提供:アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社

オンプレミス環境のシステムをクラウド環境へ移行

企業とパートナーを支えるAWSのクラウドマイグレーション戦略

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社
パートナーアライアンス統括本部
テクノロジーパートナー本部 本部長
阿部 泰久

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社
パートナーアライアンス統括本部
テクノロジーパートナー本部
マイグレーションリード
グレース リー

従来のシステムをオンプレミス環境からクラウド環境へ移行する、いわゆる「クラウドマイグレーション」に取り組む企業が増えている。しかしながら、すでにクラウドマイグレーションを済ませたという企業は決して多いわけではなく、現在もオンプレミス環境にシステム基盤を置く企業は多い。アマゾン ウェブ サービス(AWS)では、そうした企業のクラウドマイグレーションを推進するために、パートナーアライアンスを通じた支援に取り組んでいる。同社が進めるクラウドマイグレーション戦略とは何か。パートナーアライアンス統括本部 テクノロジーパートナー本部 本部長の阿部泰久氏、同本部 マイグレーションリードのグレース リー氏に話を聞いた。

クラウドマイグレーションの動きが活発化する日本市場

写真:阿部 泰久氏

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社
パートナーアライアンス統括本部
テクノロジーパートナー本部 本部長

阿部 泰久

現在の日本国内におけるクラウドマイグレーションの状況について教えてください。

阿部氏 現在は全世界でクラウドマイグレーションの波が押し寄せています。エンタープライズ企業から中堅・中小企業まで企業規模を問わず、全社のシステム基盤をクラウドへ移行する動きが活発化しています。クラウド利用のメリットや優位性が理解されることから始まり、クラウドマイグレーションを実際に進める企業が増えていくという連鎖から、こうした状況が生まれています。

 これは日本国内も同様であり、すでに全システム基盤をAWSへマイグレーションするという大規模な事例がいくつも登場しています。なかにはオンプレミス環境からAWSクラウド環境への移行だけでなく、他のクラウドサービスからAWSクラウドへ移行するという例も出始めています。

 とはいえ、日本国内では全システム基盤を対象とするような大規模クラウドマイグレーションの動きは始まったばかりです。調査会社ガートナーによると、世界でオンプレミス環境にシステム基盤を構築・運用している企業は依然として8割以上に上っています。こうした企業のクラウドマイグレーションを支援していくことが、AWSの大きな役割だと考えています。

 阿部氏によると、レガシーシステムのクラウドマイグレーションは基幹系、VDI(仮想デスクトップ基盤)、ビッグデータ分析など全方位に及んでいるという。とくに最近は、システム基盤構築時のサイジングや設計が難しい基幹系システム基盤を、稼働後でも柔軟に拡張できるクラウド環境へと移行する例が増えている。また企業買収によるシステム統合といった不確定要素に対応するために、クラウドを選ぶ企業もあるという。基幹システムであるSAPにおいては、世界で5000社以上がAWS上にすでに移行し、国内においても多くのエンタープライズ企業がAWSクラウドへ移行し始めている。

企業がクラウドマイグレーションに取り組む目的や狙いはどこにありますか。

阿部氏 企業がクラウドマイグレーションに取り組むのには①システム基盤の運用管理コストを削減する、②業務効率化・生産性向上を実現する、③システム基盤の運用を安定化させる、④ビジネスのアジリティ(俊敏性)を高める、⑤災害発生時の事業継続性を高める、といったさまざまな目的や狙いがあります。とくに事業のスピードを早めるために、トライ&エラーが可能なクラウドを選ぶ企業は多いようです。

 昨年からはオンプレミスVMware上で稼働しているシステムに修正を加えたくない、運用方法をあまり変えたくないお客様において、「VMware Cloud on AWS」を採用し、AWSのサービスと組み合わせて使うケースも増えてきました。またオープンリソース環境やミドルウェアなどの費用効率化を目標に、システム基盤のモダナイズを進める企業も登場しています。

 例えば地図サービスや位置情報を利用したITソリューションを提供するゼンリンデータコムでは、オンプレミスのVMware上で稼働していた1,800台の仮想マシンを、VMware Cloud on AWSとAmazon EC2などのAWSサービスに移行させている。システム機能や運用の人材・ノウハウといった既存資産を活かしながら、ハードウェアの管理から解放されるというクラウドのメリットが得られることを評価してのクラウドマイグレーションだった。この際、同社では従来の商用データベースの利用をやめて、AWSのデータベースサービス「Amazon Aurora」へと移行し、ライセンスコストを数千万円も削減できる予定だという。クラウド移行の負担を最小化しながらコスト削減も実現した好例と言えるだろう。

マイグレーションパートナーの支援策を続々と打ち出す

写真:グレース リー氏

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社
パートナーアライアンス統括本部
テクノロジーパートナー本部
マイグレーションリード

グレース リー

クラウドマイグレーションを推進するにはパートナーの力が欠かせません。AWSではどのようなパートナー施策に取り組んでいますか。

阿部氏 AWSのパートナー制度「APN(AWSパートナーネットワーク)」に加入しているパートナーは数百社に及びます。その中からクラウドマイグレーションを支援してくれる、最適なパートナーを選ぶことは容易ではありません。

 AWSでは、習熟した技術力・スキルを備え、特定のソリューション分野に強みを持つパートナーを認定する「AWSコンピテンシープログラム」をグローバルで展開しており、その中にはクラウドマイグレーションに関する豊富な実績を持った「マイグレーションコンピテンシーパートナー」があります。またシステム基盤やアプリケーションのクラウドマイグレーションに関するスキルを備え、計画・設計、構築・移行、実行・運用、最適化をサポートする「AWSマネージドサービスプロバイダー (MSP) パートナー」も認定しています。一定規模以上のクラウドマイグレーションに取り組もうとする企業は、これらの認定を取得している日本国内のパートナーにドアノックしていただくとよいでしょう。

リー氏 AWSではさらに「エンタープライズ トランスフォーメーション ワークショップ(ETW)」という施策を2019年に開始しました。これは、大規模なクラウドマイグレーションを実行するにあたってのアセスメントやプランニングといった上流工程に関するフレームワークを、パートナーにスキルトランスファーするための取り組みです。

 ETWはマイグレーションコンピテンシーを取得しているパートナーに加え、AWSがマイグレーションコンピテンシーパートナーと同等の能力があると認めたパートナーに対して提供しています。2020年はこのパートナーの数も増やすことで、お客様のクラウド移行をサポートしていきたいと考えています。

 AWSがこれらのパートナー制度やETWのような支援策に取り組むのは、クラウドマイグレーションを進める企業に対して一定レベルの品質を担保するとともに、途中で手戻りのない正しい方法で移行を実現するパートナーの育成が目的だ。阿部氏はこうした取り組みが最終的にAWSクラウドを利用する企業の満足度向上につながると話す。パートナー各社からもクラウドマイグレーションの案件を確実に実行するために役立つと高く評価されているという。

ここまでクラウドマイグレーションを直接担当するシステムインテグレーターへの支援を中心に話をうかがいましたが、ソフトウェアベンダーに対してはどのような支援を行っていますか。

リー氏 AWSにはAWSクラウド上で稼働するソフトウェアソリューションを提供する「APNテクノロジーパートナー」が存在しています。そうしたパートナーの中には、クラウドマイグレーションに有用なデータ移行ツール、アプリケーション移行ツールといったソリューションを開発・提供しているISV(独立系ソフトウェアベンダー)が多数います。

 AWSはそうしたISVのソリューション動作検証をサポートするとともに、お客様に対しては効率性、再現性、品質を高めるためのソリューションをお勧めする取り組みも行っています。さらに日本のISVに対しても支援を行っており、メインフレームからAWSクラウドへ移行するための日本独自のツールなども登場しています。

 移行ツールに関しては、AWS自身も力を入れています。2019年1月には移行ツールベンダーのCloudEndure社を買収し、クラウドマイグレーションをシンプルかつ高速に自動実行する「CloudEndure Migration」というツールを無償提供しています。国内で無償展開し始めた昨年3月から昨年末までに、すでに150社以上が利用を始めています。

 こうしたツールの適用は、クラウドマイグレーションを手がけるパートナーの間にも浸透し始めている。例えばネスレ日本では、オンプレミスのIBM AS/400上で稼働していた基幹EDIシステムをAWSクラウドへ移行。それを受託したAPNコンサルティングパートナーのJBCCは、開発ツールやEDIパッケージの採用を提案し、従来1年半かかっていた移行期間を1年に短縮することに成功したという。

各種マイグレーション戦略に得意なパートナーをマッピング

2020年にAWSが取り組もうとしているマイグレーションのパートナー戦略について教えてください。

阿部氏 AWSでは2018年に「AWSサービスデリバリーパートナー」というプログラムを始めました。これはAWSのコンピュート、データベース、データウェアハウスなど、特定サービスに精通しているAPNコンサルティングパートナーを認定するものです。移行対象のシステムやサービスが決まっている場合は、取得パートナーにご相談いただくことをお勧めします。また一般的なマイグレーション戦略について、AWSでは7つの“R”―― 「REHOST(リホスト)」「REPLATFORM(リプラットフォーム)」「RELOCATE(再配置)」「REPURCHASE(再購入)」「REARCHTECT(再構築)」「RETIRE(廃止)」「RETAIN(保持)」を定義しています。現在、それぞれについて得意なパートナーをマッピングする作業も進めています。

AWSサービスデリバリーパートナーの図

AWSが定義する7つの「R」の移行戦略のチャート

 AWSではこのほかにも、マイグレーションコンピテンシーパートナーを対象にしたETWの施策をさらに強化したり、クラウドマイグレーションを担当できるパートナーのエンジニア育成を支援したりといった取り組みを引き続き進めるという。また、マイグレーションを効率化するISVの移行ツールなどをさらに発掘し、コスト低減といった効果につなげていきたい考えだ。

クラウドマイグレーションをこれから検討しようという企業に対して、アドバイスをお願いします。

阿部氏 企業がAWSクラウド上にシステムを構築する場合、そのままマイグレーションするにしてもサーバーレスのクラウドネイティブアプリケーションにモダナイズするにしても、何をどのように進めればよいのか最適解がわからないという場合もあると思います。そうした企業にぜひ参考にしてほしいのが「AWS Well-Architectedフレームワーク」です。このフレームワークを適用して、クラウドマイグレーションを実行するパートナーも少なくありません。

 もう一つ、AWSでは資金面の都合によりクラウドマイグレーションに着手できない企業に対し、資金調達を支援するファンディングプログラムも設けています。クラウドへの移行を検討しているが、「何をしてよいのか?」「どこから取り組むべきか?」「最適な選択肢は?」と考えているお客様もいらっしゃるかと思います。このような課題を抱える企業は、AWSまたはパートナーへぜひご相談ください。

クラウド移行の各フェーズにおける「AWSサービス」と「パートナーのツール」の図

クラウド移行の各フェーズにおける「AWSサービス」と「パートナーのツール」

 AWS Well-Architectedフレームワークは、AWSのサービス開始から10年以上にわたって、さまざまな業種業界、数多くのお客様のアーキテクチャ設計・検証をお手伝いしてきた、AWSのソリューションアーキテクトが開発したベストプラクティスだ。安全かつパフォーマンスに優れ、障害耐性を備えた効率的なクラウド基盤の構築をサポートする目的で公開されている。日本語版も提供されているので、クラウドマイグレーションに着手する前に、ぜひ入手しておくことをお勧めしたい(URL:https://aws.amazon.com/jp/architecture/well-architected/)。

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