「外」と「内」、「自然」と「人工」という命題はおそらく、建築の永遠のテーマだと思います。最優秀賞の作品は、そうしたテーマに正面から向き合った作品です。敷地全体は森と見紛うほどの豊かな緑で覆われていて、内と外が交互に関係し合い、空間の質を決定しています。外から半外、半中、中と空間をグラデーショナルに関係づけることで、連続的かつ曖昧に敷地全体をデザインしています。端正さより荒々しさを評価しようとする有機的な建築の一つの解として高く評価できるものです。
今回、限られた時間の中で審査することの難しさを改めて思い知らされました。それほど、応募作品は押し並べてデザイン完成度が高く、密度の濃い作品群でした。審査を通して、改めて木質空間の魅力や表現、技術と環境のこと、建築のあり方などを考える機会になっています。
「大地の家」は、住宅部門の審査会場に並ぶ174作品の中で異彩を放っていました。初見では、生きた樹木に梁を架けたウッディハウスに見紛えました。作品数が多いため、審査では一つのところに長く立ち止まれません。その場を離れても、なぜかゴムヒモで繋がれたように引き戻され、何度も手に取るうちに、バナキュラーな建築に見えた住宅は、素材は野太く荒削りでも、ディテールが繊細で、造園の空間構成を取り入れた洗練された設計だと気づかされました。
応募作品には、設計者が取り組む、時代の理念や課題が映し出されます。それは地球環境、持続可能性、災害対策、高齢化社会、新素材、都市の木質化、耐火性能など様々です。しかしマトリクスに整理してみると、木造の可能性を秘めた空白のエリアがあるはずです。木造はまだまだ面白くなると確信した審査でした。
どこからどこまでが外か内か、建具やガラスといった仕切りは?、写真や図面から正確に読み取ることは難しいものです。住宅は暮らし・夢・木質建築空間デザインを兼ね備えているもので、最優秀賞の「大地の家」は、現地で風の流れや雨・防虫対策、温熱環境なども体験し、全容を把握したいと思いました。しかしながら、自然との共生という理念に始まり、心地よさへの探求には建築が向かうべき方向や、暮らしを豊かにするであろう空間が見え、期待が持てます。また、思想を具現化するに相応しい材料やテクスチュアの選択により一層の効果を発揮しました。
建築家には、新型コロナウイルス感染症のような想定できない状況への対応力、潜在的な問題意識による先見性が問われていると言えます。今回の受賞作品には、そうしたことに答えているものが多く見られました。