不確実性への対応力を左右するDX 先進企業は緊急事態をどう乗り越えたのか

Case Study

「ニューノーマルの時代に
おける“企業のあるべき姿”
とは?」
〜DXによる変革を加速させ、ニューノーマルに挑む〜

アフラック生命保険株式会社
上席常務執行役員 CIO
二見 通 氏

新型コロナウイルスの感染拡大により、企業活動がここまで停止するとは誰が予測できただろう。予測不可能な危機に対処するために何をすべきか?日本のがん保険・医療保険分野を牽引するアフラック生命保険の取り組みがヒントになりそうだ。同社は、「Aflac VISION2024」を掲げ、「生きる」を創るリーディングカンパニーへと飛躍するために、DXを推進し企業変革を進めてきた。また、今年からはじまる「中期経営戦略2020~2022年」でもデジタルイノベーションへの取り組みをさらに加速させる方針を打ち出した。こうした取り組みが、結果的にコロナ禍の備えとなり、変革を加速することで未曾有の危機を乗り切ろうとしている。アフラックの上席常務執行役員 CIO二見 通氏と、日本マイクロソフト 金融サービス営業統括本部 業務執行役員 統括本部長の綱田 和功氏、アクセンチュア 金融サービス本部 保険グループ日本統括 マネジング・ディレクターの林 岳郎氏の3者が、ニューノーマルの時代における“企業のあるべき姿”を議論した。
※本取材は日本マイクロソフトが提供するチームコラボレーションツールである「Microsoft Teams」で実施いたしました。

働き方改革の取り組みを一気に加速し
短期間で在宅勤務に移行

--コロナ禍以前とコロナ禍で働き方はどのように変わりましたか?

二見 アフラックは、創業50周年にあたる2024年に目指すべき姿として策定した「Aflac VISION2024」において、「生きるための保険」のリーディングカンパニーから「生きる」を創るリーディングカンパニーへの飛躍を掲げ、その実現のためにDXを推進し企業変革に取り組んでいます。また、イノベーション企業文化を醸成するべく社員一人ひとりの多様性を尊重するダイバーシティの推進にも力を入れており、その一環として時間と場所にとらわれない働き方の実現に向けた制度・インフラの整備を進めていました。さらには、今年からはじまる「中期経営戦略2020~2022年」において、デジタルイノベーションへの取り組みをさらに加速させる方針を打ち出したばかりでした。そして、偶然にも同じ時期に新型コロナウイルス感染症問題への対応が求められることになり、その動きを一気に加速させたことで感染拡大に伴う在宅勤務のニーズにいち早く対応することができました。

コロナ禍以前は、部門ごとに「1人月1回は在宅勤務」などの目標を設定し、在宅勤務を経験することで徐々に普及させていく計画でした。しかし、コロナ禍により状況が一変する中、働き方改革の取り組みが功を奏し、IT部門の社員450名はもとよりパートナー企業も含めて3,000人の部隊を1カ月間で在宅勤務に移行することができました。さらに、IT部門のみならず、多くの部門でスムーズに在宅勤務をスタートさせることができたのは、これまでの取り組みがベースにあったからに他なりません。

--コロナ禍対策として、短期間で働き方改革を加速できた要因はどこにありますか?

二見 コロナ禍において、各部門は出社制限の中でも、お客様に安心をお届けするという生命保険会社としての使命を果たすべく保険業務の継続性を維持するために、迅速に意思決定し必要な対策を実施していくことが求められました。当社は、2020年1月から役職員が原理・原則の趣旨及び精神を確認・共有した上で、形式的ではなく、その趣旨・精神に照らして真に適切か否かを判断・行動するという、プリンシプルベースへの行動変容を進めており、社内教育も始めていました。「上司から言われたから行動する」「指示が無ければ行動しない」というのではなく、自らの責任において自主的に判断し行動する企業文化の醸成に向けて取り組んでいます。

プリンシプルベースに基づき、私も自ら判断しました。例えば世界中で新型コロナウイルスの感染が広がり始めた2020年2月に、全社員の在宅勤務に備えてネットワーク基盤の増強を決断し、2020年3月中旬には増強を完了しました。もしも判断が遅れていたら、ネットワーク基盤の逼迫は避けられなかったと思います。

コロナ禍の取り組みを
ニューノーマルの時代の新たな価値創造に繫げていく

--在宅勤務を実施する中で、何か課題は見えてきましたか?

二見 実際に全社員による在宅勤務を想定した場合、どの部門も課題として感じたのが、紙を扱う業務の存在でした。セキュリティの観点から紙の資料を自宅に持ち帰ることはできないため、どうしても出社を余儀なくされるケースがありました。今後、新型コロナウイルスの第2波や新たなウイルス感染拡大に備えるべく、トップダウンにより「全社的にペーパーレスを加速する」という方針が打ち出されました。コロナ禍で経営環境が悪化する現在、多くの企業では投資を控える傾向が強いと思います。アフラックでは、単年度の観点ではなく、ニューノーマルの時代を見据えて継続的かつ効率的にビジネスを行っていくために投資するという明確な方向性が示されました。大きな投資になりますが、経営トップの強い意志のもとすべての部門で一斉に「紙からの脱却」に取り組んでいます。当社のペーパーレスを支援してくださっているアクセンチュアには当社の視点に立ち、単なるペーパーレスではなく、保険業務プロセスの自動化に向けた提案をお願いしています。

アクセンチュア株式会社
金融サービス本部
保険グループ日本統括
マネジング・ディレクター
林 岳郎氏

保険会社の新しいプラットフォームとして、二見様からお話いただいたイメージはオートメーションの工場です。通常、オペレーション部隊では何百人ものオペレーターがパソコンに向かって打鍵していますが、次世代業務部門では数人のオペレーターとロボットの協働により業務プロセスの大半を自動化することで、人間のオペレーターがより付加価値の高い仕事に専念できる環境を構築したいとのご説明を受けました。アクセンチュアではグローバル全体で自動化に関する調査・研究を進めており、保険業界をはじめ様々な業界での実績があります。これまで培ってきた豊富な知見やノウハウを活かし、“将来の保険業のあるべき姿”をアフラック様と一緒に検討させていただいています。

二見 DXを推進していく上で重要なポイントは、ユーザー企業においてデジタル技術で解決したい課題を明確にしておくということです。その課題の解決に向けて、業界に知見を持つユーザー企業と、業界に依存しない技術やノウハウを有するパートナー企業が、双方向で提案を出し合うことによりイノベーションを創造することができます。マイクロソフトやアクセンチュアから最新技術を紹介していただくことで、当社の中で新たなアイデアが沸き上がってきます。ユーザー企業とパートナー企業の双方が刺激し合うことにより、デジタル社会の可能性が大きく広がっていくと思っています。

日本マイクロソフト株式会社
エンタープライズ事業本部
金融サービス営業統括本部
業務執行役員 統括本部長
綱田 和功氏

マイクロソフトとは、「働き方改革はオフィス業務だけではない」という考えのもと、現実と仮想をミックスさせたMR(Mixed Reality、複合現実)を実現する「Microsoft HoloLens(以下HoloLens)」の活用についてアイデアを出し合いました。コロナ禍で開催できなくなっている「がんに関する展示会」を、HoloLensによるバーチャル展示会で代替できないかなども検討中です。一般企業にHoloLensを貸し出すことで、3密(密閉、密集、密接)を回避しながら、がんについて視覚的かつ実感を持って理解を深めていただく新たな体験を提供できます。

綱田 日本マイクロソフトでも保険業界にHoloLensをどう活用していただくか、今は試行錯誤の段階です。アフラック様のお考えは先進的で、がんの啓発活動への貢献とともに、HoloLensの可能性を拓くという観点でも当社にとって大きな意義があります。

--DXを推進してきた取り組みが、どのようにコロナ禍対策に活かされたのでしょうか?

二見 アフラックでは、DXによる新しいサービスの開発・提供や業務プロセス改革についてスピード感を持って進めるために、2019年1月にアジャイル推進室を立ち上げました。これまでウォーターフォール型で数年かけて大規模プロジェクトを進めてきましたが、アジャイル型の業務プロセスと体制により、業務執行部門とIT部門が一体となり、小規模かつ短期間でスタートし改善を繰り返しながら成果を出して徐々に広めていく手法にシフトしています。DXによる変革のスピードアップを図るアジャイル型の働き方が、コロナ禍における在宅勤務の実現など緊急対策を速やかに実現する上で非常に有効でした。DX、アジャイル、働き方改革などこれまでの取り組みが、ここにきて相乗効果を生み出し始めました。

新しい取り組みに対して柔軟性のある社員も多いことから、変革への流れができつつあり、今後は企業文化として定着させていきたいと思います。DXはITだけの話ではありません。「少子高齢化や異業種参入など、このままでは生き残れない」との経営トップの強い危機感を背景に、「会社全体でDXに取り組んでいこう」というメッセージを発信し続け、競争の激化やパンデミック対応など、企業環境がどんなに変化しても慌てることなく対応できる強い会社になっていきたいと思います。

ビジョン実現に向けた取り組みがコロナ禍の備えとなった

--アフラックのコロナ禍対応について、客観的な立場から率直な感想をお聞かせください。

コロナ禍のアフラック様の対応を見ていて、その素早い対応に感服しておりました。二見様のお話を伺い、ビジョンを実現するための従来からの取り組みが今回の素早い対応に繋がっていること、そして企業として何をするべきか、社員一人ひとりの強い想いと一体感が、コロナ禍における対応にアクセルを踏み、一気に加速できたのだと納得できました。今後も、ゴールに向かって走るアフラック様の伴走者として、専門スキルを駆使し支援していきます。

綱田 私も、林さんと近い感想を持ちました。漫然と働き方改革に取り組むのと、「生きる」を創るリーディングカンパニーへの飛躍を実現するために働き方改革に着手し、その一環としてテレワークを導入していくのとでは、大きな差が生まれるということを実感しました。これからもアフラック様には、「Aflac VISION2024」実現に向けて保険業界の先頭を走り続けていただきたいと思います。マイクロソフトはテクノロジー力を駆使し、アクセンチュアさんとも連携しながら、アフラック様と、その先のお客様のお役に立つよう努めていきます。

--ニューノーマルの時代を見据え、アフラックの今後について、またコロナ禍を生きる企業に大切なこととは何か、お考えをお聞かせください。

二見 「がんに苦しむ人々を経済的苦難から救いたい」という思いのもと、1974年に日本で初めて「がん保険」を提供する保険会社としてアフラックは誕生しました。現在では1,500万人を超えるお客様から2,400万件以上のご契約をお預かりしています。国内のがん保険・医療保険の保有契約件数No.1※となった現在も、創業時の想いは社員一人ひとりの胸の中で大切に受け継がれています。

コロナ禍以前も以後も、当社は「生きる」を創るリーディングカンパニーへと飛躍することを目指し、その実現に向けてデジタル技術を手段として活用し企業変革を進めてきました。DXは手段であって目的ではありません。技術が急速に進化する中で目的を達成するためには、古い道具ではなく最新の道具を使うことが必要です。AI、IoT、5G(第5世代移動通信システム)など技術革新が急速に進む中、常にアンテナを高く張って、当社が大切にしているコアバリューに基づき、代理店やお客様などのステークホルダーへ価値提供を実現できる技術を徹底追求し、保険ビジネスに変化をもたらしたいと強く思っています。大事なのは、当社がコアバリューに基づき目指すところは何か、ビジネスを行う目的は何かなど、ゴールを明確にすることです。その点さえぶれなければ、どんな苦難に直面しても企業も社員も進化し生き残っていけると確信しています。

※令和元年版「インシュアランス生命保険統計号」より

CONTENTS

アクセンチュア×日本マイクロソフト「ポストコロナ:ニューノーマル時代を勝ち抜くために 「コロナ禍に短期間で事業継続を実現できた要因とは?」〜DXがパンデミックへの対処の仕方を変えた〜アステラス製薬Case Study