激動をチャンスに変える2021年
市場変化や顧客ニーズにスピードで応える
複雑化する顧客の課題を、
高度なアナログ技術と
アプリケーションの
専門性で解決する
アナログ・デバイセズ
代表取締役社長 工学博士
中村 勝史氏

市場変化や顧客ニーズにスピードで応える
アナログ・デバイセズ
代表取締役社長 工学博士
中村 勝史氏
社会がデジタル化へと進む中で重要性がさらに増しているのがアナログ技術だ。アナログ・デバイセズが展開する豊富なアナログ製品は、各種性能が優秀であるだけでなく、同社のシステム技術の理解と、それを基に提供される技術サービスが、顧客のシステムレベルの問題を解決するものとして不可欠な存在になっている。2020年11月に代表取締役社長に就任した中村勝史氏に取り組みを聞いた。
—新社長就任おめでとうございます。簡単に経歴を紹介してください。
中村 ありがとうございます。私は1994年にアメリカのアナログ・デバイセズにコンバーター事業部の設計者として入社し、組み込みアプリケーション向けのCMOSコンバーターICのほか、デジタル画像処理ICなどの開発に従事してきました。その後、事業部門のディレクターなどを務めたのち、2019年から日本のセールス部門を統括してきました。
—中村社長はアナログ・デバイセズ社内でトップクラスの技術者に与えられる数少ない技術フェローの一人であり、また、IEEEからも最高位であるフェローの称号を受けています。そうした方が経営トップに就かれることは珍しいのではないでしょうか。
中村 たしかに普通に考えると珍しいかもれませんが、アナログ・デバイセズは以前からお客様の課題を技術力で解決してきた会社です。半導体製品の性能はもちろんですが、現場の技術力をとても重視してきました。ところが、機器やアプリケーションの高性能化に伴って、お客様の課題もどんどん難しくなってきています。これまでにない高度で複雑な課題を解決していかなければなりません。高い技術や品質を求める日本のお客様に、さらにしっかりとした技術力を製品事業部との連携を一層速いスピードで提供していこうという考えもあり、社長を拝命したと考えています。
—2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が経済や社会に大きな影響を与えた年となってしまいましたが、今年のビジネスを振り返ってください。
中村 米中貿易摩擦の影響が当社にも及んだのが2019年で、市場が戻ろうとしていた矢先にCOVID-19が発生し、先が不透明になってしまったというのが正直なところでした。2020年1月から2月にかけて中国の経済が止まり、3月からはグローバルへと影響が広がっていきますが、その中国では感染拡大がほぼ制圧されたことで、4月から5月にかけて急激な勢いで経済が動き出して受注が戻ったんですね。そのおかげで、年間で見たときの業績は、当初想定していたほどの落ち込みはありませんでした。当然ですが、その期間、会社としてはCOVID-19の診療においてグローバルで不足した人工呼吸器や画像診断装置、ステイホームによる通信インフラ向けの製品供給を優先的に行いました。
具体的な数字を少しご紹介しますと、当社の会計年度で2020年度は第1四半期および第2四半期ともに売上高で前年比-14~15%となりましたが、第3四半期は中国での需要回復を主因に同-2%にまで持ち直し、さらに第4四半期は同+6%まで戻りました。
その結果、2020年度通年では売上高56億米ドルとなり、営業利益も15億米ドルを確保できました。
ただし、急激な需要増に加えて後工程に必要な原材料の調達が難しくなっているなどの影響で、一部の製品に納期遅れが生じています。できるだけ早く解消できるよう努めている状況です。
—どのような分野で需要の回復が見られたのでしょうか。
中村 一つが家電やオーディオ・ビジュアル機器などのコンスーマ分野です。ステイホームで在宅時間が長くなったことで、買い替えや買い増し需要が欧米で増えたことが理由です。
自動車関連の需要も中国を筆頭に8月頃からだいぶ戻ってきました。移動中もソーシャル・ディスタンスを保ちたいと、公共機関ではなく自家用車利用が拡大しているのかもしれません。5Gを含む通信関係も伸びています。
ただ、COVID-19に関連したこうした市場の動きは短期的とも考えられます。まだまだ感染拡大が収まらない状況の中、お客様のニーズに機敏に対応していくことはもちろんですが、同時に中長期を見据えた事業戦略に沿って製品を提供しお客様をサポートしていかなければなりません。組織として両方に対応していくことが重要と考えています。
—中長期での戦略のお話がありましたが、重点分野について説明してください。
中村 当社の売上高を見ると、インダストリアル(産業)、通信、オートモーティブ、ヘルスケアを含むコンスーマ、の4分野がビジネスを支えています。こうした状況を踏まえた上で、5Gを中心とする通信、オートメーションを中心とするインダストリアル、電動化を中心とするオートモーティブ、およびヘルスケアの4分野に特に注力していきます。
—通信分野ではやはり5Gがポイントになるのでしょうか。
中村 そう考えています。高速、低遅延、同時多接続を大きな柱とする5Gのサービスが日本では2020年3月下旬から始まり、サービスエリアはまだ限られてはいるものの、5G対応のスマートフォンが増えてきたこともあって、大きな成長が期待されています。
5Gの中で注目しているのが、基地局設備やアンテナで構成されるRAN(無線アクセスネットワーク)の領域で、たとえばvRAN(仮想化RAN)のようなテクノロジーは、ディスラプターになりえるものとしてグローバルで大きなチャンスがあると見ています。
5Gに関してはすでにさまざまなパートナーシップを進めていて、2020年10月には、5G事業者の一社である楽天モバイル向けのMassive MIMO(超多素子)アンテナユニットを日本電気社と共同で開発したことを発表しました。これはMassive MIMOが5G向け商用O-RANとして活用される世界に先駆けたものとなります。当社の高性能な第4世代広帯域RFトランシーバーを用いて、小型化や低消費電力化などを実現したのが特徴です。
また、高性能なFPGAソリューションを展開するインテル社と5G向けの無線プラットフォームの提供を目的とした提携を結んだほか、5G向けのデジタル・プラットフォームを提供している米マーベル社と5G無線ソリューションに関する提携を行っています。
いわゆるアイスホッケーのスティックの形状がシャフトからブレードへと急激に立ち上がる様子から、ビジネスが急伸する様子を「ホッケースティック型の成長」と呼ぶことがありますが、5G分野はまさにホッケースティック型となっています。
—インダストリアル分野は幅広い領域にまたがりますが、その中でオートメーションに注目している理由を教えてください。
中村 産業界全体として労働人口の減少をカバーするためにロボットの導入を含めたオートメーション化が進められてきましたが、COVID-19の影響で工場内でも作業者同士のソーシャル・ディスタンスを確保するなど、人と人との接触をできるだけ減らしたいというニーズが顕在化しています。また、COVID-19や貿易摩擦などの理由から工場を新興国から自国に戻すリショアリング(reshoring)の動きが日本だけではなく欧米でも始まっていて、そのままだと人件費が上がってしまいますので、さらなるオートメーション化によって補っていかなければなりません。
日本の産業を見れば、マシン・ビジョンのような画像処理やセンシングなどの信号処理に強い国ですし、モノづくりに関してもとても強い文化とこだわりを持っていて、世界を先行するトレンドセッターの役割を果たしています。新しいテクノロジーや新しいソリューションをお客様にご提案するとともに、高度な技術力でフィールドをサポートしていきます。
アナログ・デバイセズの2020年度の売上高の状況と、4つの重点分野
アナログ・デバイセズ
代表取締役社長 工学博士
中村 勝史氏
Digi-Key Electronics
デジタルビジネス担当
エグゼクティブバイスプレジデント
Jim Ricciardelli氏
インフィニオン テクノロジーズ ジャパン
代表取締役社長
川崎 郁也氏
NXPジャパン
NXPジャパン 代表取締役社長
NXP Semiconductors 副社長
和島 正幸氏
STマイクロエレクトロニクス
本社セールス・マーケティング・
コミュニケーション・戦略 社長
日本法人代表取締役社長
マルコ・カッシス氏
Vicor
日本法人 代表取締役社長
米国本社 バイスプレジデント
堂園 雄羽氏
ウィンボンド・エレクトロニクス
代表取締役社長
小林 平治氏