日経クロステック Special

可視化と自律化を推し進めたSCMで予測困難な事態にも弾力的に対応

可視化と自律化を推し進めたSCMで
予測困難な事態にも弾力的に対応

ものづくり企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)の先導役となる方々を招き、ポスト・コロナ時代の的確なDX戦略策定に向けて議論する日経クロステック Special Webセミナー「Technology Foresight 2020~ポスト・コロナを見据えた製造業の進路を描く~」が開催された。10月14日には、円滑で効率的なSCM(サプライチェーン・マネジメント)の実現に向けたITシステムを提供するBlue Yonderジャパン代表取締役社長の桐生卓氏が登壇。「先が見えない時代に強い『レジリエント(回復力の高い)』なサプライチェーン、実現のカギは『可視化』と『自律化』」と題してコロナ禍で顕在化したSCMの課題とポスト・コロナ時代を見据えた方策について解説した。(モデレーター:日経BP総合研究所 上席研究員 三好敏)
桐生氏
Blue Yonderジャパン
代表取締役社長
桐生 卓

コロナ禍による同時多発的SCMの寸断リスク

三好 ビジネスのグローバル化により、サプライチェーンが大規模化、複雑化しています。こうした中、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に流行し、サプライチェーンでは新たな問題が顕在化してきました。現在、世界のSCMは、どのような状況にあり、どのような課題を抱えていると見ていますか。

桐生 1990年代後半から2000年代前半にかけて、SCMシステムを整備する第1次ブームが訪れました。その際に整備したものは、最も効率的な場所で製品を大量に集中生産し、世界中の消費地に円滑に運ぶことを目指したものでした。これが現在、製造側では多品種少量といった分散型生産への移行が進み、消費者側ではオンライン上でワンクリック購入した商品が翌日に手元にないと満足されない状況になりました(図1)。その結果、SCMシステムに求められる要件が大きく変化し、第1次ブームで導入した仕組みが古くなってきたのです。そして、日本市場においては、2019年夏頃からサプライチェーンを見直す機運が高まっていました。

 こうした変化の真っ最中に起きたのが、今回のコロナ禍です。これまでは、何らかの災害が起きたとしても、被災地以外は正常な状態が温存されていたため、サプライチェーンのつなぎ直しが可能でした。ところが今回のコロナ禍では世界全体が被災地となりました。サプライチェーンの寸断が各地で起きる可能性が生じ、しかも対処すべき課題点が常に変化し続ける未曽有の事態に直面したのです。いまだその対応の真っ最中ではありますが、コロナ禍が終息した後にもこれまでとは別の視点からSCMを考え直す必要性が出てきています。

三好 製造・物流・販売の新たな枠組みへの対応と、コロナ禍によって顕在化した未体験のリスクへの対応を同時に取り組む必要性に迫られているわけですね。日本企業では、そのような取り組みができているのでしょうか。

桐生 日本と海外の企業では、SCMのアプローチに大きな違いがあります。海外企業の多くは部門横断的にサプライチェーンの動きが俯瞰できる専門組織を持っています。そして、トップダウンで、上流から下流まで円滑にSCMを動かす方策を策定し、実践します。これに対し日本企業は、部門間のすり合わせによるSCMの効率化を重視しています。

 すり合わせに基づく現場力は、日本の製造業の強さの源泉ではありますが、人知を超えた出来事であるコロナ禍の下では、あうんの呼吸を基にした予定調和的な見通しは通用せず、平常時のような高い効率性の実現が困難になっています。日本企業においても、サプライチェーンの動きを可視化して、現状を正確に把握し、突発的なリスクに対して迅速に適切な手を打てるレジリエントなSCMを実践する必要性に迫られています。

SCMグローバル標準に向けて
SCMグローバル標準に向けて
図1 サプライチェーンを取り巻く環境が大きく変化
サプライチェーン上のプロセスである製造、物流、店舗での販売があり、最適なSCMの姿を考える際の前提となるビジネス環境が大きく変化している。これまで最適だと思われていたSCMの仕組みは確実に古くなり、新たな潮流に沿った仕組み作りが求められている