第7回 木質建築空間デザインコンテスト審査結果発表

住宅部門賞

「hara house/中之島の家」(新潟県長岡市)
東海林 健東海林健建築設計事務所
「TUNNEL」(東京都練馬区)
鈴木 岳彦鈴木岳彦建築設計事務所
「VILLA NAGANO」(長野県北佐久郡)
宇野 求+池村 圭造UA

審査委員講評

「hara house/中之島の家」
一軒の住宅にたくさんのストーリーが込められ、「不足と余白のある弱い建築」が故に人も空間も繋がり、補完し合う関係や必要が生まれる、とのメッセージは秀逸です。そうした論法もさることながら、今、新型コロナで大変重要視されている、人や地域との関係が見事に構築されてもいるのです。

まだそうしたコトが具体的になっていないという点で、やや説得力にかけてしまったのが残念です。

しかし雪国として、農村としての必要な機能や諸室はあたり前に用意され、木構造へのチャレンジが空間に魅力を与えてもいます。住環境としての機能と木質の心地よい空間が無理なく両立しており、最優秀賞とは僅差でありました。

建て主の経営する洋食店の増築ということで、その関係で行われたボリュームの調整については、この計画の中で大きな役割を占めており、図などでもう少しわかりやすい表現がなされるとよかったと思います。

「TUNNEL」
4畳半程度の床面積、高さは4m位でしょうか。建築を学び始めて最初に出題されるような空間計画です。内部構成は曲面を駆使して、光と影・高低・開放と閉鎖など、作者も語っているように様々な対の概念を使い、クライアントの望む空間を作り上げています。誰でもこんな計画をしてみたいと思いつつ、現実にまみれて過ごしがちですが、たった一度のチャンスを見逃さず、挑戦したことにエールを送ります。

内と外、木質へのこだわりの違いもその表現に十分活かされています。木の体内というのがあるかどうかはわかりませんが、シンプルな仕上げ方に好感をもちました。

「VILLA NAGANO」
森の大地に寄り添うように低く構え、外来者を屋根と壁で受け、内部は下に池を見下ろしつつ天に向かい、一挙に開き、デッキから庭への行動を導いています。

夕景を庭から眺めることは少ないと思いますが、庇の下のデッキからの照明と室内の照明がリズミカルに並び美しい。木仕上げの各所の選択もほどよく抑制の利いた空間にしています。

平倉 直子 氏

「hara house/中之島の家」
「不足と余白のある建築」と題された農業を営む家族の住宅です。農村部では納屋などの建築も含めて、あるまとまりのある群として存在していますが、その中心になるこの建物は非常に合理的なAフレームの構造を採用した象徴的な存在になっています。三角柱の断面の裾を少し持ち上げた最小限の操作を加え、その開かれた開口部は近隣の人々を招き入れる居場所になっています。できれば群景の写真があればよかったです。

「TUNNEL」
「トンネル」と題された離れです。小さな空間ですが、贅沢な空間ボリュームを有しています。内部は壁、天井に全面、榀合板が張られ、瑞々しさのある保護塗装を施すことで木塊を刳り抜いた彫刻の中に居て、木で包まれた優しい空間となっています。曲線を用い、端部を開口部にすることで小さな空間がチューブ状の外に誘導する連続感を獲得できています。言い換えれば、外に開かれた茶室のような建築です。

「VILLA NAGANO」
自然豊かな環境を損なわないように、地形を緻密に読んで池を取り囲むように配置されています。おそらく既存の樹木も最小限の伐採に努めたであろうことが容易に想像できます。緩やかな地形の勾配はスロープで繋げられ建築空間に反映されて、緩勾配の屋根が建築全体を覆っています。建物が建つことで地形や環境が際立って見えてくる建築です。

石田 敏明 氏

「hara house/中之島の家」
1818mmのグリッドに機能をコンパクトに納めた、小気味よい建築です。三角形の反復で構成するテントのような構造は、力学的にどこにも破綻がなく、強く、美しいものです。工法にも工夫があり、部材は女性や子供でも手で運べる120mmの角材で、重機を使わずに建て方ができます。住宅単体の設計にとどまらず、農村集落のマネージメントまで見据えた、小さいけれど大きな希望を繋ぐ住宅です。

「TUNNEL」
底面積3坪の直方体に、シナ合板を曲げて挿入するだけで、これほど豊かな空間を作る建築家の発想力に感服しました。シンプルでミニマルな空間を引き立たせているのは、木という物質本来の持ち味を活かす塗装です。内部は柔らかな白木の素地を活かす保護塗料、外部は公園に茂る黒々とした樹木の肌のような黒です。樹木の胎内にもぐり込んで、羊水のような優しい光に包まれる、胎内回帰を思わせる木質空間です。

「VILLA NAGANO」
敷地の形状とロケーションを活かした建築計画は、建物内を林の中を散策するように移動できる身体感覚を楽しめるように考え抜かれています。建物内部には、佇み、腰を下ろす所作によって窓から見える風景が変化する、不均質な木質空間が広がっています。景観に馴染むように低く抑えられた屋根の勾配は驚くほど浅く、垂木を無造作に支えるように見える柱のサイズとディテールは注意深くデザインされています。

桝田 洋子 氏
審査委員長
平倉 直子 氏 建築家 平倉直子建築設計事務所 代表
■1950年 東京都生まれ ■1973年 日本女子大学 家政学部住居学科卒業 ■1978年 平倉直子建築設計事務所設立 ■1989以降 日本女子大学、関東学院大学、東京大学新領域創成科学研究科など非常勤講師を務める
審査委員
石田 敏明 氏 建築家 神奈川大学 教授
■1950年 広島県生まれ ■1973年 広島工業大学 建築学科卒業 ■1973年 伊東豊雄建築設計事務所入社 ■1982年 石田敏明建築設計事務所設立 ■1997年〜2016年 前橋工科大学 教授、同大学名誉教授 ■現在 神奈川大学 工学部 建築学科 教授
桝田 洋子 氏 構造エンジニア 桃李舍 代表
■1959年 大阪府生まれ ■1984年 京都工芸繊維大学 工芸学部 住環境学科卒業 ■1984年 川崎建築構造研究所入社 ■1993年 同大学大学院 工芸科学研究科修士課程修了 ■1989年 桃李舍設立
渡部 吉彦 大阪ガスケミカル株式会社 代表取締役社長
■1962年 大阪府生まれ ■1986年 東京大学法学部卒業 ■1986年 大阪ガス株式会社 入社 ■2008年 関連事業部関連事業チームマネジャー ■2011年 大阪ガスケミカル株式会社 執行役員 ■2019年 大阪ガスケミカル株式会社 代表取締役社長、大阪ガス株式会社 執行役員
応募登録総数 578件
作品提出(計 442件)
● 住宅部門 174件  
● 一般建築部門 149件
● テーマ部門 119件
インテリア 43件
リノベーション/コンバージョン 76件
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