この記事はリモート取材で作成されました

提供:アトラシアン

チームワークで年間12億ドルを売り上げる成長企業が明かす

テレワーク体制でもチームパフォーマンスを維持する秘訣

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により、日本の多くの企業が在宅勤務の実施を迫られた。その中で急浮上した課題の一つが、在宅勤務の体制下で、組織、あるいはチームのパフォーマンスをどう維持するかだ。この課題を解決するための秘訣を、日本を含む世界約4,000人の従業員が早々に在宅勤務の体制へと切り替えつつも、組織のパフォーマンスを高いレベルで維持し続けたアトラシアンに聞いた。

全社員が在宅勤務でも組織のパフォーマンスを維持

写真:朝岡 絵里子

アトラシアン株式会社
シニアマーケティングマネージャー

朝岡 絵里子

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策として、日本政府は4月7日に緊急事態宣言を発出し、以降の1カ月間、企業に対して在宅勤務の実施を促し続けた。これにより、多くの日本企業が、自社のオフィスワーカーをフルタイムのテレワーカーへと急いでシフトさせる必要に迫られたと言える。

 実のところ、日本政府は、新型コロナウイルス感染症が流行する何年も前から、働き方改革を推進する一手として、あるいは、有事(大規模地震やパンデミックなど)への備えとして、働く場所を選ばないモバイルワークやサテライトオフィス勤務、あるいは在宅勤務などのテレワークを推進することの重要性・有効性をしきりに唱えてきた。ただし、「テレワーク(特に在宅勤務)の必要性をあまり感じない」といった理由から、日本企業でのテレワーク導入率はなかなか伸びず、総務省の調査によれば、2018年時点における導入率も19.1%にとどまり、そのうち在宅勤務を導入している企業の割合は37.6%にすぎなかったという。

 このような背景事情もあり、緊急事態宣言が出される前に在宅勤務の実施に踏み切った企業は、オフィスが密集する東京においても多くなく、例えば、東京商工会議所が4月8日に発表した調査を見ても、在宅勤務を実施済みと回答した企業は全体の26.0%にとどまっていた。

 とはいえ、在宅勤務体制への切り替えを早々に済ませた企業も少なからずある。その1社が、オーストラリアに本拠を構えるテクノロジーカンパニー、アトラシアンだ。

 「当社では、日本を含む世界12カ所にオフィスを展開していますが、2月には日本法人の全従業員を在宅勤務へとシフトさせ、3月上旬には世界4,000人の全従業員の在宅勤務への移行を完了させました。今回のような“緊急事態”に際して、社員やその家族、そして顧客を守るために必要とされる施策は、躊躇(ちゅうちょ)なく、スピーディに展開するのが当社のスタイルです」と、アトラシアン日本法人でシニアマーケティングマネージャーを務める朝岡 絵里子氏は言う。

 こうした同社の対応で注目すべきは、在宅勤務体制への切り替えの早さもさることながら、全社的な在宅勤務の実施後も、普段と変わらぬパフォーマンスで事業を継続させている点にある。

 言うまでもなく、全社員の働き方をオフィスワークから在宅勤務に切り替えることで、組織のパフォーマンスが低下してしまうことは十分に起こりえる。にもかかわらず、アトラシアンではなぜ、組織のパフォーマンスを維持できているのだろうか──。その秘訣について、朝岡氏に話を伺う。

あらゆるチームの可能性を解き放つ

 アトラシアンは、2002年に創業された。ソフトウェア開発チームの協働(コラボレーション)をサポートする製品の開発・提供元としてスタートを切り、『あらゆるチームの可能性を解き放つ』というミッションの下、製品の守備範囲を「アジャイル」「DevOps」「ITSM(ITサービス管理)/ITOps(IT運用管理)」などへと押し広げてきた。また今日では、IT関連チームのみならず、企業を構成するすべてのチームのコラボレーションを支援するツールとしてもアトラシアン製品の普及が進んでおり、チームの構築やパフォーマンス改善を目的にしたコンサルティング/コーチングのサービスも展開している。

 こうした業容の拡大もあり、同社の売上規模はハイペースで伸び続け、2018年度(2019年6月期)も前年比38%増の12憶1,000万ドルを売り上げている。

 代表的な製品としては、プロジェクト管理ツールの「Jira Software」(図1)や、社内WikiとSNSの機能を併せ持った「Confluence」(図2)、2017年に企業買収により傘下に収めたタスク管理ツール「Trello」(図3)などが挙げられる。

 このうちJira Softwareは、開発チームの計画策定からリリースまでのプロセスを一括して可視化・管理できるツールだ。アジャイル開発の領域ではすでにデファクトスタンダードの地位を確立している。また、Confluenceは、開発チームのみならず、企業内のあらゆるチームの作業情報の共有化やコラボレーションを支援するツールとして普及が進んでいる。さらにTrelloは、どのようなプロジェクトについても、チーム全体で業務を視覚化できる汎用的なタスク管理のツールとして広く使われている。

 「アトラシアンは、ソフトウェア開発チームの支援で成長・発展の礎を築いてきた会社です。開発はチームのパフォーマンスや創造性ですべてが決定づけられるような作業です。そのため、当社では、製品/サービスづくりにおいても、自社の組織づくりにおいても、チームのパフォーマンスや創造性を最大化することに徹底してこだわってきました。結果として、会社組織を構成するあらゆるチームのパフォーマンスをどう高めるべきかのノウハウを豊富に獲得してきたと言えます。在宅勤務を含むテレワークは、そうした当社にとって特別な働き方ではなく、働き方の選択肢の一つとして、当たり前のように用意され、活用されてきたものです」(朝岡氏)。

図1:Jira Softwareの画面(カンバンボード)例

図1:Jira Softwareの画面(カンバンボード)例

図2:Confluenceの画面例

図2:Confluenceの画面例

図3:Trelloの画面例

図3:Trelloの画面例

テレワークを育むオープンな文化

 朝岡氏によると、アトラシアンでは特徴的な事業体制を敷いており、その体制の中で働くことは、テレワーク体制の中で働くことに等しいという。

 「一般的なグローバル企業は、世界各地に事業拠点を構え、拠点ごとに営業部門や間接部門などの業務機能を置いています。それに対して当社の場合、世界各地の拠点をまたいで社員同士がチームを組み、それぞれの業務機能を担っています。つまり、時差や物理的な距離などの隔たりのある社員同士が、密接に連携しながら、単一のミッションを背負うチームとして働くことが日常化しているわけです」(朝岡氏)。

 また、アトラシアンの中には、世界中の才能を地理的な制約に縛られずに採用する目的で、テレワークを働き方の基本に据えている部門もある。Trelloのチームがそれだ。同チームでは8割の社員が、自宅で日々の業務をこなしているという。

 さらに、アトラシアンの他のチームについても、日常的に在宅勤務を実施し、テレワークの鍛錬を積み重ねてきたという。

 「こうした体制や取り組みによって、アトラシアンでは、テレワークを組織の文化として育んできました。それが、今回の緊急事態に際しても、全従業員の在宅勤務への移行をすみやかに完了させ、普段どおりに業務を回せている大きな理由です」と、朝岡氏は語り、こうも続ける。

 「これは、テレワークに限った話ではありませんが、アトラシアンが働き方の文化として最も重視しているのは、『オープン』であることです。その文化を醸成するために、チーム内外で情報の壁を作らずに、社内の誰もが、いつでも、どこからでも仕事に必要なあらゆる情報に簡単にアクセスできるような環境を整え、かつ、組織上の役割や立場の違いを超えて率直に意見が言い合える相互信頼と心理的安全性を確保してきたわけです。オープンであることはアトラシアンのコーポレートバリューであり、文化です。その土台があるがゆえに、当社のテレワークが有効に機能していると言えます」

テレワークの「成功の秘訣」もオープンに

 アトラシアンでは、自社で成功したチーム作りやチームワーク向上の取り組みを、実践ノウハウとして企業に広く提供することにも力を注いでいる。その一例が、テレワークを含むチームワークの現状を可視化するツールと、改善策に関するワークショップ/ガイダンスをまとめた「Team Playbook」(図4)の提供だ。

図4:Team Playbookの日本語サイト

図4:Team Playbookの日本語サイト
https://www.atlassian.com/ja/team-playbook

 「アトラシアンはチームワーク支援のITツールを提供する企業ですが、ツールを導入しただけで、チームのパフォーマンスが自動的に向上するわけではありません。チャットツールを導入しても、社員同士がフランクに意見を言い合える文化がなければ、コミュニケーションが活性化しないのと同じ理屈です。そこで、チームワークを成功に導くための具体的で実践的な方法を、Team Playbookを通じて提供しています」(朝岡氏)。

 もちろん、Team Playbookの内容は、テレワークを主体としたチームワークの向上にも応用できる。ただし、テレワークにはオフィスワークとは異なる特有の課題がさまざまにあり、チーム内での相互信頼を維持し、チームパフォーマンスを高いレベルで保ち続けるためには、特別な知見・ノウハウが必要とされる。そのためアトラシアンでは、テレワークの豊富な実践で培ってきた知見・ノウハウを含め、テレワークに役立つ情報や施策をまとめて積極的に提供している。(https://www.atlassian.com/ja/remote)

 朝岡氏によると、テレワークを成功させるためには、特に意識して実践しなければいけない項目がいくつかあるという。

 「まず大切なのは、いつ、どのツールを、何を目的に、どのように使ってコミュニケーションやコラボレーション、情報共有を図るかをチーム内で決めておくことです。この辺りの取り決めが曖昧であると、コミュニケーションはすぐに機能しなくなります。また、オフィスワーク以上に、チーム内での『つながり』を強く保つ努力も必要です。自分の同僚・上司・部下の姿が見えない中で仕事をしていると、誰でも孤独を感じますし、『自分のしていることは、本当にこれでいいのか』という不安を必要以上に感じてしまいます。ですので、オフィスでの何気ない会話やルーティンを再現するような、バーチャルなランチやティータイム、井戸端会議の場を設けることが効果的です。実際、当社はそうしてチームのパフォーマンスを維持しているのです」

 また、上司を含めたチーム全体のマインドセットの転換も重要なようだ。

 「チームのメンバーは、オン/オフの切り替えを意識的に行う必要がありますし、チームのリーダーは、メンバーの仕事の進捗を可視化するツールを使いながら、積極的に部下とのコミュニケーションを図ることが大事です。ちなみに、『自分が見ていないと部下がサボるかも』と考えるのは間違いです。部下がサボるのは、上司に監視されていないからではなく、自分の仕事を予定どおりに終わらせることが、チームや会社にとってどれほど大切かの理解が足りていないためです。逆に、テレワーク中は仕事を切り上げるタイミングがつかめず、長時間労働に陥りがちです。リーダーにとっては、そうした部下の働きすぎに注意を払うことのほうが重要と言えます」

いまこそ、テレワーク力のアップで“コロナ後”の新常識への対応を

 とはいえ、テレワーク体制下では、チーム内での誤解や摩擦も起こりやすくなる。理由は、テキストベースでのやり取りがチーム内コミュニケーションの中心を成すことになるためだ。朝岡氏は、そうした環境下でチーム内の誤解や摩擦を回避する一手を次のように説明する。

 「大切なのは、自分の発言に対する意図を常に細かく伝えるよう心がけることです。文字だけでは意図が通じにくいのであれば、ビデオ会議に切り替えてフォローすることも一つの方法です。なかでも、チームのリーダーは、部下に対してネガティブなフィードバックをする際に、その意図や真意を、建設的に伝えることが大切です」

 これらのアドバイスは、アトラシアンがテレワークの実践を通じて獲得してきたベストプラクティスの一部である。そして、これらのベストプラクティスは、アトラシアンの製品にも生かされており、例えば、前出のJira SoftwareやConfluence、Trelloなどはすべて、テレワーク体制下においても、チームパフォーマンスを高く維持するためのツールとして機能できる。そのため、アトラシアンでは、新型コロナウイルスの感染拡大を受けたかたちで、3月20日から、10人以下のチームに対してJira SoftwareやConfluenceを期限なく無料で提供しており、企業によるテレワーク環境の強化を後押ししている(Trelloは、従来から10人以下のチームに対して無料で提供されている)。

 「今回のパンデミックは想像を絶する規模で、“新型コロナウイルス後”の世界は、これまでとはまったく違う世界へと一変するでしょう。少なくとも、テレワークに関しては、多くの企業がその有効性に気づき、働き方の新しい標準として採用する可能性が大きいと言えます。新しい価値観や常識に適応するためにも、今回の緊急事態への対応を機に、必要なツールを導入して、テレワークの実効性を高め、チーム力のアップにつながる文化の構築に乗り出してみてはいかがでしょうか。これにより、のちのデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現にもつながる組織づくりが進むはずです」(朝岡氏)。

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