クラウド録画サービスの覇者であるSafie(以下セーフィー)。カメラが“社会の目”として存在感を増す中で、映像由来のデータドリブンを実現する同社のソリューションに注目が集まる。その可能性に着目し、NTTドコモ・ベンチャーズ(以下NDV)は出資を実施。NTT東日本との協業促進により、価値ある未来を築こうとしている。連携強化の先に見えてくる世界観を、セーフィー、NDV、NTT東日本の担当者が語った。

ビジョンは「映像から未来をつくる」

 クラウド録画サービスを手がけるセーフィー。2014年に設立した同社は、リアル社会のさまざまな場所に実装されたカメラを“社会の目”と捉える。会社のビジョンである「映像から未来をつくる」には、カメラを通して得られた情報を有効活用し、人びとの生活を豊かにしたいとの思いを込めている。

 セーフィーのサービスはハードウエアを問わないソフトウエアプラットフォームだ。カメラ内のソフトウエアモジュールを開発し、各社のカメラに提供。撮影した映像データをセキュアな環境でクラウドに蓄積する仕組みを構築した。これによりクラウド録画サービス市場でシェアNo.1の地位(※)を築いた。
(※)テクノ・システム・リサーチ社調べ「ネットワークカメラのクラウド録画サービス市場調査」より

 画質面ではHD画質/最大30fpsの鮮明でなめらかな映像を保証する。また、録画データは最新の暗号化技術によって保護。通信経路も暗号化されており、高いセキュリティを誇る。使いやすさにも注力しており、クラウドに録画された映像はPC、タブレット、スマホを問わず誰でも管理画面で直感的に確認・共有が可能だ。しかも、用途に応じて月額1,200円から運用できるメニューをそろえており、低コストも大きな特徴となっている。

セーフィー社内にあるモニター。管理画面のイメージ

 導入先は建設、小売、飲食、医療、不動産、流通、行政など多岐にわたるが、とりわけ“現場”での活用に強みを持つ。従来の防犯カメラは事務所や店舗などに設置した機器に直接録画データを保存する形式が主流であったが、ローカルにデータを保存する場合、映像データの管理や確認、バックアップなどに煩雑な手間がかかり、結果的に非効率な作業が発生していた。

 また現場のデータは録画し続けること、そして過去のデータを確認することが重要だが、セーフィーであればストレージの容量を気にせず、かつスマホアプリから簡単に操作・確認できるため、大幅な業務効率化につながる。2020年7月に発売したSIM内蔵ウエアラブルカメラの「Safie Pocket2(セーフィーポケット ツー)」はカメラを持ち運びながら映像を送信・記録することができるため、クラウド録画に加えて現場業務では難しかったリモートでの作業をサポートする。非対面・非接触がスタンダードとなるニューノーマル時代に向けた製品と言えるだろう。

ウエアラブルカメラのSafie Pocket2。現場で持ち運びながらオフィスとライブ映像通話ができる

 セーフィーでは、防犯・監視・業務支援といった実務的な目的だけではなく、蓄積したデータをフル活用してデータドリブンのサービスを展開しようと考えている。その未来地図に共鳴したNDVでは2019年11月、同社に出資を行った。そして出資を機に、2018年から進めていたNTT東日本との連携を強化。NTTグループのアセットとセーフィーの技術力をかけ合わせ、「映像プラットフォームの社会インフラ化」をめざす。

 「我々のビジネスにとってNTTグループは重要な存在」と語るのは、セーフィー 代表取締役 佐渡島隆平氏。今回のインタビューでは佐渡島氏とNDV、NTT東日本の担当者が一堂に会し、映像をトリガーとしたそれぞれが思い描く世界観について存分に話してもらった。

かメラは社会の目になる

――最初にセーフィーのサービス内容について教えていただけますか。

佐渡島氏 防犯カメラや監視カメラを対象としたクラウド録画サービスを提供しています。しかし、我々は単に映像データをクラウド化したいと考えたわけではありません。そもそもカメラをより賢くしていくことからチャレンジを始めたのです。これだけスマートフォンが普及し、一般の人たちにとってカメラとインターネットの接続が当たり前になっているのに、ハードウエアの世界はなかなか進化しないのが現実です。メーカーにとって、ソフトウエアやネットワーク部分は自分たちの領域外という意識が強く、インターネットやクラウドの本質を突いた使いやすいプロダクトがなかなか生まれませんでした。

 そこでソフトウエアモジュールに着目しました。ソフトウエアモジュールを独自に開発してカメラメーカーに配布し、セキュアな環境でデータをクラウドに蓄積する仕組みを考えたのです。組み込みソフト、OSを革新してこれまでの常識を変えたことがポイントです。

セーフィー 代表取締役 佐渡島隆平氏

――なぜ変えようと思ったのですか。

佐渡島氏 1つ目はセキュリティの問題です。IoTにおけるセキュリティの脆弱性は以前から変わっておらず、悪意のある人間にかかれば、IP監視カメラは公共でも家でも覗かれてしまいます。これを放置していたらネットワークカメラなど怖くて使えません。

 2つ目は、お客様が簡単に利用できるようにしたかったということ。ネットワークの設定を考えなくても、設置した瞬間にすべてが暗号化されて簡単に接続できる。そこを担保しない限り絶対にヒットしないと考え、組み込みソフトから仕組みを変えたわけです。現在、NTT東日本と提携していますが、116に電話して依頼すれば、それだけでセーフィー(NTT東日本のギガらくカメラ)が利用できます。

 今までのネットワークカメラはカメラにアクセスしていましたが、セーフィーではカメラ側には映像を記録しない仕組みを構築しました。撮った映像は暗号化してクラウドに送り、すべての制御をクラウドで実施する。これらを徹底的に考え抜いて作ったものなので、従来とは技術面、サービス面でも異なるのです。

――導入先はどんなところが多いのでしょう?

佐渡島氏 飲食、小売、建設、不動産、金融などです。NTT都市開発もシェアオフィスで利用しています。需要の根本にあるのは、省人化の流れ。スマホでオフィスから遠隔管理できる点が好評です。これから強化したいのはインフラや行政。最近では災害監視のニーズが非常に高まっています。例えば緊急メールで水位が35センチ上昇したと言われてもピンと来ませんが、市役所のホームページのライブカメラを見ればひと目でわかります。目で見ればすぐに理解できる、その点も大きな強みです。

――NDVが出資を決めた理由は?

舞野氏 出資したのは昨年ですがファーストコンタクトは意外と古く、2017年頃に遡ります。セーフィーのソリューションは防犯カメラというキーワードでくくられがちですが、デジタルの本質的な価値は「無人」でいろんなプロセスが進められることにあると思っていて、セーフィーのソリューションはまさに人の目の役割を担ってくれるものです。例えば今日のような暑い夏の炎天下で交通量調査を行うとすれば、アルバイトを雇って、熱中症のリスクもある中で、作業に専念しなければならない。それをデジタルに任せればコストも安く、身体的なリスクもカバーできる。これは一例ですが、セーフィーのソリューションを使えば幅広い分野でデジタルによる恩恵が受けられる。そこに魅力を感じてアプローチしたのが最初です。

NTTドコモ・ベンチャーズ ディレクター 舞野貴之氏

 カメラのシステムはオンプレミス型のものが多いですが、システム内の物理的なストレージに映像が蓄積されると、いろいろな外部サービスとの連携を行うのに面倒で、二次的なデータ活用が難しく利用用途の広がりに限界がありました。本来ならデジタルだからこそ、いろいろな応用、活用法があるべきなのに、なかなかその領域まで行っている企業は少ないなと思いました。

 こういう状況だったので、NDVではセーフィーの技術力にNTTグループの力を融合して何とかできないかと考えました。物理的なストレージに縛られず、通信をはじめとする強力なアセットを組み合わせることで付加価値を創出できるはずだと。グループ内で適切な部署を探したところ、ちょうどNTT東日本が協業を計画していたこともあり、いずれ訪れるデータドリブン社会の実現に向けてもっと応援したいと思い、昨年の出資と協業のマッチングに踏み切ったのです。

橋原氏 2018年からNTT東日本と業務提携したことでセーフィーの販売数が飛躍的に伸びました。ここまでは狙い通りで、カメラ台数を増やしていく観点ではかなり順調に進んでいると思います。地盤を整備し、データドリブンの効果を発揮するための第一段階と言えるでしょう。これからはNTT東日本に限らず、NTTドコモやほかのNTTグループを含めて、どんなデータ活用ができるのかをセーフィーとともに考えていくフェーズになります。

NTTドコモ・ベンチャーズ ディレクター 橋原佳孝氏

 プロダクトの良さだけでは、出資には至りません。データ活用の先には新たなビジネスが待っている。そこまでのデータドリブンの世界観を共有できているからこそ、この3社の結びつきは強固なのだと思います。

――NTT東日本はどこに惹かれたのですか。

白神氏 NTT東日本のテーマの1つに、地域課題の解決があります。とりわけ農業や水産業などの第一産業は人手不足が深刻で、IoTによる効率化が急務となっています。我々も社内にサーバーを設置して監視カメラの仕組みを構築するなどのトライを重ねてきましたが、柔軟なデータ活用ができずリエンジニアリングの必要性に迫られていました。

NTT東日本 ビジネス開発本部 第三部門 IoTサービス推進担当 担当課長 白神大志氏

 こうした事情もあり、クラウドカメラのサービス提供者を探す中でセーフィーを知ったのですが、存在感は抜群でした。パートナーとして組みたいと思ったのは、プロダクトの完成度はもちろんのこと、佐渡島さんやスタッフが自ら倉庫や建設現場に足を運び、現場の声を聞いてサービスに反映している姿勢です。

 もう1つは、ベンチャーらしくないベンチャーという点。佐渡島さんは、非常にスピーディでいながらNTT東日本の企業文化を理解し、セキュリティも徹底的に考え抜いてくれました。その意味でも組みやすさ、やりやすさがあります。

――これまでの協業の内容と今後について教えてください。

白神氏 当初は防犯カメラの用途が多かったのですが、徐々にアプリ部分での連携を強めています。セーフィーにAPIを開発していただき、我々が仲介してほかのAIサービスと接続することで新たなサービスとして展開します。ベンチャー同士のまとめ役として円滑につなぐことで、お客様に役立つソリューション提供を早期に実現しているのです。

 これから注力したいのは、混雑の可視化などの映像解析サービスです。Withコロナの今の状況だと、公園や図書館、病院などの混雑具合がわからないので子どもを連れて行くのにも躊躇しますが、セーフィーをベースとした映像解析サービスであれば混雑状況がリアルタイムですぐにわかりますから。現場からも、「属性分析や顔認証などに使える映像解析サービスはないか」といった相談が最近は増えてきています。ニーズに対応できる解決策は用意しておきたいですね。

――佐渡島さんに聞きます。改めてNTTグループと組んでみての気づきは?

佐渡島氏 日本ならではのデータドリブン社会を作るにあたって、NTTグループが牽引しているこれだけの豊富な有線網、無線網のアセットは強力な武器となります。つまり、データを収集するアプリが整えばあとはつなぐだけなんです。だからこそNTTグループと協業することで、データドリブンの新しい幕が開くと考えました。

 ただ、大手企業と協業を重ねていく中で、自分たちができないことがあることを再認識したのも事実です。やはり餅は餅屋でやるべき。カメラはカメラメーカーが作るべきだし、ネットワークはNTTにはかなわない。そうすれば、三方良しになります。

 一方でセーフィーには名だたるカメラメーカーでの業務経験を持つメンバーが集まっています。冷静に考えると、品川から新横浜にかけては画像処理産業のシリコンバレーなんです。ソニー、キヤノン、ニコン、リコーがあるのですから。それら産業集積地の人たちと、我々のようなデータドリブンの人たち、通信を司るNTTグループの人たちが組めば、きっと世界に羽ばたける。パートナーを含めてのチームであり、ともに大きな夢を叶える――それが私の思いです。

オプションのオートタイムラプス機能。ビルが建設される様子を定点カメラで収めた

――未来への期待も含めて最後に一言お願いします。

白神氏 カメラは今後、社会の目になります。地方に行けば行くほどカメラが代替する業務が増えてきますし、“見える”価値だけでもかなり大きなものです。そこにアプリを加えることで、さらに実現できる業務が増えてきます。まず現段階は台数を増やして、見える価値だけで業務効率化をしていく。並行して、APIを連携させながら画像ベンチャーやAIサービスと組んでいく。貢献度の高いソリューション群を増やすことがNTT東日本の役割だと思います。

舞野氏 多くの人にとって「できること」が増えれば、社会にとっても有益です。例えば保育園にカメラを置いて親がリモートで見守りできるとなれば、安心を提供するという付加価値に対して毎月の保育園料を少し多めに払うケースも出てくるかもしれません。保育園の収入が増えれば保育士の待遇が良くなったり、業務の負担が減ったりと好循環が生まれることにつながる。今までクリアできていない課題をテクノロジーが解決する、そして社会の新しい仕組みの一つになる。セーフィーには、そんなソリューションになることを期待しています。

橋原氏 映像を軸にした、セーフィーの「世界観の広がり」に期待しています。これまで基本的にカメラは固定設置でしたが、新製品の「Safie Pocket2」ではこの概念が拡張され、移動しながら映像を記録・配信することができるようになりました。これまで難しかったフィジカルの領域でもリモートや遠隔作業が実現できるようになり、さらに省人化の可能性が広がりました。そこで蓄積されたデータを活用すれば、ニューノーマルの時代に求められる新たなソリューションも出てくるのではないでしょうか。

佐渡島氏 我々のビジョンは「映像から未来をつくる」ということ。仮に家の玄関でスマホから駅の状況がわかれば、「混んでるから少し遅らせよう」と考えるかもしれない。このように未来の社会は、どこでも見られる映像が人の意思決定を変えていくのです。つまり家から街までがすべてデータ化すると、見る、聞く、記憶する、しゃべる、考える×クラウドコンピューティングが可能になります。それをアプリに変えていくことが我々のミッション。実現するために、NTTグループとはお互いにプロ意識をぶつけ合っていきたい。そのほうが必ず良い結果が生まれますから。

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