courseDeco

人工知能サミット2019

review

AI活用は、ブームからいよいよ本格普及期へ

日鉄ソリューションズ

三菱UFJ信託銀行
~「信託×AI」でお客様の課題を解決する
“プロ集団”を目指す~

三菱UFJ 信託銀行は、顧客の課題を解決するプロフェッショナル集団となるべく、AIの活用を推進。さらにAIの民主化を進め、社内の誰もが日常的に業務でAIを活用し、課題解決を行うことを目指している。その実現に向け機械学習ソフトウエア「DataRobot」の活用を進める同社を支えるのが、日鉄ソリューションズだ。

「信託×AI」で実現できること

三菱UFJ信託銀行 業務IT企画部 岡田 拓郎 氏

三菱UFJ信託銀行

業務IT企画部

岡田 拓郎

 三菱UFJ信託銀行は、三菱UFJフィナンシャルグループの中核を担う信託銀行である。同社はAI活用を推進するにあたり、AIの適用業務の選定に着手した。信託銀行の業務は、預金や融資などの銀行業務から不動産や資産運用などの信託業務まで極めて幅広い。その中で適用業務を選定するため、判断(分類)と予測というAIの得意領域を踏まえたうえで、マーケティング、コンサルティング業務、マーケット予測、業務自動化の4業務を選定した。

 同社ではこの4業務に対し、コア領域とノンコア領域を定め、コア領域については自社開発で取り組む方針を決定。コア領域の中でも収益、実現性とも高い商品から順にAIを適用することとした。同社の岡田氏は、「このように選択した結果、現在37のAI案件が動いています。その中でもリテールのマーケティングやリスク管理など9案件に集中的にリソースを投入し、戦略的に進めています」と語る。

「信託×AI」で実現できること

三菱UFJ信託銀行が選定したAIの適用業務

画像を拡大する

AI導入に潜む4つの落とし穴と解決のポイント

 同社がここまでたどり着くには、4つの落とし穴があった。

 1つ目は「人」だ。「当初はAIに対する過度の期待がありました」と岡田氏。そこで、全社員が閲覧できる「AIポータルサイト」を設け、社内AI事例集やデータライブラリを整備。リテラシーの底上げを図った。「当初の“何でもAIに”といった過度の期待が薄れ、現在は事業の課題に対し、AIでこういうことができるのでは、といった具体的な相談がIT 部門に寄せられるようになりました」(岡田氏)。

 2つ目は「モノ」である。いざ分析しようと思っても環境がないという落とし穴だ。銀行はセキュリティが強固なため、分析ツールのダウンロードやデータ借用手続きといった、分析に必須のプロセスも簡単にはできない。そこで、全員が思い立ったときにいつでもデータが分析できるデータサイエンスプラットフォームを構築することとし、AWS上にデータ分析基盤を構築。プログラミングの知識がなくてもAIモデルを自動作成できる「DataRobot」を用意し、「AIの民主化」を目指すこととした。

 3つ目が「カネ」である。企画書ができあがった後、いざ稟議になったら、最後に予算が下りないといったケースだ。そこで、本部で予算を負担する枠組みを新設。PoC※1までは本部が投資負担をし、効果がある程度見えたうえで本格展開から事業部が投資負担をするという仕組みをつくったことにより、「AI案件にチャレンジしたい」という声が全社的に広がった。

 最後の落とし穴が「情報」である。大企業にありがちだが、システムがサイロ化し主キーがバラバラ、名寄せも困難という状況があった。そこで、株式会社シマント社と協業し、1年をかけて14のキーで10万マスタ分を横断的に名寄せし、統合名寄せDBを作成した。「従来、データ整理に何カ月もかかっていましたが、それを大幅に短縮できました」(岡田氏)。

 以上4つの落とし穴以外の問題点として、岡田氏は「PoC地獄」を挙げる。そこから抜け出すためのポイントについて岡田氏は、「ビジネスと技術のコア領域を重ねることが重要です」と語る。さらに、儲かるAIにするためには、ただの技術適用に終わらせず、業務プロセスを抜本的に見直すことが重要だ。例えば、コールセンターのテレアポ業務でAIを活用する場合、ありがちなのは「着電率を40%から50%に上げ人件費を削減できた」というような経費削減をするパターン。しかしこれだけでは不十分と、岡田氏は次のように語る。「営業店にもあるテレアポ業務をコールセンターに集約し、全社のテレアポ業務を最適化することで、営業店の営業力強化につなげることを考える」。このように、一部の改善ではなく、全社のデジタルトランスフォーメーションにつなげることが重要だ。

※1:Proof of Concept:概念検証の略

AI民主化に向けAI専門のCoE組織を設置

 最後に岡田氏は、DataRobotの活用による「AIの民主化」への取り組みを紹介した。少量多品種のサービスを提供する信託銀行は、社員の専門性が高い一方、本部集約型には限界がある。「社員の専門性を汎用化し、AIに移植する仕組みが必要と考え、ユーザー起点で課題解決ができるAIプラットフォームの構築を目指しました。そのツールとして複数製品を比較した結果、DataRobotを選択しました」と岡田氏。

 DataRobotはノンプログラミングで利用できるツールではあるが、課題の設定や必要データの特定、精度向上の考察(仮説検証の繰り返し)などのスキルが必要なため、誰もが最初から使いこなせるわけではない。そこで、代理店である日鉄ソリューションズの担当者4人にほぼ常駐してもらい、サポートを仰いだ。パートナーとして同社を選定した理由を岡田氏は、「AI案件は一見華やかだと勘違いされがちだが、実際は泥臭いデータ準備等の作業が9割以上を占める。その泥臭い作業を一緒に取り組んでもらえるかを一番に、選定しました」と語る。

 DataRobotは2019年1月から本格スタートし、10月には4案件をリリース。現在さらに7部署10案件が進行中だ。「部署の担当者によってスキルがバラバラで、2日で使いこなし大いに活用できている部署もあれば、半年たっても自走できていない部署もある。しかし、そのような部署でもビジネス利用ができるまでになってきた」と岡田氏は語る。

 活用が広がった結果、2019年10月にCoE※2組織を立ち上げた。当初の岡田氏一人を日鉄ソリューションズがサポートする体制から、新たにシステム子会社も参画。「三菱UFJトラストシステムには、先端IT 技術を研究、開発するITイノベーション推進部があり、AI専門チームも存在する。データサイエンティストが在籍しているため、ノウハウ共有は順調に進んでいる」(岡田氏)。さらに2020年度は、事業部門に旗振り役を設置する予定。「よりビジネスに近い課題を、DataRobotで解決することを目指しています」(岡田氏)。

 CoE組織として大切にしていることとして岡田氏は、「AI利用が目的にならないようビジネスインパクトなどのKPI管理を徹底することと、得意分野が異なる人たちが相互補完をしながらチームを作ること」と締めくくった。

※2:Center of Excellenceの略で「組織を横断する部署、役割」という意味

CoE組織

三菱UFJトラストシステムが参画し、2019年10月にCoE組織を立ち上げ、AIの民主化を進めている

画像を拡大する

お問い合わせ先

お問い合わせ先

日鉄ソリューションズ株式会社

お問い合わせURL

URL ● https://www.itis.nssol.nipponsteel.com/

お問い合わせはこちら

三菱UFJ信託銀行株式会社

お問い合わせURL

URL ● https://www.tr.mufg.jp/

お問い合わせはこちら

このページのトップに戻る