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人工知能サミット2019

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AI活用は、ブームからいよいよ本格普及期へ

ベイカレント・コンサルティング

そこに確固たる目標はあるのか?
AIプロジェクトを前進させる
ユースケース・ドリブン・スパイラル

AIの活用がPoC(概念実証)の域にとどまっている企業は少なくない。こうした企業では「まずはデータ集めから奔走する」「事業化はルールを整備してから」といった理由で足踏みしているケースが多い。ベイカレント・コンサルティングの八木氏が、ビジネスでAIを駆使するための要諦を解説した。

まずはAIを試してみて何がすごいのかを理解する

ベイカレント・コンサルティング デジタル・イノベーション・ラボ パートナー 八木 典裕 氏

ベイカレント・コンサルティング

デジタル・イノベーション・ラボ
パートナー

八木 典裕

「AIの取り組みを成功に導くためには、小さな成功体験を積み上げることが大切です」。ベイカレント・コンサルティングでパートナーを務め、同社のデジタル・イノベーション・ラボに所属する八木氏は、このように主張する。

 同氏は、デジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた取り組みがPoCで頓挫するケースでは「何を実現したいかの目的が明確でなく手段、つまり新しいテクノロジーを導入すること自体が目的化しています」と指摘。

 こうした課題を克服するために、ベイカレント・コンサルティングが提唱しているのが「ユースケース・ドリブン・スパイラル」というアプローチだ。これは、適用範囲を広げながらユースケース(具体的な用途)を回していく取り組みで、最初は手探り状態から始めたとしても、徐々に効果を発揮できるユースケースへと磨かれていく。そのためには、大きく①小さな成功体験を積むことから始める、②PoCを成功に導く、③ユースケースを磨き込む、④データにレバレッジを効かせる、⑤企業全体で取り組む───という5つの要諦を駆使してステップアップさせていく必要がある。

 AIの成功事例というと、高度なR&D(研究・開発)機関が手がけた独自の取り組みがマスメディアで紹介されているが(下の図の「候補群C」)、八木氏は「時間もコストも膨大にかかるため、一般の企業が最初からこの領域を目指すことは無謀です」と前置きしたうえで次のように説明する。

 「現在はすぐにでも利用できるAI関連のソリューションが相次いで提供されているので、まずはAIを試用してみて、何がすごいのかを体感することが重要です(下の図の「候補群A」)。その先に、他社が手掛けていないAI活用にチャレンジする手もありますが、トライ&エラーの連続に挑む覚悟は必要です(下の図の「候補群B」)」

 こうしたプロセスを経て、ステップアップしていくことが成功への近道だと解説する。

先端事例では秘匿性の高い学習データを集め、試行錯誤を繰り返している

すぐに利用できるソリューションから取り組むことが成功の近道に

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段階的にPoCを実施して適用範囲を高度化する

 DXへ向けた取り組みには、新たな事業の柱を創出する「ビジネスモデル変革」と、既存の業務の生産性を向上させる「オペレーション変革」の2種類があるが、八木氏は「成功体験を積み上げていくという意味では、着実な効果が見込めるオペレーション変革から成果を出していくとよいでしょう」と語る。

 オペレーション変革とは、現状で人手に頼っている作業をAIに代替させる取り組みから始まる。既存の業務を効率化する過程で、AIに対する理解を深めながらPoCを実践していく。

 実際にPoCに取り組む場合でも、最初から高度な目的を掲げると失敗に終わる可能性が高くなるという。八木氏は「社内で活用できるテクノロジーのレベルや、検証したいユースケースに応じてPoCの目的は変わってきます」と指摘する。

 ベイカレント・コンサルティングでは、AIを活用する目的に応じて、PoCを3段階に整理している。①消費者観点で技術を理解するための「PoC0」、②専門家観点で技術を深く理解し、活用可能性を知るための「PoC1」、③ビジネスモデルが実現可能かフィージビリティを検証するための「PoC2」───の3段階だ。

 PoC0を実行することで技術検証を始める土壌が整い、PoC1によってPoC2へ進むユースケースを具現化できる。その後にPoC2で実用化すべきビジネスモデルを見極めるといったようにAI活用が段々と実用化に近づいていく。

 同社では、それぞれの段階を支援するサービスを提供中だ。例えば、PoC1に対しては、イノベーションを創出するためにデザイン思考を活用したアイデア創出ワークショップの支援や、顧客企業ごとの優先テクノロジーやソリューション群の抽出といったサービスを、PoC2に対しては、大量なデータの準備を支援したり、検証用モデルの構築・評価、事業性を見極めたりするサービスを提供している。

AI プロジェクトをユースケース・ドリブンで加速させる要諦

ベイカレント・コンサルティングが提唱する「ユースケース・ドリブン・スパイラル」

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全社を巻き込む変革には従業員のパッションが不可欠

 現在、日本企業がDXの推進に向けて実施しているPoCでは、既に蓄積できているデータをいかに活用するかという着想から始まっているケースが多い。こうしたデータありきの取り組みでは、AIを使うこと自体が目的化したり、自社のビジネスの強みを生かしきれなかったりすることが多い。八木氏は、こうした状況を次のように解説する。

「多くの企業において、既存データを活用することがPoCの起点となっているのが現実ですが、テクノロジーに対する目利き力を鍛えるという意味では意義があることだと思います。大切なことは、いかにしてそのユースケースを磨き込んでいくかです」

 データありきの取り組みでも、後付けで経営上の目的を明確にしていけば、オペレーション変革やビジネスモデル変革につなげていくことが可能だという。

 同氏は、「データにレバレッジを効かせる」ことが重要だとも指摘する。

「データレバレッジ」とは、経営意志の達成や経営課題の解決に向けた取り組みをデータ収集・分析によって加速させる方法論。経営視点で何のために、どんなデータを、どこで活用するのかを整理したうえで、それを実現するためにAIやIoTなどの適切なツールを活用していく。こうした取り組みを推進していくことによって、従来の場当たり的な施策とは異なり、目覚ましい成果が得られるようになるという。

 DXの最終的なゴールは、企業全体に変革をもたらすことだ。八木氏は、これを実現するためには「最終的に組織が目指す旗印」を置くことが必要だという。

「高い目標を設定すれば、そこに向かうためにAIという手段を活用するようになります」(八木氏)

 同氏は、最終的な旗印に向かう源泉となるのが、従業員のパッション(情熱)だと力説し、次のように解説する。

「どうすればお客様の期待を超えた価値を提供できるのか、どうすればサービスが売れていくのか、どうすれば会社が成功するのか───。こうした熱い想いを常に従業員に抱いてもらうことが大切です。そのためには、従業員自身がハッピーになることも考えなければなりません。仕事に充足感を持ち、パッションを持って取り組む従業員の姿勢が、DXの成功の鍵を握っているといっても過言ではありません」

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