ウイズコロナ時代に必須となる
仮想デスクトップ環境の構築

新型コロナウイルスの感染症の拡大によって民間企業のみならず、行政も大きな打撃を受けた。4月に緊急事態宣言が出されると、政府から各自治体に対して、登庁者の7割削減が要請され、大混乱に陥った。大半の自治体ではテレワークの準備を整えていなかったからだ。日本マイクロソフトはこの緊急事態に対して、50自治体、約9万人のテレワーク環境の構築を緊急支援した。

今年4月13日、政府は全国自治体に対して、出勤者を最低7~8割減らし、業務を原則として自宅で行えるようにすることを要請。人同士の接触を避けて新型コロナウイルス感染拡大を防ぐためだ。しかし、多くの自治体はこの要請に即座に応えることはできなかった。それほど大量の職員を長期に在宅勤務させることなど想定していなかったからだ。

7割削減要請で混乱した自治体の現場

日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 パブリックセクター事業本部 デジタルガバメント統括本部長 木村 靖 氏
日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 パブリックセクター事業本部 デジタルガバメント統括本部長 木村 靖

「セキュリティ対策として採用された三層分離が重くのしかかりました。基幹業務系とインターネット接続系が切り離されているために、そもそもネットを使ったテレワーク環境がないし、自治体内にはネット接続する端末がわずかしかありません。ルーターの品不足もありデバイスの不足も深刻で、仕方なくLINEなどを使ってシャドウITで職員同士が連絡を取り合う事態になりました」と日本マイクロソフト業務執行役員の木村靖氏は語る。

2015年に実施された三層分離は、その後、見直しを進めているが、まだ状況はほとんど変わっていない。また、シャドウITとは組織内で公認されていないシステムやデバイスを個人が独自に使用するもので、情報漏洩などの危険がある。「さらに言えば、テレワークに対する知識の不足や、根強い紙・ハンコ文化が障害となっていました。また住民サービスについても対人・対面が基本で、オンライン化が困難でした。そして、在宅勤務のための服務規程や労務管理なども未整備です」と木村氏。このような課題は以前から指摘されていたが、改めてコロナ禍で顕在化した。

テレワーク構築や組織・業務改革も支援

そこで、日本マイクロソフトはいち早く3月9日、顧客支援のためにOffice365のE1ライセンスの6ヵ月無償提供とセキュアリモートワーク窓口を設置し、サポートを開始した。木村氏によれば、これに対して中央官庁も含めて多くの自治体から問い合わせがあり、自治体特有の環境を踏まえて個別に支援し、結果的には広域自治体・政令市・中核市など大規模自治体を中心に50自治体にリモート環境を提供し、全国自治体一般行政職員約90万人のうち10%、約9万人が利用することになった。

同社では単に技術上だけでなく、自治体の組織や業務改革のための支援も行っている。「テレワークに限らず働き方の質を変えて、生産性を改善し、住民サービスの質を上げたいという話もあり、当社ではビジョンの構築から組織目標設定、職員研修なども提供しています。特にDX推進では住民サービスを実現するアプリを内製化することが必要であり、そのサポートも行っています」と木村氏は話す。

6月4日に同社は神戸市と包括連携協定を結び、市職員が業務効率を高めるアプリを開発できる環境づくりも含めてDX推進による働き方改革、スマートシティ実現、デジタル人材の育成、デジタルを活用した子供達の教育などの支援を行うこととなった。この結果、新型コロナの感染状況のデータポータル、特別定額給付金の申請状況確認サービス、新型コロナに関する健康相談チャットボットなどのアプリをなんと1週間で職員が作りあげたという。

「シンガポールでは全行政職員の7~9%がIT人材であるのに対して、東京都はわずか0.3%です。今後、DXを推進するには今より10倍以上のIT人材が必要となるでしょう」と木村氏は語る。

柔軟性の高いWVDで自治体の選択肢を増やす

日本マイクロソフト株式会社 パブリックセクター事業本部 デジタルガバメント統括本部 松藤 高繁 氏
日本マイクロソフト株式会社 パブリックセクター事業本部 デジタルガバメント統括本部 松藤 高繁

リモートワークを推進する上で、いま求められているのが仮想デスクトップである。一般的にVDI(Virtual Desktop Infrastructure)と呼ばれている。これは、サーバー上に構築された仮想マシンを各ユーザーに仮想デスクトップとして割り当てる仕組みで、それぞれユーザーごとに自分のパソコンのように使える。

VDIであれば端末ではデータも処理も行わず、入力と結果の表示だけなので、どこにあるパソコンやスマホからでも安全に利用できる。「自治体ではテレワークの要請に対してVDIの仕組みがほしいという声が多かったですが、自前で構築するオンプレミスでは導入に半年から1年間はかかる。そんな余裕はないので、当社が昨年10月にリリースしたクラウド型のVDIである“Windows Virtual Desktop(WVD)”をご提供しました。WVDならばゼロから構築しても1ヵ月半、DXに向けたシステム構築をしている場合ならば最短数日で稼働できます」と同社の松藤高繁氏は話す。

WVDはマイクロソフト社のクラウドサービスであるMicrosoft Azure上で機能する仮想デスクトップであり、オンプレミスで必要となる仮想マシンやゲートウェイ用サーバー、管理コンポーネントなどのハードウェアの購入、設置が不要だ。そのため、短期間で稼働できる。クラウドなので急に利用者を追加する場合も迅速な対応が可能だ。

Microsoft365との親和性も当然ながら高いのでエクセルやワードなども利用可能な上に、Windows10マルチセッション利用が可能で、1台の仮想マシンで複数のユーザーがOS環境を共有し、利用することができる。

自宅外出先から安全にテレワーク

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もう1つのメリットはCitrixやHorizonなど他社のVDI 管理ソリューションとも連携可能で、WVDと自由に組み合わせることができる。例えば、オンプレミスやクラウドでCitrixのVDIを使っているなら、使い勝手はそのままで WVD を利用したり、将来は一つの VDI 管理ソリューションに統合することも可能だ。

「以前から他社のVDIをお使いのお客様はそのノウハウを活かしたままWVDを使える柔軟性があります。今はお客さまがいろいろな選択肢を持てることが重要なのです」と、松藤氏が語るように、状況が次々と変わる今、自治体はより多くの選択肢を持つべきだろう。