KADOKAWAグループ向けのICTサービスを提供しているKADOKAWA Connectedは、日本最大級の動画コミュニティサービス「niconico(ニコニコ)」を支えるインフラ基盤を、Dell TechnologiesのPowerEdgeサーバー300台とVMware vSphereで全面的に仮想化した。大幅なコスト削減とエンジニアリソースの最適化を実現したこのプロジェクトは、現在KADOKAWAグループ全体のITインフラへと横展開され、同グループのDX戦略を一段と加速させる大きな原動力となっている。その成功のポイントについて話を聞いた。

数千台の物理サーバーが
ビジネスの機動性やコスト上のボトルネックに

KADOKAWAグループのDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する戦略子会社として、2019年4月に設立されたKADOKAWA Connected。同社は日本最大級の動画コミュニティサービス「niconico(ニコニコ)」を展開するドワンゴをはじめ、KADOKAWAグループ全体のインフラ開発・運用とDXコンサルティングなどを行っている。また、グループ内への経営改革支援のノウハウと実績を生かしたDXアドバイザリーサービスなどの外販事業にも注力している。

同社の代表取締役社長で、ドワンゴのICTサービス本部長も兼任する各務 茂雄氏は、「KADOKAWAの魅力あるコンテンツや多様なクリエイターとの接点が身近にあること、そしてDXの加速に向け、ドワンゴで活躍していた日本最高レベルのエンジニア集団の技術力を提供できることが当社の大きな強みです」と語る。

KADOKAWA Connectedの技術力とポテンシャルを語る上で欠かせない実績となったのが、ドワンゴのインフラ仮想化プロジェクトである。

仮想化以前の状況を、KADOKAWA Connectedの加藤 俊弥氏は次のように語る。

株式会社KADOKAWA Connected
KCS部 部長 加藤 俊弥氏

「当時ドワンゴは、ニコニコ動画やニコニコ生放送を中心としたniconicoの基盤を、数千台の物理サーバーで構築・運用していました。しかしシステム全体の老朽化が進み、数年ごとのサーバー更改やメンテナンス、ラック費用などにも多大なコストと人的負担がかかっていました。さらに新しいサービスを立ち上げたいと思っても、サーバーの選定や発注から設置、負荷テストなどを含め、2カ月以上のリードタイムが必要でした。ビジネスの機動性とコスト構造の両面で大きな課題を抱えていたのです」

そこへヘッドハンティングされ、ドワンゴの共通基盤開発部技術部長に就任したのが各務氏だった。各務氏は数名のエンジニアと共に直ちに現状の課題を抽出し、改善策を検討。わずか1カ月後には長年の懸案事項だったインフラ改革に着手したという。

「仮想化できるものはすべて仮想化するというコンセプトのもと、今後立ち上げるサーバーはすべて仮想化することをトップダウンで指示しました。仮想化基盤にVMware vSphereを選んだのは、枯れた技術で信頼性と安定性があり、トータルコストにも優れていたからです。重要な経営基盤を限られた期間内に刷新するプロジェクトでしたから、絶対に失敗は許されないという想いが強くありました」と各務氏は語る。

物理サーバー数千台の環境を
PowerEdgeで全面仮想化

VMware vSphereを搭載する新たなハードウエア基盤にはDell TechnologiesのPowerEdgeサーバーが選ばれた。

「数あるx86サーバーの中でもDell Technologiesの信頼性・安定性は群を抜いています。また、VMware vSphereと自社サーバーを一括サポートする体制にも大きな魅力を感じていました。ソフトウエアとハードウエア、重要なシステム基盤を構築するには、親和性や障害時の迅速な切り分けなど、その両方をカバーできる体制が大切なポイントとなるからです。私は以前、別の企業でVMware vSphereとPowerEdgeを組み合わせた大規模なクラウドシステムを作った経験があります。そのプロジェクトでもトラブルへの対応が迅速で、今回もその信頼と期待に応えてくれると考えました。さらにDell Technologiesは提案だけでなく、エンジニアとの細かな打ち合わせでも回答レスポンスが速く、真剣度の高さが伝わってきたことも高く評価しました」(各務氏)

ドワンゴのインフラエンジニアを中心としたプロジェクトチームは、キックオフから約4カ月という早さで仮想化環境の提供を開始し、1年半後には物理サーバー数千台の環境から インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー 等を搭載したPowerEdgeサーバー300台、6000VMの仮想化環境へスムーズに移行することに成功した。

ドワンゴが新たな仮想環境として構築したNicoSphereの概念図
[図はクリックで拡大できます]

2トントラック4台分にも及ぶ物理サーバーがデータセンターから撤去されたことで、ラック費用だけで年3億円のコストダウンを実現。NicoSphere(ニコスフィア)と名付けられた新たな仮想環境の構築により、ドワンゴのniconico事業はさらに大きなビジネス価値を生み出すことになった。

各務氏はNicoSphereの構築に当たり、「パブリッククラウドが持つ機能やコストを常に念頭に置きながら、それ以上に価値あるものをオンプレミスで作ろうという意識で取り組みました」と語る。

コストとパフォーマンスのバランスを意識した基盤作りを自らの手で行えば、エンジニアは仮想環境に関する高度なスキルや知見、業務アプリケーションとの連携も踏まえたノウハウを血肉として身につけることができる。また、大規模なシステム運用になればなるほど、パブリッククラウドよりコスト低減できるケースも少なくない。それがオンプレミスならではの価値であり、中長期的に運用可能なサービスの提供につながっていく――それこそが、各務氏が構想したインフラ改革の最も大きな狙いでもあったという。

環境構築のリードタイムと
コストを大幅に圧縮

NicoSphereを最適な形で運用するため、VMware支援ツール「vROps(VMware vRealize Operations)」も導入された。vROpsは仮想環境に何らかの問題が生じた際、様々なメトリック情報を自動的に取得/分析して、問題箇所の切り分けや根本原因に対するアドバイスを提供する機能を持つ。現在のシステム利用状況などを詳細に分析し、将来予測などに役立てることも可能だ。

NicoSphereの運用責任者である加藤氏は、「vROpsはSLA管理のためのレポーティングと、何かトラブルがあった際の検証に使うことが多いですね。例えばユーザーから“レスポンスが遅い”といった問い合わせがあれば、それがVMの問題なのか、サーバー自体の問題なのかがvROpsを見るだけで素早く切り分けることができます。特にグラフィカルで分かりやすいため、利用者と同じグラフを見ながら、対処や改善策の立案が可能になりました」と語る。

仮想環境へ移行したことで、従来なら2カ月以上かかっていた環境構築のリードタイムは5日程度にまで短縮したという。

「以前の負荷テストでは、10台ほど用意されていた専用の物理サーバーを、エンジニアが譲り合いながら使っている状態でした。そこにプロトタイプのアプリケーションを入れ、“何万ユーザーがアクセスしたら何台サーバーが必要か”などを確かめてからサーバーの発注を行い、納品までの長い期間を待つしかなかったわけです。それに対し現在の環境は、テストしたくなったらVMで即座に構築し、必要数のVMをWebコンソールからすぐに立ち上げることで終了します。純粋にテスト期間だけでサービスインできるようになり、ビジネスの機動性が格段に向上しました」(加藤氏)

最大の導入効果は
「エンジニアリソースの最適化」

インフラエンジニアにとって大きな負担だったトラブル対応も劇的に減少した。従来は日々20人ほどのエンジニアが夜間のサーバートラブルに備え、オンコール(緊急待機)専用の携帯電話を持ち、いざというときはデータセンターに駆けつけ対応する体制が必須だった。だが現在は、サーバー障害が発生してもほかのマシンでVMが自動的に再起動してサービスを継続するため、「24時間対応の頻度が劇的に減った」と加藤氏は喜ぶ。

それ以上に、仮想環境の導入によって最も大きく変化したポイントは「エンジニアリソースの最適化」だと、各務氏は断言する。

「我々にとって最も重要なのはエンジニアリングに集中できる時間です。新しいサービスを開発したり、品質改善を続けたりしていくには、サーバーの調達やテストの待ち時間といったムダな時間を消費しないことが最も大事。オンプレミスでも最適なICTリソースがオンデマンドに調達できるなら、別にクラウドでなくてもいいわけです。トラブルなく動く高品質なハードウエアリソースが用意され、何か問題があればDell Technologiesのサポートからすぐにフィードバックが届く。そういった高品質な仮想環境が整備されたことで、開発のブロッカーがなくなり、エンジニアは空いた時間をコアの仕事に再投資することができる。これが最も大きな価値なのです」(各務氏)

仮想環境の稼働から数年が経過し、ドワンゴのエンジニアがKADOKAWA Connectedへと転籍した今、その効果は着実に実を結び始めている。

「もともとドワンゴでやっていた基盤の仕組みを、今はKADOKAWAグループ全体のインフラに横展開しています。それを開発・運用も含め、以前より少ない人数でカバーすることができています。また、これまで自社のエンジニアリソースが潤沢でなかったKADOKAWAも、当社が全面的にサポートする形となったことで、内製化の選択肢が十分現実的なものとなりました。これも大きな価値の1つです。内製化のメリットは、コストが下がりスピードが上がることだけではありません。最も重要なのは、ビジネスとデジタルの“接点マネジメント”のノウハウがたまること。それは将来、デジタルのノウハウを持たないほかのメディア企業との協業でも非常に有利に働くはずです」(各務氏)

最近でも、KADOKAWA Connectedのエンジニア力と仮想環境のポテンシャルを示すエピソードがある。新型コロナウイルス対応の緊急施策として、KADOKAWAの児童書ポータルサイト「ヨメルバ」で、角川つばさ文庫と角川まんが学習シリーズを2020年3月2日から200冊以上無料公開した施策である。

「小中高の臨時休校が要請されたため、ヨメルバで児童書を無料公開するプロジェクトが実施されました。テレビや新聞などたくさんのメディアでこの取り組みが紹介されたのですが、ニュースのテレビ報道による短時間での急激なアクセス増で、一時的なアクセス不能時間が発生してしまいました。我々は、KADOKAWAの環境で構築していたヨメルバのサービスを、リソースに余裕のあるドワンゴのNicoSphereへ即時移行しました。翌日のテレビにて報道された瞬間の最大トラフィックは二千倍にも増大しましたが、双方がVMware vSphereで作られていたのでOVFのエクスポート/インポートを利用したポータビリティの高さにも助けられ、迅速に対応することができました。以前の物理サーバーでは絶対にできないことでした」(加藤氏)

同様にKADOKAWA Connectedは、3月中旬からNicoSphere上で仮想的なVPNアプライアンスを構築し、KADOKAWAグループの全従業員(連結含め約4000人)が在宅でも社内システムを使えるテレワーク環境をわずか約3週間でリリース。新型コロナウイルスで国が緊急事態宣言を出す前に、事業継続を担保するBCPインフラを開発することにも成功している。

今後同社では、KADOKAWAグループ全体で仮想環境の構築を推進。既存ビジネスのDXを加速させるだけでなく、新しいビジネスとしてのスマートシティ、スマートライフといったデータドリブンのサービス開発を積極的に展開していく考えだ。

Dell EMC PowerEdge

最新のインテル® Xeon® プロセッサー・スケーラブル・ファミリーは、新しいエンタープライズ・アプリケーション、科学技術計算、通信、ストレージ、クラウド、ビッグデータ分析など、さまざまな用途に、性能、電力効率、仮想化、セキュリティーの面で大きなメリットを提供し、IT部門の課題解決を支援します。
Intel、インテル、Intelロゴ、Xeon、Xeon Insideは、アメリカ合衆国および/またはその他の国におけるIntel Corporationまたはその子会社の商標です。

Dell Technologies
(デル株式会社 / EMCジャパン株式会社)

TEL:044-556-3430

https://marketing.dell.com/jp/ja/contact

Dell Technologies x VMware ソリューションガイド