提供:シスコシステムズ

「5G」の価値を最大限に活用するための必須条件

エンドツーエンド・ネットワークアーキテクチャー

「5G」によって実現する超高速、低遅延・高信頼、多数同時接続といったメリットは、あらゆる業界のビジネスに大きな革新をもたらすと考えられている。ただし、現行の通信インフラの無線部分を単純に5Gに置き換えるだけでは、その価値を最大限に生かすことはできない。基地局、データセンター、エッジまで一貫し、通信インフラ全体を最適化するエンドツーエンド・ネットワークアーキテクチャーが必須となるのである。

5Gを活用するために解決しなければならない課題とは

写真:大槻 暢朗氏

シスコシステムズ合同会社
アジアパシフィックジャパン担当 サービスプロバイダー事業
ルーティング・アーキテクチャー
テクニカルソリューションズスペシャリスト

大槻 暢朗

 国内でも商用サービスが始まった「5G」だが、移動通信の業界団体である3GPP(Generation Partnership Project)は、2020年内を目標に5Gの次期仕様「リリース16」の策定を進めている。これにより、自動車、産業向けIoTでの5Gの活用が可能となり、2023年頃にもその市場が立ち上がってくると予想されている。「Cisco Annual Internet Report 2018-2023」でも、2023年までに日本のモバイル接続の20.6%が5Gによる接続になると予測している。そこからが本当の意味での5G時代の幕開けと言えるだろう。

 しかし、5Gサービスを提供するサービスプロバイダーはもとより、ローカル5Gを含めてこのサービスを利用する企業にも、解決しなければならない課題が残っている。5Gの「eMBB(超高速)」「URLLC(低遅延・高信頼)」「mMTC(多数同時接続)」といった厳しいサービス要件を満たすために、基地局からネットワークエッジ、データセンターにいたるまで、ネットワーク設備を大幅に増強する必要が出てくるのだ。一方で、収益性の観点からは、それらの設備投資や運用コストは可能な限り抑制しなければならない。

 この課題解決に向けて、シスコシステムズ合同会社が提唱しているのが5Gのエンドツーエンド・ネットワークアーキテクチャーである。シスコAPJ担当サービスプロバイダー事業 ルーティング・アーキテクチャー テクニカルソリューションズスペシャリストの大槻暢朗氏は「5Gの通信インフラは基地局のRAN(無線アクセスネットワーク)からデータセンターのコアネットワーク、その間にあるネットワークエッジとトランスポートネットワークまで、複数のドメインから構成されます。これらのドメインごとに異なるテクノロジーを採用して個別最適で運用した場合、効率的なサービスを提供できなくなる恐れがあります。したがって、全国的に5Gを提供するサービスプロバイダーはもとより、エンタープライズ規模で5Gサービスを利用する企業も、ドメインをまたいでネットワークの一貫性が確保された通信インフラを構築することが重要となります」と語る。

“分離・分解・分散”の考え方で通信インフラ全体を最適化

写真:佐々木 俊輔氏

シスコシステムズ合同会社
アジアパシフィックジャパン担当 サービスプロバイダー事業
オートメーションセールス
テクニカルソリューションズアーキテクト

佐々木 俊輔

 シスコが提唱する5Gのエンドツーエンド・ネットワークアーキテクチャーの鍵を握るのが、次に示す「分離(ディスアグリゲーション)」「分解(ディスコンポーズ)」「分散(ディストリビュート)」の3つの考え方だ。

  • ●分離:従来、サービスプロバイダーのネットワーク機能は専用のハードウェアで実装されていたが、これらの機能を仮想化またはコンテナ化し、汎用的なサーバー上で動かせるようにする。
  • ●分解:これまで通信機器のソフトウェアはモノリシックな形で一体構築されていたが、これをマイクロサービスに分解する。複数のマイクロサービスを連携させて、目的のネットワーク機能を実現するという形に、ソフトウェアの構造を変えていく。
  • ●分散:これまですべてのトラフィックが中央のゲートウェイ装置に集まっていたが、上記の分離や分解により、特定のセッションをエッジ側にオフロードすることが可能となる。

 結局のところ、無線部分がどれだけ高速化したとしても、後に続くトランスポートネットワークがボトルネックになったのでは意味がない。低遅延も同様で、仮に無線部分が1ms以下といったレイテンシーで通信できたとしても、アプリケーションが稼働するサーバーが遠くに離れていたのではその恩恵は受けられない。

 シスコAPJ担当サービスプロバイダー事業オートメーションセールス テクニカルソリューションズアーキテクトの佐々木 俊輔氏は「分離・分解・分散の考え方に基づいたエンドツーエンド・ネットワークアーキテクチャーによって、通信インフラ全体の最適化を図ることで、はじめて5Gの超高速、低遅延・高信頼、多数同時接続といったメリットを享受することが可能となります」と強調する。

 ただし、その一方で分離・分解・分散のアプローチは、インフラ管理の複雑化を招くのも事実である。そこで必須となるのが、複数のドメインをまたいで通信インフラ全体を司るオーケストレーションシステムだ。

 「異なるベンダーが混在するRAN、コアネットワーク、トランスポートネットワークを包括するとともに、サービスプロバイダーの大規模な全国網にも対応することが可能。シスコでは、こうしたマルチドメイン、マルチベンダー、スケーラブルを特長するオーケストレーションシステムを提案・提供しています」と佐々木氏は語る。

自動化・オーケストレーションの詳しい内容を知りたい方はこちらのブログへ

5G発展の鍵を握るオープンvRANとセグメントルーティング

 そして現在、シスコが注力しているのが、オープンvRANへの取り組みである。vRAN とは仮想化技術によってRANの機能を汎用サーバー上にソフトウェアで実装する仕組みだ。さらにオープンvRANは、基地局の構築過程でのベンダーロックインを回避するために、RANの機能間のインターフェースの標準化に注力して接続検証をしている。

 従来のRANは、メガベンダーが単独で提供することが多かった。そうした世界にマルチベンダーの参入を可能とすることで、コスト削減を図るとともに、RANを構成するコンポーネント単位での機能拡張を活発化することがオープンvRANの狙いだ。「メガベンダーの製品ロードマップに縛られることなく、最適なタイミングで、スタートアップを含めたさまざまなベンダーの最新かつ最適な機能を選択し、ソフトウェアの形でRANを導入することが可能となります」と佐々木氏は語る。

 加えて、トランスポートネットワーク領域におけるセグメントルーティングへの取り組みにも注目したい。セグメントルーティングは、ネットワークの転送情報やサービス情報をセグメントと呼ばれる単位で表現し、シンプルかつ柔軟なルーティング制御を実現する。この仕組みのもとで多様な付加機能を提供できるため、とくに高可用性(高SLA)が求められる大規模 VPN ネットワーク基盤としての適用も可能なのだ。

 「セグメントルーティングはオーケストレーションシステムとも非常に親和性が高く、シンプルに運用可能な通信インフラを実現します。その意味からセグメントルーティングは、今後の5Gのコアテクノロジーになると考えています。セグメントルーティングを実装したトランスポートネットワークが基盤となり、その上でvRANや分散データセンターのコアネットワークも動くようになるというイメージです」と大槻氏は語る。

vRANの詳しい内容を知りたい方はこちらのブログへ セグメントルーティングの詳しい内容を知りたい方はこちらのブログへ

製造業のスマートファクトリー化でも高まる期待

 ここまで述べてきたような仮想化およびソフトウェア技術、オーケストレーションシステム、さらにはサービスプロバイダー向けトランスポートネットワークのルーター群、データセンター用のスイッチやサーバー、パケットコアに至るまで、5Gで求められる製品をトータルに提供し、同時にマルチベンダー製品との連携もサポートすることで実現するのが、シスコのエンドツーエンド・ネットワークアーキテクチャーなのだ。

 そうしたなか、5Gへの期待が高まっている分野として、製造業におけるスマートファクトリー化がある。「例えば工作機械や産業ロボットの組み込みソフトウェアをアップデートする際に、これまではラインを停止しなければならない場面がよくありました。5Gにより制御ネットワークが無線化されれば、工作機械の移動が自由になるとともに、アップデートも遠隔で行うことが可能となり、ラインの停止時間は大幅に短縮します。また、5Gに加えWi-Fiや有線LAN含めたすべてのネットワーク環境で認証ポリシーを統合することで、アクセスネットワークを意識することなく、工作機械が工場外に持ち出された際の通信ストップなどの盗難防止やセキュリティ対策、運用の簡易化を実現することも可能です。このようにエンドツーエンド・ネットワークアーキテクチャーの可能性は無限に広がります」と大槻氏は語る。

 なお、エンドツーエンド・ネットワークアーキテクチャーのユースケースは、下記の別掲記事で紹介しているブログ連載やホワイトペーパーの中でもいくつか紹介している。サービスプロバイダー向けに作成されたものだが、エンタープライズ向けとしても5Gを使った新しいサービスの発想に役立つ内容となっており、ぜひご一読いただければ幸いだ。

「シスコが考えるエンドツーエンド・アーキテクチャー」関連リンクのご紹介

写真:Cisco Japan Blog:5G-シスコが考えるサービスプロバイダー エンドツーエンド アーキテクチャ-」(以下の全9章)を執筆したメンバーのみなさん

ブログ連載「Cisco Japan Blog:5G-シスコが考えるサービスプロバイダー エンドツーエンド アーキテクチャ-」(以下の全9章)を執筆したメンバーのみなさん。前列左から鎌田徹平氏、山田欣樹氏。後列左から丸山和宏氏、大槻暢朗氏、河野美也氏、佐々木俊輔氏、尚軍氏

  • 第1章 5G 時代の無線アクセス
  • 第2章 5G におけるトランスポートテクノロジー
  • 第3章 5G コアのクラウドネイティブアーキテクチャ
  • 第4章 5G時代のデータセンタファブリックアーキテクチャ
  • 第5章 5G時代のエンドツーエンド ネットワークスライシング
  • 第6章 5G時代のエンドツーエンドオーケストレーション
  • 第7章 5G/Hetnetの企業向け活用
  • 第8章 5Gのサービスユースケース
  • 第9章 5G時代のトラスト・サイバーセキュリティ

写真:Webサイトのキャプチャー

シスコが考えるエンドツーエンドでのサービスプロバイダー ネットワークアーキテクチャーと、それを支える 5G を中心としたテクノロジーについて、テーマごとに紹介

ブログページはこちら

写真:ホワイトペーパーの表紙

ブログ連載として展開された「シスコが考えるサービスプロバイダー エンドツーエンド アーキテクチャ-」はホワイトペーパーとしても再編集。

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