日経 xTECH Special

急速に進化する
産業向けVR/ARの最前線
VR/AR
制作・稼働環境に必要な
3つの条件とは

近年産業界で急速な勢いで取り組みが進んでいるVR/AR(仮想現実/拡張現実)の活用。今後は競争力強化のために欠かせないツールになっていくだろう。この領域をリードし、産業界向けソリューションを数多くラインアップしているのが、プレミアムアーツだ。産業向けVR/ARは現在どこまで進化し、どのようなニーズに対応できるようになっているのか。産業向けVR/ARの制作にはどのような仕組みが必要となるのか。同社の代表取締役の山路 和紀氏に話を聞いた。

産業向けVR/AR案件が
急激に増えている理由とは

株式会社プレミアムアーツ 代表取締役 山路 和紀氏
株式会社プレミアムアーツ
代表取締役
山路 和紀
 VRとARの専門ソリューションカンパニーとして、企画からグラフィック制作、プログラミングまで、ワンストップでコンテンツ制作を行うプレミアムアーツ。2015年設立ながら、アミューズメント向けVRコンテンツやARライブイベントなど数多くのエンターテインメント案件を手掛けており、この領域をリードしてきた企業だ。しかし、近年は産業向けVR/ARへも事業領域を拡大。これまで培ってきた最先端の技術をこの領域に投入している。

 「2~3年前までは『産業向けのVR/ARは未成熟』と考えられており、新しいことに積極的な企業だけが手掛けている状況でした。しかしこの2年間で状況は大きく変化しています。当社へのご相談も産業向けVR/ARの案件が急激に増え、エンターテインメントと逆転しているのです」と同社の山路 和紀氏は説明する。

 プレミアムアーツでは、個別案件のニーズに合わせてシステムの構築を行いながら、産業向けVR/ARのノウハウを蓄積。2019年9月にはそれらを産業向けシステムソリューションへと体系化。現在では10種類のシステムソリューションをラインアップしている。

この2年で格段に進化した
産業向けVR/ARの技術

 その1つがVRの技術をベースとしたバーチャル「道路」環境システムだ。これはAIによる自動運転を仮想空間でシミュレートするために、道路や駐車場を仮想的に再現するもの。現実の空間で試行錯誤を行うよりも、安全かつ効率的にAIの開発を進められる。

 「このソリューションはUnreal Engineで作成された、日本の道路法規に準じたバーチャル道路環境です。解析分野で最も普及しているMathWorks社のMATLABとシステム連携しており、MATLAB導入後すぐに道路環境を利用したシミュレーションを開始できます」(山路氏)

 その最大の特徴は、自動運転のシミュレーションに耐えうる膨大なデータを実装している点にある。道路やその上に引かれた白線はもちろんのこと、標識や信号、車両、ヒト、障害物、建物といったデータも用意し、それらを組み合わせた複数のパッケージを提供しているわけだ。
バーチャル「道路」環境システムの画像例バーチャル「道路」環境システムの画像例 バーチャル「道路」環境システムの画像例 AIによる自動運転を仮想空間でシミュレートするため、道路や各種オブジェクトの膨大なデータを提供している
 AR分野では「屋内ガイド表示ARシステム」というものがある。これはARの技術を活用し、屋内の経路案内や設備の説明などを行うというもの。スマートフォンを現場にかざすだけで、カメラ映像の中に高品質なARが出現し、様々な情報を提示できる。

 「このソリューションで注目していただきたいのは、QRコードなどのARマーカーを用意しなくても、空間にかざすだけで利用できる点にあります。また、メモ機能も用意されており、これを利用することで空間にメモを残す、といったことも可能です。さらに天候や交通情報、IoTデータとの連携も行えます」(山路氏)

屋内ガイド表示ARシステム QRコードなどのARマーカーを用意しなくても、空間にかざすだけで利用できる。AR空間にメモを表示したり、天候や交通情報などと連携することも可能だ
 このほか、VR/ARを組み合わせれば、様々な情報を重ね合わせて表示することも可能だ。机の上に映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場したデロリアンのミニカーを設置。そこにスマートフォンをかざすだけで、カメラ画像の中で車体の色を変化させたり、内部の構造を重ね合わせて表示できる。
図2

VR /ARの稼働環境に求められる
3つの条件とは

 これらのソリューションを垣間見るだけで、産業向けVR/ARが急速に進化しているのがわかるはずだ。それでは、なぜプレミアムアーツは、短期間でこれだけのソリューションを実現できたのか。同社の豊富なノウハウがあることはもちろんだが、もう1つ重要なポイントがある。それは根幹となるテクノロジーに、多彩な企業が提供する製品を積極的に取り入れている点だ。

株式会社プレミアムアーツ 代表取締役 山路 和紀氏
 「産業向けVR/ARは1つの技術基盤だけで実現できるものではなく、多様なテクノロジーを最適な形で組み合わせる必要があります。これを自社のコンテンツと融合し、サービス化していることが、当社の強みです。そのためには英語や中国語を含む多言語の情報を読み解き、その本質を素早く理解する能力が必要です。このような人材をそろえてきたからこそ、産業向けVR/ARに必要な各種テクノロジーにも、短期間でキャッチアップできたと思います」と山路氏は話す。

 その1つとして挙げられるのが、前述のMATLABだ。しかし活用されている基盤技術はソフトウエアだけではない。VR/ARソリューションを制作・稼働させるハードウエアも重要なカギを握っているという。コンテンツを動かすには、言うまでもなく高性能なプロセッサーやハイエンドのグラフィックス機能が不可欠となるからだ。

 こうした観点から、同社が創業以来活用し続けているのが、Dell Technologiesが提供する「Dell Precision ワークステーション シリーズ」だ。同社が使用するワークステーションは100%デル製品で統一されており、ソリューションに組み込んだ形で顧客に提供することもあるという。同社がDell Precision ワークステーション シリーズを採用した理由は主に3つあるという。

 「まず1つ目は性能面です。VR/ARでは膨大な3Dデータを扱うため、最新のグラフィックボードで処理性能を確保する必要があります。特に産業向けVR/ARではセキュリティ確保の観点から、工場内で使いたいというニーズも高いため、クラウドで処理できない案件も少なくありません。その点、Dell Technologies製品であれば常に最新のグラフィックボードを実装でき、お客様の性能要件に応えることが可能です」(山路氏)

 2つ目は拡張性だ。これに関しては、筐体スペースと拡張スロットに、十分な余裕があることを評価。そのためグラフィックボードを2枚搭載して性能を出すというアプローチも可能だという。「ハイエンドのグラフィックボードを搭載して性能を高めるという方法もありますが、これでは性能に対して価格が上昇しやすくなります。ミッドレンジのグラフィックボードを複数使うほうが、コストパフォーマンスが高いケースが多いのです。またグラフィックボードの進化のほうが早いため、まずは1枚だけグラフィックボードを新しくするといった柔軟な対応もとれます」と山路氏は説明する。

 そして3つ目が信頼性・安定性である。「産業用途では、納期が厳格であることが多く、故障やトラブルによって作業が遅れると、ビジネスへの影響度が大きい。その点、Dell Precision ワークステーションは故障することがほとんどありません。これは、電源とスペースに十分な余裕があり、排熱にも配慮した設計になっているからだと考えています。また、非常に堅牢で、多少の衝撃では壊れません。当社は放送局向けサービスも手掛けており、番組収録の度に車でスタジオにDell Precision ワークステーションを持ち込んでいますが、これまでの運用でトラブルが発生したことは皆無です」と山路氏は言う。

 また、サポート体制の充実も安定的に業務を行う上で重要だという。「万が一の際はオンサイトでの保守サービスを提供してくれるため、現場社員も安心して業務が行えると話しています」(山路氏)。

 これらの特徴に加え、パフォーマンスを自動的に最適化するDell Precision Optimizerの存在も評価されている。有償版のPremiumではAIベースのパフォーマンス最適化に対応。あらゆるアプリケーションに対し、最適なパフォーマンスチューニングを自動的に実行する。複数のアプリケーションが利用される環境でもそのパターンを機械学習し、性能向上の可能性を広げている。

多様なパートナーと
手を組みながら市場の拡大へ

 製品だけでなく、ビジネスパートナーとしての評価も高い。「Dell TechnologiesではVR市場の活性化を目指した、『VR研究会』を発足し、業界関係者やユーザー企業の情報共有や意見交換が行える場を提供してくれています。当社も参画していますが、グローバルでのトレンドやニーズを把握し、ソリューション開発を行う上で、非常に有効なつながりだと感じています」(山路氏)。

 同社では、今後はこうしたエコシステムを拡大することで、さらに産業向けVR/ARの裾野を広げていく考えだ。「例えば屋内ガイド表示ARシステムは、大企業だけでなく、幅広い企業や組織でご利用いただけるはず。将来は、Dell Precision ワークステーションの調達だけではなく販売面でも、幅広い顧客とのチャネルを持つDell Technologiesと協業していきたいと考えています」と山路氏は語った。
図2図2 Dell Precision
ワークステーション シリーズ
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Dell Technologies(デル株式会社) 公式サイト:
https://www.delltechnologies.com/ja-jp/index.htm