社員のモチベーションを原動力に生産性を向上させ、革新的な製品やサービスを生み出す――そんな組織を作りあげるべく、常識にとらわれないユニークな取り組みを行う株式会社アカツキ。急成長するビジネスの裏には、常識を疑い進化し続ける「強い」組織論がある。本記事では同社の“人間的な活動”と“ITの効率化”を両立するコーポレートITの在り方、またデバイスを「所有」から「利用」に切り替える新たな調達手法の可能性について、代表取締役CEOの香田哲朗氏に話を伺った。

株式会社アカツキ

2010年創業以来、感情価値を大切にする「ハートドリブン」な経営哲学を基盤に、主力のモバイルゲーム事業で数々の大ヒットゲームの開発・運営を行い急成長を遂げる。2017年東京証券取引所市場第一部へ市場変更。「ゲームを軸としたIPプロデュースカンパニー」として、心が踊り感動とつながりをもたらすエンターテインメントをグローバルに展開。

面白いモノは“強いチームや組織”から生まれる?

株式会社アカツキ
代表取締役CEO
香田 哲朗 氏

大学時代のインターンシップ仲間だった塩田元規氏とともに、2010年に株式会社アカツキを創業、人間らしい感性を重視しながら強いチームや組織を作り上げてきた香田氏。「ゲームというエンターテイメントを中心に事業を推進していることもあり、面白いモノづくりができる環境づくりは重要です。そのためには、人間の本能的な部分がとても大きい」と力説する。

単に社会人としての役割に当てはめてしまうような組織では、感動や興奮につながるワクワクしたものが生まれてこないと指摘する。オフィスでは靴を履かずに業務を行うといった環境を例に挙げ、人間の本来あるべき姿と企業人との間を分離しない、個人と会社における役割スイッチを意図的に切り替えずとも、人間の全体感の中で仕事に取り組めることをコンセプトとして大事にしているという。

また、チームや組織において人間性の理解を進めるためのコミュニケーションを重視していると香田氏は力説する。「お互いの相互理解を高めるためにも、目的志向になりすぎないコミュニケーションが重要だと考えています。経営会議の場面でも、始まる前に各々が今気になっていることや感じていることをシェアをしたりしていて、人間としての感情的な部分を否定することなく、“心理的安全性”を醸成することによって強い組織を作っていくことを意識しています」。あるべき論を前提で語る前頭葉的な世界だけでなく、個人やチームという“生き物”を損なわない動物的な性質を大切にすることで、ワクワク感を生み出すチームを作り上げているのだ。「感情的に意思決定をするということではなく、そういう感情も1つの要素としてとらえていくことを大事にしているのです」と香田氏は説明する。

スピード経営を支えるシステム部門のあるべき姿

昨今ではデジタルトランスフォーメーションをはじめとしたデータドリブンな世界が注目されるなか、システムの在り方についても効率化の世界と個人の感情を重視する世界という両輪でとらえるべきだと語る。「短期的なものや数字に見える部分は合理的に判断できることも多くありますが、中長期的なもののとらえ方になっていくと、個々の意思決定が抜け落ちてしまうことも。システムとして見える、効果が発揮しやすい部分はシステム部門が全体として展開し、一方で、現場にとって使い勝手のいい仕組みも臨機応変に選択できるようにしています」と香田氏。

そんな業務基盤を整備する総務やコーポレートIT部門の役割については、セキュリティをはじめとした“守り”を重視する部分と、新たな価値観を作り出す“攻め”を重視する部分の両面が求められると香田氏は語る。特に攻めの部分については、個別のニーズをあまり否定しない形でIT環境を整備していくような思想が社内に根付いているという。「特にコミュニケーションツールやデバイスなどは、システム部門が選定したものを現場に強いても、基本的にうまくいかないケースが多い。現場の意見を取り入れつつ、システム部門が検証を行い正式に採用するという流れが我々の進め方です」。

システム部門には、ユーザー個別のニーズを否定せずIT環境を整備する思想が大切です

特にプロジェクトごとに限定的なツールでも、使い勝手次第で次世代のスタンダートにしていくなど、スピード経営を支えるIT基盤が重要と語る。「現場での小さなトライアルを許容していくことが大事です。スタンダードは初めにある程度作りますが、ネクストスタンダードに向けて小さくPDCAをまわしながら、さらに良い方法を模索するのは事業や組織の成長に必要ですし、ITについても同じことが言えるのです」と香田氏。

予測不可能なデバイスの進化に、新たな調達の選択肢

現場の感性を大事にするという姿勢は、デバイスにおける考え方にも共通する部分だ。ゲームを制作している同社だけに、PCや検証機のためのスマートフォンをできる限りタイムリーに調達できるよう意識しているという。「標準的なデバイスは用意するものの、高度なグラフィックス処理にも対応できるよう、メモリーやプロセッサーは個別にカスタマイズするメンバーもいます。私が使っているPCもカスタマイズしており、そのタイミングで一番いいものを選択しています」と香田氏。なお香田氏は高校生時代から、PC購入時の重要な指標の1つとしてインテルのプロセッサーを捉えていたという。

このデバイス調達については、基本的には購入モデルが中心だが、最先端のデバイスを最適な形で調達できるようにするためにも、総務が中心となって新たな調達方法を模索している状況にある。最近ではリースやレンタルなどハードウエアに紐づいた契約ではなく、利用する人に紐づいたデバイスのサブスクリプションモデルとなるDaaS(Device as a Service)という考え方も登場しており、企業にとって選択肢が増えるのはシンプルによいという香田氏。

いつ大きなスタンダードの進化が来るかわからない今、デバイス調達の選択肢を増やしたい

「どういうタイミングで大きなスタンダードの進化が来るかわからないこともあり、サブスクリプションであれば潜在的なリスクも低減できます。サービスの仕組みの中にハードウエアも組み込んだ方が、持続可能な開発目標であるSDGsのような、資源の最適化に向けたエコの取り組みにもつながるはず。オルタナティブ(二者択一)としてのニーズは間違いなくあると思います」と期待を寄せている。

ITを駆使して生産性を高める、
ニューノーマル時代の働き方

設立後10周年を迎えた2020年、経営体制の刷新を行うなかで、ゲームを軸としたIPプロデュースカンパニーとして、IP創出への挑戦や新しいゲーム体験創出への挑戦を通じて、新たなステージへと成長軌道に乗せていく重要な時期にある。ITツールの活用についても、新たな取り組みにチャレンジしていきたいという。「SNSやYouTubeなどの配信メディアは、今では消費者にとって一般的なものとなっており、ZoomなどのWebカンファレンスも幅広い場面で利用されています。そんなITサービスやツールをうまく活用し、キャラクターやIPも駆使しながら、さらなる企業の成長に大きく役立てていきたい」と今後のIT活用について力説する。

なお働く環境という視点では、世界規模で新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、同社でもリモートワークへの切り替えで業務を継続している。コミュニケーションを重視する同社では、プロジェクトのフェーズと求められるコミュニケーションの質によってどのような環境が最適なのか、現場の意見を聞きながら模索している段階にあるという。

「長期化するプロジェクトのなかで新たな価値を創造するプロセスの場面などでは、やはり対面でのコミュニケーションやディスカッションほどの気持ちよさはリモート環境から得られていない印象です。慣れの問題もありますが、その壁が越えられるかどうかは今がまさに過渡期であり、様子を見ながら新たな働き方を模索していきたい」と語る。どちらか一方に寄せていくのではなく、例えば気候的に出社が大変な時期はワーケーションを取り入れるなど、生産性向上を念頭にオプションを増やしながら働き方を進化させていきたいと意欲を見せる。そんなニューノーマルな時代の働き方を実現するためには、やはりITの力が欠かせないと最後に語った。

General remarks - vol 02

デバイス調達、新時代の幕開け
~「所有」から「利用」へシフトせよ

インテル
井田 晶也 氏 

日本マイクロソフト
梅田 成二 氏

ITジャーナリスト
三上 洋 氏

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