2020年、コロナ禍にあっても建設業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の流れは止まることなく、加速している。国土交通省は小規模を除く公共工事にBIM/CIM※の適用原則化の目標期限を2023年に2年前倒しした。スピード感をもってBIM/CIMの本格利用を行う際に、時間とコストがかかる「CAD on VDI」(CAD環境のVDI化)の敷居の高さが大きな課題となる。

2020年9月、「CAD on VDI」の概念を変える新しいサービスが登場した。コロナ禍における設計部門のテレワーク実現の切り札としても注目を集める「CAD導入支援・構築サービスfor Windows Virtual Desktop」。世界有数のCADベンダーでもある大塚商会のキーパーソンに、問い合わせが急増する同サービスの革新性とポテンシャルを聞いた。
※BIM(Building Information Modeling)/CIM(Construction Information Modeling/Management)

コロナ禍で改めて露呈した
設計部門の在宅勤務の難しさ

建設業のニューノーマル(新常態)を考える上で、設計部門の働き方改革は重要な軸となる。テレワークにより建設業の根幹を担う設計業務の効率化と継続性の向上を図るとともに、BIM/CIMの活用を本格化し建設業のDXを加速することがいま、急務となっているからだ。

BIM/CIMは、計画、設計段階から3次元モデルを使って、形状、構造、材質、コストなど様々なデータを紐づけ、関係者間で情報を共有しプロジェクトを進める。データに基づき建設プロセス改革を実現するBIM/CIMの活用は、生産性向上、競争力強化に加え、人手不足、未曾有の災害への迅速な対応など喫緊の課題解決に欠かせない。2020年、国土交通省は小規模を除くすべての公共工事でのBIM/CIM原則適用の目標期限を、従来の2025年度から2023年度に2年前倒しを行った。

株式会社大塚商会
PLMソリューション営業部 プロジェクトPLM課 次長
長井 尚史 氏

BIM/CIMを本格的に活用するためには、在宅勤務を含む「いつでもどこでも業務が行える」テレワークの実現がベースとなる。だが、コロナ禍で設計部門における在宅勤務の難しさが改めて露呈した。「社内のパソコンにアクセスしデスクトップ環境を操作するRDP(リモートデスクトップ)を、緊急対策として急遽導入し運用するケースもありました。しかし、RDP で3D CADの重いデータを扱うのはパフォーマンス面で難しいことから、VDI(仮想デスクトップ)の導入を検討したいと相談をいただくケースが増えています」と大塚商会 PLMソリューション営業部 プロジェクトPLM課 次長 長井尚史氏は話す。

大塚商会は世界有数のCADベンダーとして、CADソフトウェア・サービスをワンストップで提供する。「CAD on VDI」にもいち早く取り組み、豊富な導入実績を有している。在宅勤務での3D CAD利用に関して、コロナ禍以前と比べて倍増ではきかないほどの相談を受けているという。テレワークにおける「CAD on VDI」の課題について長井氏は説明する。「VDIはサーバーに仮想デスクトップ環境を構築し、利用者はサーバー上で稼働している仮想デスクトップの転送画面を操作するだけです。実体は手元のPCにはなく、操作する端末にはデータは残りませんので、情報漏洩等のセキュリティリスクが軽減されます。また、利用者は3D CADを動作させるための高機能な端末が必要なくなるなど、多くの導入メリットが存在します。問題は時間とコストです。一般的にVDIの構築は検討、導入、検証も含めると優に数カ月要することに加え、システム導入時の高額なコストも敷居を高くしています。また社内で利用する3D CADは日々進化しており、常に快適に利用するための機能をVDIに持たせ続ける必要があります。よって導入したVDIシステムは、入れ替え、増設含む定期的な機能アップが必要となります」

初のマイクロソフト純正DaaSにより
「CAD on VDI」の可能性が拡大

株式会社大塚商会
PLMソリューション営業部 首都圏PLMサポート2課
アプリケーションスペシャリスト
大福 浩之 氏

「CAD on VDI」の課題を解決し、BIM/CIMの本格活用をいかに進めていくか。大塚商会が可能性を見出したのがクラウドベースの「CAD on VDI」の実現だった。Azure のラインアップにGPUを搭載した仮想サーバー「NVシリーズ」の登場がきっかけになったと同営業部 首都圏PLMサポート2課 アプリケーションスペシャリスト 大福浩之氏は振り返る。「プレビューされたNVシリーズの環境でBIMツールを実際に動かして検証した結果、実用に耐え得ることを確認しました。2016年当時は、まだBIM/CIMをはじめCADソフトウェアに関してクラウドでの利用許諾が認められていなかったため、メーカーの特別許可をいただき、クラウドベースでのBIM活用に期待を寄せられているお客様と一緒に検証を進めました」

株式会社大塚商会
技術本部 TCソリューション部門 TSC・VDI・クラウド課
テクニカルスペシャリスト
菅 直樹 氏

クラウドベースのBIM/CIM活用に向けて、主要CADベンダーによるソフトウェアのクラウド利用許可に加え、2019年に新しいDaaS(仮想デスクトップサービス)として Windows Virtual Desktop(以下、WVD)がリリースされたことが突破口となった。WVD は、Azure を利用した初のマイクロソフト純正DaaSである。従来のDaaSにはない独自のメリットによりDaaSの導入を身近にすると、技術本部 TCソリューション部門 TSC・VDI・クラウド課 テクニカルスペシャリスト 菅直樹氏は説明する。「一般提供されている Windows 10 は1ユーザーにつき仮想マシンを1台用意しなければなりません。WVD は、数あるDaaSサービスの中で唯一、Windows 10 のマルチセッション接続に対応しており、複数ユーザーで1つの仮想マシンを同時に利用することができます。仮想マシンのリソースを共有できるため集約率が上がり、コストの最適化が図れます」

株式会社大塚商会
マーケティング本部 クラウドコミュニケーションプロモーション課
小澤 大地 氏

マーケティング本部 クラウドコミュニケーションプロモーション課 小澤大地氏は“マイクロソフト純正”の強みとして、もう1つのコストメリットを挙げた。「仮想環境で Windows 10 などのクライアントOSを利用する場合、VDA(Virtual Desktop Access)と呼ばれるライセンスを別途用意しなければなりません。WVD は、多くの企業で導入が進む Microsoft 365 のライセンス※に Azure 上で利用できるVDA利用権が含まれており、別途ライセンスを購入する必要はありません」
※対象ライセンス:Microsoft 365 E3/E5、Windows 10 Enterprise E3/E5

大塚商会は、日本マイクロソフトや顧客企業との間で取り組んできたCAD on VDIのノウハウを活かし、WVD 基盤でBIM/CIMソフトを活用するための「CAD導入支援・構築サービスfor Windows Virtual Desktop」を2020年9月より提供を開始した。

Windows Virtual Desktop の活用で
「CAD on VDI」をより高度かつより身近に

「CAD導入支援・構築サービスfor Windows Virtual Desktop」は、設計部門のテレワークが抱えていた課題を一気に解決する。「WVD の安価な利用料による導入・運用コストの削減に加え、パブリッククラウドを利用することで環境構築に要する時間と手間の解消や、運用負荷の軽減が図れます。また特に閉域網を必要とせず、インターネット接続環境さえあれば利用できることから、テレワークへの移行をスムーズに進めることが可能です」(長井氏)

秘匿性の高い設計データを扱うため、セキュリティの担保は必要条件となる。「まずVDIにより端末にデータが残らないことから、在宅勤務はもとより端末紛失時も情報漏洩を防止できます。また Azure を利用することで強固なサイバー攻撃対策など高いセキュリティレベルでデータを守ることが可能です。さらにバックアップはもとより、東日本リージョンと西日本リージョンの間でのDR(Disaster Recovery)の実現など、国内からデータを出すことなくBCP(事業継続計画)対策の強化が図れる点も、お客様から高く評価されています」(菅氏)

設計者の満足度を高める機能も備えていると大福氏は話す。「設計者は、自身でCADソフトウェアの設定を変更し、自分が作業しやすい環境をつくっています。その設定変更が保存されているのがユーザープロファイルです。VDIでは、ユーザーがログインする仮想マシンが毎回同じものになるとは限らないため、ユーザープロファイルの扱いはオンプレミスのVDIでも重要な課題となります。WVD では、VDI環境でのユーザープロファイル管理を実現するFSLogixを実装しており、毎回ログイン時に自身が設定した環境で利用できます。また最新技術を搭載したNVv4のリリースなど、技術革新の恩恵を享受できるのはクラウドならではのアドバンテージです」

仮想マシンのスペックを必要に応じて自由に変更できるメリットも大きいと小澤氏は付け加える。「Azure のポータルサイトを数クリックするだけで、即座にスペック変更が行えるため、ユーザー満足度と管理負担軽減の両方を実現できます。また、仮想マシンは従量課金での利用となるため、新規プロジェクトや事業規模の拡大に合わせて増減も柔軟な対応が可能です」

設計部門のテレワーク実現、
BIM/CIMによる建設プロセス改革への道を開く

「CAD導入支援・構築サービスfor Windows Virtual Desktop」導入の意義は、設計部門のテレワーク実現のみならず、BIM/CIMによる建設プロセス改革への道を開くという点がより重要だ。「オンプレミスのVDIで3D CADを活用するためには、VDIサーバーやデータストレージが必要です。またそれらを設置するデータセンターや社内のスペースの確保、消費電力の検討も必要です。本サービスは Azure 基盤を利用することにより、シンプルで柔軟な運用が可能となります。例えば、3D CADの大きなデータを扱うストレージを Azure 上に設置することで、大きく重いデータを WVD で高速にアクセスすることが可能となり、いつでもどこでもBIM/CIMを快適に利用できる上に、3Dモデルを共有した円滑なコラボレーションを実現できます」と長井氏は話し、こう続ける。

「Web APIで接続された様々なクラウドサービスの利用や、Azure 上に蓄積した膨大なデータをAIで分析し、業務プロセス改革やイノベーションの創造に繋げるなど、本サービス利用により設計環境自体が Azure 上に展開されることで、BIM/CIMの有効活用を推し進め、DX時代の新しい設計環境づくりへと繋がっていくと考えています」

「CAD導入支援図・構築サービスfor Windows Virtual Desktop」サービス概念図

同サービスのリリース後、多くの問い合わせが寄せられていると長井氏は話す。「労働力人口が減少していく中で、クラウドベースでBIM/CIMの活用を促進する本サービスに対する期待の大きさを、お客様との会話を通じて日々感じています。初年度は50社への提供を予定しており、今後もお客様の声を反映しながら機能アップを図っていきます」

オンプレミスにおいてもCADを導入しただけでは、成果を上げることはできない。ましてクラウドの場合は様々な分野のノウハウを駆使することで導入効果を最大化できる。「当社はCAD、Azure、ネットワークなど専門分野に特化した技術者が揃っており、各専門家が一体となってお客様に寄り添いながら課題の抽出・解決に導いていきます。またお客様の視点に立った大塚商会オリジナルサポート「たよれーるサービス」でワンストップサービスを実現し、大きな安心と信頼を提供します。建設業のニューノーマルは、設計部門のテレワークによる働き方改革が鍵と言えます。将来の展望を見据えて“今”やるべきことは何か、お客様と一緒に直面する課題を解決しながら成長戦略の実現に貢献したいと考えています」

建設業のDXを推進するエンジンとして期待が高まる「CAD導入支援・構築サービスfor Windows Virtual Desktop」。大塚商会が実践する“ITでオフィスを元気にする”は、そのまま“ITで建設業を元気にする”に繋がる。大塚商会が担う役割は日増しに高まっている。

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