「人生100年時代」に向けて、保険のあり方が大きく変わろうとしている。その象徴的な取り組みを進めているのが、SOMPOホールディングスと東芝デジタルソリューションズだ。両社は東芝含め「疾病リスク予測AIサービス」を3社にて共同開発。SOMPOグループの1社であるSOMPOひまわり生命保険がこれを利用したスマホアプリを提供し、生活習慣病の予防・改善を支援している。SOMPOホールディングスが描く“保険の未来”とその実現に向けた東芝デジタルソリューションズとの取り組みを紹介する。

「安心・安全・健康のテーマパーク」が目標

損保大手の損害保険ジャパン株式会社を傘下に持ち、国内損害保険、海外保険、国内生命保険、介護・ヘルスケア事業を展開するSOMPOホールディングス。グループを統括するSOMPOホールディングスは、世界にも類を見ないユニークかつ先進的なスローガンを打ち出した。それが「安心・安全・健康のテーマパーク」の実現だ。

「あえてテーマパークという言葉を使っているのは、お客様をポジティブに変え、人生をより楽しく豊かなものにするお手伝いをしたいと考えているからです。本来、保険は、事故が起こったり、病気になったりした後にその補償をするもの。いわば『マイナスをゼロにするもの』。しかし、SOMPOグループが目指すのは『ゼロをプラスにする』こと。つまり、事故が起きないよう、病気にならないよう、怪我をしないように、『安心・安全・健康』をサポートする。いてほしい、いなくては困る保険会社になりたい。スローガンにはそのような思いが込められています」とSOMPOホールディングスの有田 芳子氏は説明する。

こうした考え方の一環として、同社が注力しているのがヘルスケア事業であり、予防医療だ。「人生100年時代」を生きるすべての人が、元気に自分らしく活躍し続けられる社会を目指すための、伝統的な「保険会社」から「健康応援企業」への変革を進めている。

※1:掲載情報は、2020年7月時点のものとなります。

生活習慣病リスクを予測し、行動変容を促す

この変革を象徴するサービスの1つが、東芝デジタルソリューションズならびに東芝と共同開発した「疾病リスク予測AIサービス」である。これは、利用者が持つ1年分の健康診断(健診)データを基に、糖尿病・高血圧症・肥満症・脂質異常症・肝機能障害・腎機能障害の6つの生活習慣病リスクについて、6年先までの予測結果を提供するサービスだ。

サービスの最大の特徴は、今の自分の健康状態から将来どのように疾病リスクが推移していくかが分かり、今後の生活習慣改善によるリスク低減効果を可視化して行動変容を促すこと。「例えば、運動や飲酒などのデータを変更することで、生活習慣病になるリスクがどの程度下がるか予測結果を数値で示せます」と東芝デジタルソリューションズの栗田 英和氏は説明する。

なぜ生活習慣病に着目したのか。それは近年、生活習慣病の罹患者が急激に増えているからだ。例えば、生活習慣病の1つである糖尿病は世界中で患者が急増。2013年に3億8200万人だった患者数は、2035年に5億9200万人になる予測だ。患者の重症化リスクも高まっている。2017年に国内の糖尿病重症患者の42.5%が人口透析を必要とし、その数は30万人を突破した。

医療費の高騰にも歯止めがかからない。日本の国民医療費は年々増加の一途をたどり、後期高齢者医療費と併せた総額は2025年に52兆円を超えることが見込まれている。

生活習慣病が重症化すれば、健康なときと同じように働くことは難しく、仕事の生産性低下も懸念される。さらに新型コロナウイルス感染症の重症化リスク因子には糖尿病、高血圧、肥満、慢性腎臓病などが挙げられている。生活習慣病の予防・改善は、一人ひとりの健康な暮らしを守るだけでなく、社会として取り組むべき課題なのである。

ただし、こうした取り組みを一つの企業だけで実現することは難しい。社会ニーズは多様化し、デジタル技術も急速に進化しているからだ。

「SOMPOグループは健康応援企業への変革を進めていますが、従来の損害保険や生命保険を提供するだけではお客様の健康増進に寄与することはできません。生活習慣の行動変容を促すには、疾病リスクを高精度で予測し、それを目に見える形で示すことが重要だと考えていました」とSOMPOホールディングスの井上 知亜紀氏は振り返る。

※2:掲載情報は、2020年7月時点のものとなります。

SOMPOグループの
ヘルスケアサービスのノウハウと
東芝グループのAI技術を融合

そこで事業パートナーとして白羽の矢がたったのが東芝デジタルソリューションズだった。東芝グループは50年以上にわたってAI開発に取り組み、技術的な知見やナレッジが豊富にある。AI関連特許の出願件数も5200件を上回り世界3位。国内企業ではトップを誇る。「私たちにないAIの技術とノウハウを提供してくれるパートナーとして最適と判断したのです」と有田氏は語る。

東芝グループも自分たちの足りない部分を補うパートナーを求めていた。どんなにAIの精度を高めても、サービスとして利用してもらうには、利用者の期待とニーズに応える必要がある。SOMPOグループの1社であるSOMPOヘルスサポートは、約5000の健康保険組合に対して特定保健指導を行っている。「専門知識を一般の人に分かりやすいように伝え、生活習慣の改善につなげるヘルスケアサービスの知識やノウハウは私たちにはない強み。SOMPOグループとパートナーシップを組むことで、利用者目線でサービスをデザインできると考えました」と東芝デジタルソリューションズの太田 和行氏は述べる。

実際、新しいサービスには両社のノウハウが随所に生かされている。サービスのベースであるAIエンジンは、東芝デジタルソリューションズならびに東芝が開発。これは、社会基盤を支えてきた技術力、産業分野で培ってきたビッグデータ解析技術やAI技術、さらに国内外の大学などと共同研究してきたヘルスケアデータのマイニング技術などを活用したものだ。

さらに数十万人単位の健診とレセプトの経年データを匿名化したうえで分析。「これら長年蓄積された大量データを用いた学習と独自手法により、6年先までの糖尿病発症リスク予測で90%以上の精度を達成しています」と栗田氏は話す。

 予測結果に基づき利用者に改善提案を行うアプリには、SOMPOグループのヘルスケアサービスに関するノウハウを反映させた。「利用者が無理のない改善目標値を設定することで『いつまでに、どれだけのリスク低減を目指す』といった活動が可能になり、行動変容につながりやすいのです」と井上氏は述べる。

SOMPOグループの1社であるSOMPOひまわり生命保険は、2020年7月13日から同サービスを採用。利用者は自身の予測結果をスマートフォンのアプリから参照し、日々の健康改善活動に役立てることができる。

図. 健康トライ 生活習慣病リスク予測
~SOMPOひまわり生命保険株式会社「Linkx 健康トライ(リンククロス 健康トライ)」より~

※3:掲載情報は、2020年7月時点のものとなります。

“同床異夢”ではイノベーションは困難

業種も文化も異なる会社が、それぞれの強みを発揮し増幅させることで新しい価値が生まれる。新サービスは、デジタル時代に求められるエコシステムの成功例といえるだろう。それが可能だったのは、両社のビジョンが一致していたことも大きい。

先に触れたようにSOMPOグループは従来の保険会社のイメージを払拭する「安心・安全・健康のテーマパーク」の実現を目指している。一方、東芝グループもデジタルの力を予防医療に応用することで、病気や重症化リスクを減らし、QOL(生活の質)の向上を支援する活動に力を入れている。2019年度からスタートした中期経営計画「東芝Nextプラン」でもAIサービスを次世代事業の1つと位置付け、医療・ライフサイエンス分野のリスク予測AIの開発に取り組んでいる。

一人ひとりの健康寿命を延ばし、社会課題の解決につなげる。これが両社の共通ビジョンだ。「ビジョンが違うと、相談や調整が必要になり、最悪の場合、プロジェクトが頓挫してしまうこともあります。互いにビジョンが同じだったため、会社の壁を感じることなく、1つの会社のようにスムーズに活動できました」と太田氏は振り返る。

ただし、実際のサービス開発は試行錯誤の連続だったという。当初は予測精度の向上を図るため、健診データを3年分入力するバージョンも構築した。しかし、3年分だと入力の手間も時間もかかりハードルが高い。そこで1年分の健診データで予測できるようにデータクレンジングなどの改良を重ね、精度を高めていった。「その結果、1年分の健診データでも3年分の健診データとほぼ同精度のリスク予測を達成。簡便で使いやすく、なおかつ生活習慣の予防・改善につながる精度の高いサービスを実現できました」と栗田氏は述べる。

高齢社会が抱える社会的課題を解決し、人生100年時代をいかに健康で自分らしく生きるか――。SOMPOグループと東芝グループは「世界に誇れる豊かな長寿国日本」という共通の未来を見つめている。

※4:掲載情報は、2020年7月時点のものとなります。

Innovator's Eye
デル・テクノロジーズは
東芝グループのDXに不可欠なパートナー

IT基盤の信頼と安心は次世代ビジネスの根幹

CPS(サイバー・フィジカル・システム)テクノロジーカンパニーを目指す東芝グループ。同グループはその実現に向けて、従来の産業分野別の事業の枠組みを転換し、「デバイス・プロダクト」「インフラシステム」「インフラサービス」「データサービス」という4つの機能別の事業領域で括り直し、それらのシナジー効果をあげることで競争力強化をはかろうとしている。その中で東芝デジタルソリューションズは、長期にわたるインフラの保守・更新・運用受託を担うインフラサービスと、データ活用による新付加価値を創造するデータサービスの推進を支えている。

インフラサービスは、膨大なIoTデータをミッションクリティカルな予防保全、防犯・防災、需要予測などに役立てるもの。一方、データサービスは、インフラサービスの保守・メンテナンスや人々の活動から生み出される様々なデータを付加価値に変えるもの。どちらも信頼性とセキュリティ性の高いIT基盤が不可欠だ。「安心・安全で信頼できるサービス基盤を、共につくることができるパートナーが重要だと考えています」と岡田氏は話す。

その共創パートナーの1社として信頼を寄せるのが、デル・テクノロジーズである。「デル・テクノロジーズはサーバー、ストレージなどの多種多彩なインフラポートフォリオを有しています。VMware、Pivotal、Virtustreamなどのグループ企業が有する先進テクノロジーを活用することで、システムのコアやエッジ、仮想化基盤、クラウドまで含めたインフラの価値向上を図ることができます」と岡田氏は評価する。

東芝グループは日本のみならず、ビジネスのグローバル展開を目指している。グローバルで均一かつ高品質なケイパビリティとサポートを提供できることも大きなポイントであるという。

またデータサービスは秘匿性の高い個人情報や機微情報をハンドリングしながらのビジネス展開が求められる。「デル・テクノロジーズはロバスト性(信頼性・堅牢性)とセキュリティを大前提としつつ、最先端の分野への投資も継続的に行っています。安心して長期的なパートナーシップを結び、新たなことに一緒にチャレンジできると考えています」と岡田氏は述べる。

※5:掲載情報は、2020年7月時点のものとなります。

AIサービスの開発・評価を共同で推進

両社の協業は、2016年に大規模データに対応した高速ディープラーニングのテストベッドを当時のDell EMCと共同で構築したことを起点に強化されてきた。このテストベッドは国際的なIoT推進団体「IIC(Industrial Internet Consortium)」の承認を受け、東芝グループのスマートコミュニティセンターにおいて、ビルの管理システムや空調機器、セキュリティゲートなどのIoTデータを用いた検証を行った。「機器メンテナンスの最適化、設備の稼働率向上などの成果を上げ、IoTプラットフォームにおけるディープラーニングの有用性を確認しました」(岡田氏)。

続く2017年にはデル・テクノロジーズのサーバー、ストレージおよびVirtustreamのクラウド技術で構成される可用性の高い環境上に、東芝アナリティクスAI「SATLYS(サトリス)」の実行環境を構築。ミッションクリティカル領域でのAIサービスの開発と評価に取り組んだ。こうした協業成果が、東芝のインフラサービスの進化を支えている。

東芝グループでは、データを活用した新たなサービスの開発と需要創出にも取り組んでいる。

2020年2月に設立した東芝データは、生活者の購買データや健康データなどを収集・活用して価値ある情報に変え、新たな便益やサービスを生み出す事業を推進している。東芝テックが提供する電子レシートシステム「スマートレシート®」(注)の購買データを活用し、流通小売業の販売促進やマーケティングを支援する事業を展開。また、スーパー・コンビニや飲食店・社員食堂などでの食に関する生活習慣のデータを活用し、ヘルスケア業界など異分野のパートナーとも連携し、健康を自己管理できるサービスの提供も検討している。

注:「スマートレシート®」(東芝テック株式会社の登録商標)
店舗で買物客が会計をする際に、レジでレシート印字データそのものを電子化して提供することができるシステム。買物客はスマートフォンアプリに表示されたバーコードをレジで読み取ってもらうだけで、電子化されたレシートデータを受け取ることができる。

東芝デジタルソリューションズにおいても、今回の「疾病リスク予測AIサービス」のほか、産業領域における様々なデータを活用したプラットフォーム・サービスの開発に取り組んでいる。

「デル・テクノロジーズは、我々が取り組むサービスの基盤として必要となる、信頼性の高いテクノロジーと幅広いソリューションを提供しています。これらを活用することで、ミッションクリティカルなインフラサービスの更なる進化を支えていただくとともに、今後は様々なパートナーとのエコシステムにより実現するデータサービスの分野においても、タッグを組んでいければと考えています」と岡田氏は期待を寄せる。

今後も東芝デジタルソリューションズはデル・テクノロジーズとの強力なパートナーシップを軸に、インフラサービスおよびデータサービス事業を推進し、顧客企業のビジネスの発展と社会課題の解決に貢献していく考えだ。

東芝デジタルソリューションズ株式会社

https://www.toshiba-sol.co.jp/

デル・テクノロジーズ株式会社

www.delltechnologies.com/ja-jp/