
ERPが日本に入ってきたのは1990年代です。それから約30年、ERPの活用・運用方法についてはしばしば課題も語られていますね。
三浦それ以前は、基幹系システムといえばスクラッチ開発でした。パッケージERPの標準的なプロセスを採用することで、ゼロベースでの開発にかかる時間とコストを圧縮しようというのが始まりだと思います。
ただ実際には、既存の業務プロセスを吸収するために、多くの導入プロジェクトでアドオン開発が膨らみました。その結果、システムはどんどん複雑化し、運用コストも肥大。バージョンアップのたびに多大なコストと期間を要する状態になってしまいました。
これを受けて現在は、なるべくERPの標準仕様に合わせようという揺り戻しが起こっています。初めは現場に戸惑いが生まれるかもしれませんが、最終的には標準化が業務効率化につながる。このことが、徐々に認知され始めています。

確かに最近は、「レガシーシステムがDXの足かせになる」という指摘をよく聞きます。この点について、日本の製造業の現状認識はどうなのでしょうか。

三浦レガシーシステムに課題はありますが、私は必ずしも悲観していません。新型コロナウイルスの感染拡大は、企業の意識を大きく変えました。例えば、テレワークで課題が出れば、誰しも「うちのシステムはどうなっているんだ」と考えるでしょう。これにより経営層のITへの関心が格段に高まっています。インフォアのERPはオンプレミス、クラウドの両方に対応していますが、お客様と話していても、クラウドへの拒否感はほとんどなくなった印象です。実際、例えば最近ではIHIのグループ会社様に、当社のクラウドERPを採用していただいています。
谷口私も同じ印象を持っています。DXを進めるにはレガシーシステムの課題を早期に解決する必要があります。しかし、製造業がDXに取り組むには、様々な企業内データの収集や分析が欠かせず、基幹系システムが部門ごとにばらばらで情報も散在している状態は、その取り組みの足かせにもなる可能性があります。その意味では、ERPはDXと無関係ではないと考えます。
また、京セラコミュニケーションシステム(以下、KCCS)自身も、現状のコロナ禍でテレワーク業務への環境変化により、ERPをクラウドで導入したいという検討が増えてくると考え、クラウド人材の育成をはじめ、リソースのクラウドシフトを積極的に進めています。

インフォアのERPを使うと、基本的にアドオン開発はなくなるのですか。

三浦そう考えています。我々の強みは、製造業向けを中心とした業種特化型ERPです。大規模組立製造業向けの「Infor LN」、工業用製品・素材加工業向けの「Infor CloudSuite Industrial(SyteLine)」(以下、CSI)など、多様な製品を擁していますが、いずれも特化することで、標準機能でまかなえるようにしているのです(図)。
また、クラウドサービスのため、アップデートも随時行われます。そのため、お客様がアドオンしようと考えていた機能が、導入後に追加されるケースもよくあるようです。
谷口製造業各社は、基幹系システムの課題を早期にクリアし、その分のリソースをDXに振り向けたいと考えています。こうしたニーズに、インフォアのクラウドERPはフィットしていると思います。