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「Microsoft Office 365」活用(前編) 事例編

教員による「オンラインプロジェクトチーム」で
佐賀商業高等学校が独自のICT教育を推進

知・徳・体の調和のとれた人間性豊かな生徒の育成をめざす佐賀県立佐賀商業高等学校(牛島徹校長)では、コロナ禍での臨時休校中の4月に、新しい時代の学習環境に備えた「オンラインプロジェクトチーム」を立ち上げた。Windows PCと「Microsoft Office 365」を活用したその取り組みは、生徒に新しい学びのスタイルを示している。オンラインプロジェクトチームでOffice 365を活用している先生方にその活用事例を聞いた。

(後編)「Microsoft Office 365」活用 組織マネジメント編はこちらから

「オンラインプロジェクトチーム」が始動
試行錯誤しながら「Office 365」を活用

佐賀県立佐賀商業高校 主幹教諭 中西美香氏 佐賀県立佐賀商業高校 主幹教諭
中西美香

佐賀県立佐賀商業高校 教諭(進路指導主事) 青木千夏氏 佐賀県立佐賀商業高校 教諭(進路指導主事)
森公寿氏

佐賀県立佐賀商業高校 教諭(1年担任) 青木千夏氏 佐賀県立佐賀商業高校 教諭(1年担任)
青木千夏

 佐賀県はICT利活用教育の先進県。県立学校に電子黒板や生徒1人1台学習用のWindows PCを整備しており、佐賀商業高等学校においても、Office製品を活用した学びを推進してきた。しかし、コロナ禍によって、臨時休校に入り、生徒たちの学びの機会が失われようとしていた。

 そこで、校長の牛島徹氏は「オンラインプロジェクトチーム」を立ち上げ、オンライン教育への対応を推進することにした。基本方針はとにかく「やってみる、前に進む」こと。同校主幹教諭の中西美香氏を中心に立ち上がったメンバー7名が手探りの中、試行錯誤をしながらOffice 365を活用した取り組みに挑んだ。

 臨時休校中には早速、Office 365を活用したオンライン授業の職員研修を実施する。1年担任の教諭の青木千夏氏は「研修があったからこそ知識や技術を身につけることができました」と当時を振り返る。Office 365を通じて、教員は生徒と共に成長しながら新たな学びを模索している。

「Office 365」を活用
とにかくやってみる

 臨時休校中から同校で主に利用していたのは「Microsoft Outlook」「Microsoft Teams」「Microsoft Forms」「Microsoft Stream」の4つのアプリケーションだ。

 Outlookは連絡手段として大きな役割を担い、Teamsは、教材のアップロードや課題の提出に活用。Formsではアンケート等を実施、Streamでは授業の復習動画などを作成してきた。

 中西氏は「いろいろ試してみました。とにかくやってみる。やりながら考える。そうすると、課題も見えてきて、先生方の協力とお互いの得意分野を生かすことでOffice 365の様々な活用方法が開けてきました」と話す。

「Outlook」による呼びかけで
生徒の健康管理を実施

Microsoft Outlookの活用例。臨時休校中に『朝の呼びかけ大作戦』と称して、担任の先生から生徒への呼びかけメールを発信。受信した生徒は、その日の体温や朝食の内容などについて返信する Microsoft Outlookの活用例。臨時休校中に『朝の呼びかけ大作戦』と称して、担任の先生から生徒への呼びかけメールを発信。受信した生徒は、その日の体温や朝食の内容などについて返信する

職員研修の様子。教員も試行錯誤しながら学んでいる。8月には全クラス一斉のオンライン試行授業も実現した 職員研修の様子。教員も試行錯誤しながら学んでいる。8月には全クラス一斉のオンライン試行授業も実現した

 Outlookの取り組みとして始まったのが臨時休校中5月8日からの「朝の呼びかけ大作戦」だ。担任はOutlookから生徒たちに健康観察メールを送信。生徒たちは、そのメールに自らの健康状態を返信していく。もちろん、この取り組みがすぐに実現できたわけではない。前日5月7日(木)の登校日を利用して、全校生徒に、メールの返信方法について各クラスで操作確認を行うなどの対応をとった。

佐賀県立佐賀商業高校 教諭(3年担任・進路指導担当) 西村悦子氏 佐賀県立佐賀商業高校 教諭(3年担任・進路指導担当)
西村悦子

佐賀県立佐賀商業高校 指導教諭 松尾真也氏 佐賀県立佐賀商業高校 指導教諭
松尾真也

 オンラインプロジェクトチームメンバーとして3年担任で進路指導担当の教諭の西村悦子氏は、「一学期の間、毎日メールを送信すると、生徒全員から返信がありました。3年生は、進路相談や志望理由書の添削指導などについて、メールを通じた個別のやり取りができました。メールだからこそ言えることがあったのかもしれません」と話す。

「Teams」には全クラスのチーム登録
場所を問わずに情報共有が実現

Microsoft Teamsではクラスと学年ごとにチームを作成。アイコンを学年ごとに統一して教員や生徒の登録を進めた Microsoft Teamsではクラスと学年ごとにチームを作成。アイコンを学年ごとに統一して教員や生徒の登録を進めた

「ビジネスと多文化共生」の授業では、生徒が動画を作成してアップロード。お互いを評価した上で担当教員にはOutlookにメール添付した 「ビジネスと多文化共生」の授業では、生徒が動画を作成してアップロード。お互いを評価した上で担当教員にはOutlookにメール添付した

 Teamsの活用方法としては、新着情報の確認や、課題の解答や試験範囲ファイルなど、場所を問わず自宅でも情報を共有できるようにしている。

 こちらも一朝一夕で現在の活用状況が整ったわけではない。臨時休校中の4月30日に職員研修を開催するとともにTeams上にクラスと学年ごとにチームを作成、5月8日には全クラス(18クラス)と各学年(3学年)のチームを作成した。また、教員も全てのチームに登録し、チーム内には教科・科目のチャネルを作成した。

 グローバルビジネス科の「ビジネスと多文化共生」の授業では、生徒が調べたことを「Microsoft PowerPoint」にまとめ、Teams上で音声を吹き込んだ動画を作成してアップロードした。動画は生徒同士で相互評価する仕組みにして、最終的にはOutlookメールに添付して担当教員に提出する。

 指導教諭の松尾真也氏は「Teamsでは動画なども柔軟に活用できるようになったので、学習の手法が大きく広がりました。これからさらに使いこなしていきたい」と話す。生徒とともに教員にとっても新たな発想を生かせるアプリケーションになっている。

 また、進路指導主事で教諭の森公寿氏は、求人情報をTeamsの投稿で知らせ、希望する生徒だけが進路指導室に来るようにして3密を避けることができたと話す。さらに、企業の人事担当者ともTeams会議で連絡をとったという。

「Forms」で生徒の健康をチェック
「Stream」では教員が自作動画を作成

Microsoft Formsでは、健康観察や各種アンケートを実施。ペーパーレスや業務の効率化に役立てている Microsoft Formsでは、健康観察や各種アンケートを実施。ペーパーレスや業務の効率化に役立てている

Microsoft Streamでは、教員が自分の手元を映した動画を作成している。自宅でも繰り返し視聴できるため、生徒からも「何度も自由に見ることができるので復習につながる」といった声が上がっている。1人1台学習用PCがそれをやりやすくしている Microsoft Streamでは、教員が自分の手元を映した動画やPowerPoint音声吹き込み動画を作成している。生徒からも「何度も自由に見ることができるので復習につながる」といった声が上がっている。1人1台学習用PCが生かされている

 アンケート作成ツールのFormsを活用し、生徒の健康観察や各種アンケート調査を実施している。7月には教員もアンケートを回答する側の体験や「Formsアンケートの作成方法」の研修を行い、保健部では9月から毎朝の健康観察をFormsで開始した。青木氏は「職員研修でタブレットを持ち寄りながら、操作体験だけでなく活用事例を紹介してもらうことで、OutlookやTeamsだけではなく、Office 365そのものの理解も一段と進みました」と話す。

 中西氏は、「Formsを活用することで、印刷やアンケート集計にかかる時間を削減することができ、業務の改善や効率化に役立っています。最近はアンケート結果の画面を教員間で共有する方法をお知らせしました」と話す。

 Streamの活用では、「数学I」の自作動画をアップロード。Teams上でStreamへのリンクを張り、いつでも見られるようにしたという。商業科の教員も簿記など資格試験対策の動画を作成し、生徒自身のペースで進めることに役立てている。また、再生回数も表示されるため、教員の励みにもなるという。

 佐賀商業高等学校のオンラインプロジェクトチームが始動するとともに、広がりを見せる「Office 365」の活用方法。今後の展開について松尾氏は、「TeamsやStreamなどを利用し、学校同士の垣根を越えた取り組みにチャレンジしていきたい。実現すれば、大きな教育効果が期待できるはずです」と語った。