeMeterを活用してライセンス管理することで、利用の都度課金する継続的な収益を見込めるビジネスモデルを取ることができた。デジタル化によって消耗品ビジネスを失った産業機器メーカーにとって、大いに参考になる事例だ。

図3 CodeMeterの採用事例 (左)Rockwell Automationの「Studio 5000 Logix Designer」、(右)Siemensの産業機器用ソフト「TIA Portal」

図3 CodeMeterの採用事例
(左)Rockwell Automationの「Studio 5000 Logix Designer」、
(右)Siemensの産業機器用ソフト「TIA Portal」
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業界標準を目指すCodeMeter

これから、製造業のビジネスのあらゆるシーンで、WIBU-SYSTEMSのCodeMeterの役割はさらに重要性を増していくことだろう。「WIBU-SYSTEMSでは、CodeMeterを保護とライセンシングの業界標準技術へと育てていきます。日本には、FAや産業機械、ロボット、自動車、医療機器、さらに産業用のソフトウエアを提供するベンダーが数多くいます。こうした企業が開発した価値あるソフトウエアを保護し、新たな収益源にしていくためWIBU-SYSTEMSは貢献できると考えています」と丸山氏は語る。

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日経 xTECH EXPO出展

2019年10月9-11日

東京ビッグサイト 西ホール

ブース番号 西ホール1 1174