企業だけでなく、自治体でも急速に普及が進むRPA。ニーズの高まりを受け、自治体ITシステム満足度調査でも、今回から「RPAソフト/サービス」部門が設けられた。最初のNo.1となったのがNTTデータだ。コロナ禍に際し、RPAソリューション「WinActor」とAI-OCR「NaNaTsu」を無償提供し、コロナ禍での給付金の支給業務をサポートしたことでも知られる同社は、誰でも現場でRPAやAIを活用し、業務を自動化できる新プラットフォームの提供を開始。新規IT導入のハードルが高いといった自治体特有の事情まで考慮されており、スマート自治体化のカギを握ると、職員の期待を集めている。
「WinActor(ウィンアクター)」は、NTT研究所発の純国産RPAソリューションであり、国内市場シェア1位を誇る。既に多くの自治体に導入されているが、今年の春には、全国の自治体職員を支援する社会貢献面でも話題となった。
「新型コロナウイルスの感染が拡大し、自治体の職員様も登庁が難しくなりつつありました。従来のように業務を行うことが困難となる中、何かお力になれないか。そう考え、業務におけるパソコン操作を自動化するWinActorと、紙の書類の入力を自動化するNaNaTsu AI-OCRの無償提供を決めました」とNTTデータの中川 拓也氏は語る。
特に威力を発揮したのが「特別定額給付金」にまつわる業務だ。給付が決定された直後からNTTデータは、WinActorとNaNaTsu AI-OCRというツールだけでなく、支給業務を自動化するWinActorシナリオや、OCR処理に適したレイアウトに再設計した給付金申請書サンプル、AI-OCR帳票定義ファイルなどをセットで提供した。
これにより、自治体は一連の給付金支給業務を自動化することができ、約350の自治体で大きな自動化効果をあげた。
「給付金の支給という新たな業務が突然発生し、多くの自治体が対応に苦慮している状況でしたが、本サービスを利用された自治体からは非常にスムーズに対応できたとのお声をいただきました。一般的に申請から入金までのリードタイムは3週間と想定されていましたが、サービスを利用した自治体では『4日間で入金できるようになった』や、『職員20名でシフトを組んでいたが5名で済んだ』といった効果がありました。また住民から職員に、迅速な支給に対する感謝の電話があったという、うれしいお話も聞きました」と同社の森長慎司氏は言う。
コロナ禍においてNTTデータが迅速な対応を行なえたのは、同社の社会貢献に対する意識の高さはもちろん、以前から自治体に最適なITサービスを提供し、職員の働き方改革に貢献したいと考え、準備をしてきたからでもある。
多様な事務を抱える自治体は、RPAとの親和性が高いといわれる領域の1つだが、自治体特有の事情もある。
「まず自治体は予算や入札などのプロセスに時間がかかるため、新しいITを調達するとなると数年がかりになってしまいます。都度ITを調達せずとも、各現場で業務を手軽に自動化できるRPAやAI-OCRのようなサービスが求められていました。加えて、自治体はマイナンバーなどの住民情報を扱うことから高度なセキュリティ対策まで求められます。そのため、職員様の働き方改革に貢献する新サービスは、自治体ネットワーク『LGWAN』専用のクラウドセンターを保有するNTTデータの社会的使命だと考えていました」と中川氏は話す。
こうしてNTT データは、RPAやAI-OCRといったIT技術が電話をかけるように簡単に利用できる新サービスを、「スマート自治体プラットフォーム NaNaTsu(ななつ)」としてリリースした。NaNaTsuでは、RPAツールとAI-OCR、RPA用の自動化シナリオ、OCR用の帳票定義、管理統制サービスの5点すべてが揃い、LGWAN上でサービス提供されている。
これにより自治体は、RPAやOCR導入のためにサーバーを構築したり、業務に合わせてRPAのシナリオや帳票定義を0から作り上げたりする必要なく、様々な自治体特有の業務を自動化できるようになった。
「10月1日から、ふるさと納税など20業務のサンプルシナリオを提供し、年度内に100業務まで増やす計画です。確かに、同じふるさと納税業務とはいっても自治体ごとに微妙な手順の違いがありますから、そこが従来型ITにおける共同利用の壁となってきました。しかし、現場で簡単に修正できるWinActorであれば、自治体ごとの違いを吸収し、スムーズに現場適応できると考えています」(森長氏)
NTTデータが、コロナ給付金の支給業務用シナリオと申請書用のOCR帳票定義を無償提供しただけで、現場の職員が自らWinActorやNaNaTsu AI-OCRを活用し、支給業務の自動化が進んだ。自治体職員からは、「サンプルがあったことで難なく自分で自動化できた」との声も届いており、NTTデータは新プラットフォーム構想の有効性に自信を深めている。
無償期間にRPAやOCRを利用した自治体の中には、体感した自動化効果に驚き、感動し、臨時予算を獲得して本格導入を開始した自治体も多いという。
総務省の研究報告などでも示されているように、これからの自治体はスマート化を避けて通ることはできない。NTTデータは、自治体職員の「七つ道具」にしたいとの意味を込めた「NaNaTsu」により、自治体職員に驚きと感動を提供し、スマート自治体の実現に貢献していく構えだ。