次世代の高性能IoT用
60GHz超小型レーダー ~人やモノの位置と動きを正確に把握~

あらゆる電子機器に新たな価値を生み出す眼を付与

人と共存するロボット、住民の動きに応じて住環境を整えるホームオートメーションなど、スマート化した機器や設備を当たり前のように利用する近未来が目前に迫っている。こうした機器や設備には、ユーザーの状況や利用環境の状態を正確に把握する機能、いわば眼が欠かせない。機械に新たな価値を付与する眼となるのが、インフィニオン テクノロジーズ(以下、インフィニオン)が開発した超小型60GHzレーダーチップである。

高精度の小型レーダーを
あらゆる機器に組み込む近未来

 気象観測や航空機、船舶の運航などで用いる遠くにあるモノの位置や動きを知るための観測装置、レーダー。アクション映画やSFの中ではお馴染みだが、そんな限られた専門家だけが使う装置の代表例のようなレーダーを、家庭やオフィスの中、さらには一般消費者が気軽に活用できる近未来が目前に迫っている。

 かつて研究所や軍事機関で使う計算機として誕生したコンピューターは、高度な演算装置を小さなチップ上に集積したマイクロプロセッサーの発明によって、日常的なビジネスや生活の中で活用するパソコンへと進化した。そして今では、テレビもゲーム機もスマートフォンも、みな小さなコンピューターで動いている。同様のことが今、レーダーでも起きようとしている。高精度で小型のレーダーチップが登場し、電子機器にイノベーションを生み出す素地ができつつあるのだ。

 インフィニオンは、超小型・低消費電力の60GHzレーダーチップを開発した。わずか5.0mm×6.5mmの小型チップでありながら、4個のアンテナ、RF回路、トランシーバーICなどレーダーの中枢機能をすべて集積。さらに今回採用した60GHz帯のレーダーでは規格上7GHzの最大帯域幅が許容されており、他の周波数帯のレーダーに比べ高い分解能でのセンシングが可能となる特徴を併せ持つ(7GHz帯域使用時の理論分解能は2.14cm)。

 自動車の分野では、ADAS(先進運転支援システム)やAD(自動運転)で走行環境を正確に把握する手段の一つとしてレーダーが用いられるようになっている。今回インフィニオンが開発した60GHzレーダーチップは応用分野をさらに広げて「情報機器や家電製品、スマートフォンのような携帯機器など、様々な機器に周囲の状況を正確に把握する眼の機能を盛り込むことを目指したチップです」と同社パワー&センサーシステムズ事業本部 RF&センサー シニアエキスパートの浦川辰也氏は語る。既に先行的に応用したジェスチャー操作が可能なスマートフォンが商品化された。ただし、これはこれから急拡大するレーダー応用の始まりにすぎないだろう。

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図1:インフィニオンが開発した超小型60GHzレーダーチップ

送受信用の合計4個のアンテナ、RF回路、トランシーバーICを集約し、5.0×6.5mmのパッケージに封止している。スマートフォンなど携帯機器にも難なく搭載できる。アンテナを複数個搭載することで、電波を反射したモノがある方向と距離を検知できる。