日経クロステック Special

5Gを支える京セミの光通信デバイス 光通信技術の開発が加速焦点は早くも6G対応へ

IoTを使った情報システムや自動運転車の活用拡大には、第5世代移動通信システム(5G)のインフラ整備が欠かせない。ただしその効果を発揮するには、同時に光通信網の整備も必要になる。光デバイスに特化した開発・製造体制をフル活用し、時代の要請に応える光通信デバイスを提供する京都セミコンダクター(以下、京セミ)の担当者3人に詳しく聞いた。
西村氏
京都セミコンダクター
製造本部 副本部長
兼 恵庭製造部 部長
西村諭一
磯村氏
京都セミコンダクター
開発本部 開発第1G
グループマネージャー
磯村尚友
太田氏
京都セミコンダクター
開発本部 開発第2G
グループマネージャー
太田篤伸

 本格的な5G時代が到来した。ただし、いかに移動体通信を高速・大容量、低遅延、同時多数接続にできても、基地局やデータセンターなどの間をつなぐ光通信網が変わらなければ期待に応える情報システムは実現できない。移動体通信と光通信網は、歩調を合わせて共に性能を底上げしていく必要があるのだ。

 光通信機器の性能を決めるキーデバイスである光信号の受光素子、フォトダイオード(PD)の開発・製造で世界をリードしているのが京セミである。5G時代の光通信機器への搭載に向けた25GHz~40GHz帯域のPDチップ、さらに信号増幅用TIA(Trans-Impedance Amplifier)など周辺部品を集積した光レシーバー・モジュールを他社に先駆けて開発。先進的な光通信機器メーカーが求める特性へとカスタム化し、いち早く供給している。

光通信デバイスに特化した
稀有な開発・製造体制

 時代の要請に応える光通信デバイスをタイムリーに届けるため、京セミは、数ある半導体メーカーの中でも稀有な開発・製造体制を採っている。

 光通信機器に搭載するPDチップの多くは、高周波デバイスの素材としての適性が高い化合物半導体をベースにして作られる。京セミではこの化合物半導体に注力し、長年にわたって継続的に技術と知見を蓄積してきた。とくに高速光通信網でデータ伝送用キャリアとして用いられる近赤外光を高感度で受光するInGaAsベースのPDでは、世界の中でも際立った豊富な実績を誇っている。

 また一般的に、光通信機器を開発・生産するメーカーは、PDの標準製品を外注して機器に組み込むのではなく、機器に合わせて自社設計したカスタムチップを利用する場合が多い。このため光通信用PDのサプライヤーには、顧客技術に最適化した特性を備えるデバイスを作り込む技術が求められる。

 その点、同社は半導体メーカーとしての規模は小さいながらも、開発ではデバイス構造からプロセス技術、実装技術まで、生産ではチップを作る前工程から後工程まで一貫して自社で行っている。このため「必然的にエンジニア一人ひとりの役割が広くなり、部門にとらわれずに多様な技術の引き出しを駆使して問題解決策を探ることができます。こうした体制であるからこそ、先進的光通信デバイスを迅速にカスタム開発できています。高い開発効率と同時に、エンジニアとしてのやりがいを感じながら開発に取り組めています」と製造本部副本部長兼恵庭製造部部長の西村諭一氏は語る。加えて、製品を製造する工場の設備と運用体制も、メモリー工場とは異質な、カスタム品の多品種少量生産に最適化した設備と運営体制が整えられている。

 現在、京セミでは、2020年度中に30GHzのレシーバー・モジュールを量産する準備を進めている。たとえ高性能なPDとTIAなど周辺部品を単純に組み合わせたとしても、PDの潜在能力を引き出した使い勝手の良い光レシーバー・モジュールができるわけではない。そこで同社は、デバイス技術と高周波回路技術をすり合わせることで、モジュール設計を最適化している。また、高速動作するPDでは受光素子の受光径が小さくなり、光ファイバーからの光を絞り込むためのレンズを搭載することになるが、「レンズをチップ裏面に高精度に加工し、CoC(Chip on Carrier)として実装する技術が必要です。京セミは、こうした光学系の設計・加工技術を持つ国内屈指のメーカーです」と開発本部開発第1G グループマネージャーの磯村尚友氏は語る。

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京セミでは、光通信デバイスの開発(左:写真は周波数応答特性測定用ネットワークアナライザー)だけでなく、前工程(中:写真は露光工程)と後工程(右)まで、自社内で一貫して行っている。