日経クロステック Special

モビリティー変革、エネルギー変革、デジタル変革で未来を創る 日本企業としての強みを持ち、加速するモビリティー革命をリードしていく

自動車セクターで多くの実績を持つデロイト トーマツ コンサルティングから、自動車産業への提言をまとめた『続・モビリティー革命2030 不屈の自動車産業』(日経BP)が上梓された。困難が増したWithコロナの時代、急激な市場変化にどう対応し変革を進めるべきか、執筆者の一人である同社執行役員の井出潔氏に聞いた。

 自動車産業は今、大きなうねりの中にある。環境規制、所有から利用へ、自動運転やコネクテッドカーに代表されるデジタル化など、様々な変化や改革が進んでいる状況だ。さらに、2020年初頭から世界を襲っている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、市場の先行きも不透明になっている。

 困難の多い時代を見据え、自動車メーカー(OEM)、サプライヤー、部品メーカー、ディーラー、レンタカー・カーシェアのサービス事業者など、自動車産業を取り巻く数多くのプレーヤーに向けた成長と改革への提言が、『続・モビリティー革命2030 不屈の自動車産業』(日経BP)という1冊の本として上梓された。2016年に発刊された『モビリティー革命2030 自動車産業の破壊と創造』のアップデート版ともいえる書籍だ。

 著者は、自動車セクターで数多くの実績を持つデロイト トーマツ コンサルティングのコンサルタント12名である。

自動車のメガトレンドをMX、EX、DXと再定義

 新著の概要を紹介しよう。冒頭の第1章では、現在の自動車産業を取り巻くメガトレンドが詳説されている。具体的には、「MX(モビリティー・トランスフォーメーション)」、「EX(エネルギー・トランスフォーメーション)」、および「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」の3つだ(図)。

 執筆者の一人である同社執行役員の井出潔氏は次のように説明する。「2016年に、コネクテッド、自動化/無人化、シェアリング、電動化を表した『CASE』という言葉が誕生し、自動車産業のトレンドとして使われてきました。それから4年がたった今、CASEが示した概念の多くは現実のものとなっています。そこで、自動車産業を取り巻く世界を、時代に向けて新たに捉え直す必要があると考え、MX、EX、DXをメガトレンドとして定義しました」。

井出氏
デロイト トーマツ コンサルティング
執行役員/パートナー
井出 潔
約20年にわたり、自動車・製造業に対し、経営戦略・事業戦略策定、組織構造改革、販売・マーケティング業務改革、新事業立上を企画から実行まで支援している。約5年の東南アジア駐在を含め、20カ国以上でのプロジェクト経験を有する。

 MXは、クルマの所有から利用への転換を加速させるカーシェアリングや、移動をサービスとして提供するMaaS(Mobility as a Service)に加え、公共交通機関の役割や都市設計なども含む、広い意味での移動の変化を表すトレンドである。

 続くEXは、CO₂排出削減を目的としたゼロエミッション化、EVやPHEVなどへのシフト、およびエネルギーのバリューチェーン全体での最適化や価値創造を表している。

 最後のDXは、MXやEXの推進に必要なデジタル化だ。例えば、MXにおけるモビリティーサービスの提供と運用、EXにおけるエネルギー需給の最適化など、新たな価値を創造する基盤としての役割を担う。またDXは、企業オペレーションの徹底的な効率化にも必要だ。現在の自動車産業の状況を、MX、EX、DXの切り口で捉えると、より整理された形で理解できるだろう。

社会トレンド(MX、EX、DX)と自動車の変化

社会トレンド(MX、EX、DX)と自動車の変化

既存事業を超えた変革の探求が成長の鍵

 第2章以降は、自動車産業の各プレーヤーに対する具体的な提言が並ぶ。まず、OEMを主な対象としているのが、第2章「モビリティーの先へ、自動車メーカーの目指すべき7つの方向性」と、第3章「収益化に向けた自動車メーカーの今取るべき打ち手」だ。

 このうち第2章では、OEMが目指すべき道筋として、クルマの超高付加価値化、モビリティー領域への進出、川上シフトによるテクノロジーの拡販化、川下シフトによるモビリティーサービスの提供など、全部で7通りの選択肢を提示している。また第3章では、収益改善の処方箋として、アーキテクチャーの統一化、ケイレツを超えた協業、デジタル活用による超効率化などを挙げている。

 サプライヤーや部品メーカーを主な対象としているのが、第5章「自動車部品メーカーにとって勝負を分ける次の10年~自ら針路を定め進むとき~」と、第6章「戦わずに共生する中小規模部品メーカーの生存戦略」だ。また、第7章では、ディーラーや自動車整備会社に向けて、「車両販売/メンテナンス事業者は猛烈な逆風下でいかに舵を取るのか」と題して、いくつかの打ち手を提案している。

 「サプライヤー、部品メーカー、およびディーラーは、ともすれば自動車メーカーの意向を伺うマインドが強くなりがちですが、これまで培ってきた技術力や商品提案力を武器に、新たな成長の種や事業の柱を模索する活動を加速させるべきだと考えています」と井出氏は説明する。

 さらに、業界全体で取り組むべき課題として、第4章(前編)「欧州がもくろむゲームチェンジとしてのサーキュラーエコノミー」と、第4章(後編)「待ったなし!自動車業界におけるサイバーセキュリティー対応の展望」を設けた。

 サーキュラーエコノミーとは、経済成長と資源の再循環の両立を目指した活動で、いわゆるリサイクルの上位概念に相当する。欧州ではこうした「静脈ビジネス」が活発化しており、日本でも確立が急務とする。後者のサイバーセキュリティーはクルマのデジタル化に伴い顕在化してきた課題である。本著では、これらを一つの章にまとめることで問題をあらためて提起した。

COVID-19によってモビリティー革命は加速

 読者の関心も高いCOVID-19の影響および見通しと、自動車産業がこれから目指すべき方向を取り上げたのが、「今改めてモビリティー革命をリードする覚悟を持つ」と題した最後の第8章である。

 同章を担当した井出氏は、COVID-19に関して、執筆陣の間でも様々な見方があったと明かす。「経済の停滞によって変革が遅れるのではないか、といった意見も当然ありました。しかし、クライアント企業へのヒアリングや様々な調査をファクトとしながら、社内で多くの議論を重ね、執筆陣としての見解を固めていったのです」。

 本書では、短期的にはCOVID-19が自動車産業に与えるインパクトは大きく、投資原資を縮小させる可能性は高いが、ヒトやモノの移動のニーズはなくならないこと、また、これを好機と考えたプレーヤーが事業参入や投資を行う可能性もあり、中長期的には、MX、EX、DXとして表されるモビリティー革命はむしろ加速するとの見方を示している。

 その上で、実直さや粘り強さといった日本企業の強みを生かしながら、ビジネスモデルの再設計も含めて、時代の変革をリードすべきと結んでいる。

 「ここで示した予測はもちろん仮説の一つでしかありません。しかし、パーソナルコンピューターの父と呼ばれるアラン・ケイ氏の『未来を予測する最善の方法は、それを発明してしまうこと』という名言にも表されているように、自動車産業を構成する皆さんによって、新たな未来が創られてほしいと私たちは願っていますし、その一助として本書がわずかでも役立てばうれしく思います」(井出氏)

 経営改革、戦略策定、オペレーション改革、人材マネジメント、さらにはそれらの実装まで幅広くカバーするデロイト トーマツ コンサルティングの俯瞰的視野から生まれた本書を、自動車産業の今後の指針の一つにしていただきたい。

続・モビリティー革命2030 不屈の自動車産業

デロイト トーマツ コンサルティング 著
■2020年10月19日発行
■定価:1,760円(税込)
■商品番号:280560
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続 モビリティー革命2030 不屈の自動車産業