「システム運用関連サービス(メーカー)」部門でトップを獲得したのは富士通だ。同社は約30年にわたり、ITインフラの運用管理サービスを提供。その取り組みやサービス品質、国内最大級の体制などは顧客から高く評価されている。加えて、もう1つ注目すべきポイントがある。それは、従来のIT運用サービスの枠を超え、顧客のデジタルトランスフォーメーションや働き方改革をも積極的に支援していることだ。2019 年にサービス体系を再構築し、サポート拡充に尽力していることも評価の一因になった。
約30年にわたり、ITインフラの運用管理サービス「FUJITSU Managed Infrastructure Service」を提供し続けている富士通。同社はこのサービスを通じて、日本にとどまらずグローバルに展開する企業のIT運用管理を支えてきた。
その内容は、あらゆる問い合わせに一元的に対応する多言語対応のヘルプデスクや、日々の運用業務支援、ハード/ソフトウエアの保守、PC環境の設定のサポートからPCライフサイクルの管理まで多岐にわたる。サービスの提供体制も、国内約700拠点に5000人の技術者を配備。全国どこでも2時間以内に駆けつけられる体制を確立している。
加えて、サービスを支える人材の育成にも力を入れている。例えば、システム運用の認定資格である「ITILファンデーション」は運用管理にかかわる全社員が取得。マイクロソフト製品などに関する社外資格も取得を推進している。組織全体の目標取得人数を明確にしつつ、個人の意思での挑戦を促す。担当者一人ひとりがプロの自覚を持つことで、一層のサービス強化につなげているという。
「運用サービスは、日々の安定稼働を実現することはもちろん、お客様の情報システム部門の負担軽減も追求する必要があります。当社は、そのための取り組みをコツコツと進めてきました。FUJITSU Managed Infrastructure Serviceには、その成果が投入されており、この領域では日本最大級の提供規模と品質を実現できていると自負しています」と富士通の古賀 一司氏は述べる。
今回のNo.1は、こうした富士通の地道な努力の賜物であることは間違いない。だが顧客に評価されているポイントは、ほかにもある。
「2019年から、FUJITSU Managed Infrastructure Serviceのサービス体系と提供体制の再構築を進めています。目的はお客様のデジタルトランスフォーメーション(DX)や働き方改革を積極的に支援すること。大きく3つの施策に注力しています」と古賀氏は言う。
1つ目の施策はデバイス運用のデジタル化だ。企業・組織がPCなどのデバイスを利用する際は、調達・導入・運用・返却/廃棄といった運用ライフサイクルのフェーズごとに、情報システム部門担当者の管理作業が発生する。そこで同社は、これらの業務を富士通にアウトソースするためのデジタルな窓口をつくり、顧客に提供している。同社はこれを「Digital Value Chain」と呼び、サービスの新たな強みとしている。
この仕組みを利用することで、例えばユーザーがPCなどの機器を購入し、利用して廃棄に至るまでを一貫してデジタルワークフロー上で管理できるようになる。また、富士通への問い合わせ内容の対応状況なども、ポータル画面で随時確認できるようになっているという。
「このDigital Value Chainの構築は、当社自身のDXの取り組みでもあります。サポート対応の過程で発生する当社側の作業を標準化することで、業務効率化につなげる。ひいてはそれが、お客様サポートの一層の拡充につながっていくのです」と同社の江口 広隆氏は説明する。
2つ目は、人材不足を筆頭とした「2025年の崖」への対応である。冒頭でも紹介した通り、サービスの生命線となる優秀なIT人材の確保・育成に注力するほか、RPAを活用した自動化や、長年蓄積したベストプラクティスに基づくプロセス効率化などを徹底。人に依存しないサービス基盤づくりを進めることで、対応力向上を図っているという。
そして3つ目が、同社が2020年7月6日に発表した「Work Life Shift」の推進だ。
Work Life Shiftとは、富士通が描く、ニューノーマル時代の新しい働き方のこと。テレワークを軸とした「最適な働き方の実現(Smart Working)」、既存の働き方の概念を変える「オフィスのあり方の見直し(Borderless Office)」、社員の自律性と信頼に基づく「社内カルチャーの変革(Culture Change)」というコンセプトのもと、国内グループ約8万人の全面テレワークシフトに踏み切った。
「発表後は、お客様から多くの問い合わせをいただきました。『どのようなIT ソリューションを活用するのか』『迅速なテレワークシフトに必要なことは何なのか』――。先行して取り組みを進める当社には、自社実践で得た知見をお客様に提供する義務があると考えています」と江口氏。そこで、FUJITSU Managed Infrastructure Serviceでも、同社の実体験に基づき、働き方改革に役立つ各種クラウドサービスや、仮想デスクトップ環境、さらにAIといった様々なツール/ソリューションの提供や導入支援、定着化支援などを行っているという。
これはもはや、既存のIT運用サービスの枠を超えたサポートといっていいだろう。だが現在は、あらゆる業務現場にとってITが不可欠なものとなっている。つまり、システムやデバイスが人々の働き方に直結したものである以上、IT運用サービスも、これまで以上に利用者に近づき、幅広い支援を行えなくてはいけないというのが同社の考えだ。
「例えば、今回のコロナ禍では多くのお客様がテレワーク導入に踏み切りましたが、その際、FUJITSU Managed Infrastructure Service が提供するDigital Value Chainが、在宅勤務者のデバイスや、働き方の可視化に役立ったという声をいただきました。となれば、その延長としてチャットツールの導入や、社内ネットワークへの接続などをお手伝いするのは、我々にとって自然なことです。今後も、より多くのお客様の声にお応えできるよう、サービスを拡充していきたいと考えています」と古賀氏は語る。
ニューノーマルの時代、IT活用の在り方は大きく変化しつつある。富士通は、IT運用サービスそのものの定義をアップデートしながら、顧客の期待に応えるサポートを追求していく。