Claris FileMaker活用事例 日本COVID-19対策ECMOnet・CRISIS管理
一般社団法人 日本集中治療医学会 常務理事/京都府立医科大学附属病院 集中治療部 部長 橋本 悟 氏

COVID-19による医療崩壊を防ぐため
ECMOと人工呼吸器の使用状況を
ローコード開発プラットフォームFileMakerで開発

新型コロナウイルスの感染拡大を予見し、医師が先導して、医療資源を適正配置し医療崩壊を防ぐためにCloud環境でデータベースを構築し、全国の病院情報を日々更新している。2020年2月、国内ではまだ死亡例が出ていない段階でのスムーズな構築と運用中の柔軟な改良を実現し、現場の専門家を支援したのは多くの医療現場で活用されているClaris FileMakerだった。
 横断的ICU情報探索システム(CRISIS)は、新型コロナウイルスの重症患者のECMOまたは人工呼吸器の装着数と状態の推移を管理するためのデータベースだ。日本集中治療医学会、日本救急医学会、日本呼吸療法学会の協賛する日本COVID-19対策ECMOnetが、新型コロナウイルス(COVID-19)の日本国内での感染拡大を前に、2月に構築をはじめた。参照すると、各学会が認定・指定している全国約700の医療機関にECMOや人工呼吸器が何台ありそのうち何台が使われているか、ECMOや人工呼吸器を装着していた患者の予後などが分かる(下図参照)。カバー率は9割ほどと見られる。

 きっかけは、2012年に運用が始まった日本ICU患者データベース(JIPAD)だった。これは、ICUに入室した患者の病名や重症度、ICUでの治療内容やその後の様子に関する情報を収集するためのもの。運用する日本集中治療医学会の理事で京都府立医科大学の橋本悟医師は、FileMakerで構築されたこのJIPADについて、Clarisおよびその認定パートナーである株式会社ジュッポーワークス(大阪府)のエンジニアと会合中に、学会理事長からの電話連絡を受け、有事での医療資源の適正配置を実現し医療崩壊を防ぐための小回りがきく環境構築が必要と判断。ICUの現場を熟知した橋本氏のアイデアとClarisとパートナー企業の技術支援を受けて、電話連絡からわずか3時間でAWS環境にセキュアなアプリケーションが構築された。

図:Claris FileMakerで作成された「日本COVID-19対策ECMOnet」の画面

COVID-19重症患者状況の集計の一部は公開されている(https://crisis.ecmonet.jp/
※イメージをクリックすると拡大されます。

  • 国内のCOVID-19におけるECMO治療の成績累計
    国内のCOVID-19におけるECMO治療の成績累計
  • CRISISに申告されたECMOが必要な重症患者さんの推移
    CRISISに申告されたECMOが必要な重症患者さんの推移
  • 重症者受入可能状況一覧
    重症者受入可能状況一覧
  • 施設別受入可能状況詳細
    施設別受入可能状況詳細

着想から立ち上げまでわずか3時間のスピード感

操作画面  「2020年2月12日 16:00の会合からたったの3時間で基本の形が整いクラウド環境にアクセスできるようになりました。その後、1週間で本格稼働できたのはFileMaker Cloudがあったからです」と、橋本氏は振り返る。

 インタフェースはウェブブラウザーでアクセスでき、タブレットやスマートフォンからでも入力可能。全国の医療機関が情報入力しやすいように工夫したが、逼迫した現場の負担が増えないよう、医療者視点で入力項目の取捨選択を行い、同時に病院単位・都道府県単位で特定の情報にアクセスできるよう、セキュリティと使いやすさ、情報の秘匿性について学会関係者と調整を続けた。

 「プログラムの改編がすぐにできるのはローコード開発であるFileMakerならでは。医療の現場は多忙なため、項目によって入力ミスも発生しますが、考えがたい数値が入力された場合、エラーを出すことで運用開始から徐々にミスも減少していきました」と、アジャイル開発のメリットを語る橋本氏は「管理者、参加医療機関、自治体などユーザー属性に応じて参照可能なデータの範囲を変えていますので、本当に必要な情報にのみ必要な人がアクセスできるため、見読性はとても高い」と評価する。

 CRISISは情報の蓄積と共有を可能にしただけでなく、ECMOの治療成績を向上させようとする医師のボランティア組織ECMOnetの活動も支え、自治体をまたいだ重症患者の搬送などに寄与してきた。今後も柔軟で迅速なカスタマイズが可能なClaris FileMakerは橋本氏の取組みを支援していく。

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