ウェアラブル血圧計で目指す脳・心血管疾患ゼロ ~パーソナライズされた血圧管理~(オムロン ヘルスケア)

日経クロスヘルスEXPO 2020レビュー 日時 2020年10月14日(水)~16日(金)オンラインにて開催

オムロン ヘルスケア株式会社 国内事業本部 事業戦略部 商品企画課 課長 渡邊 琢哉 氏

健康医療機器の開発を手掛けるオムロンヘルスケアは、「脳・心血管疾患の発症(イベント)をゼロに」というビジョンを掲げ、2019年12月、医療機器として認証を受けた腕時計型のウェアラブル血圧計『HeartGuide®』を発売。いつでも、どこでも、手軽に血圧を測定し、日中の血圧変動の傾向を詳しく把握できるので、個人に合わせた血圧管理を可能とする。渡邊氏は、実際にHeartGuide®の使用実績から明らかになった日中の血圧変動の意義について講演した。

血圧変動を細かく把握し脳・心血管疾患を予防

 脳・心血管疾患の発症数は世界で年間1,790万人といわれ、その原因の1つが高血圧だ。同社は、血圧を適正にコントロールすることで、世界で脳卒中や心不全などのイベントで苦しむ人をなくし、健康ですこやかな生活に貢献することを目指している。

 近年の日本人の死因2位が心疾患、4位が脳血管疾患であり、両疾患で非常に多くの人が亡くなっている。脳や心臓のイベントを起こすと、一命を取り留めても後遺症が残り、寝たきりや介護が必要になったりというケースも3割近い。発症予防には血圧管理が極めて重要である。

 血圧とは、心臓から送り出された血液により血管にかかる圧力を指す。心臓は1日に約10万回拍動しており、1拍ごとに血圧は常に変動している。血圧は、食事、ストレス、飲酒、喫煙、運動など様々な要因で変動する。血圧測定の機会を増やして、個人で異なる血圧変動の傾向を把握することが、脳・心血管疾患イベントの発症リスク低減につながる。しかし、従来の血圧計では日中の自由行動下において手軽に血圧を測定することは難しかった。

個人ごとに異なる血圧変動の傾向を把握

今までにない医療認証を受けた腕時計型血圧計

 「常に装着し、いつでも、どこでも、測定できる」ことを目指して開発された『HeartGuide®』は、腕時計型で肌身離さず装着して手軽に血圧を測定できる。

 その特徴は、大きく5つある。まず、ウェアラブル血圧計として医療機器である血圧計の認証を取得している。日本だけでなく、米食品医薬品局(FDA)の承認も得た。次に、実際に治療でも使える精度を担保している。血圧の測定方式は、医療現場でも使われているオシロメトリック法を採用し、上腕式血圧計との高い相関性が認められている。3点目は、データをスマートフォンの専用アプリで確認できることで、毎日の最高(収縮期)と最低(拡張期)の血圧の変動がグラフで表示される。

 4点目が、睡眠も測定できることで、睡眠開始から終了までの時間だけでなく、寝返りによる体動も検知して睡眠レベルを測定する。さらに5点目として、活動量も測定できる。歩数はもちろん、活動カロリーや歩行距離なども自動で測定する。渡邊氏は、「ウェアラブルタイプの血圧計として今までにない精度と品質の商品ができた」と胸を張る。

製品概要

 測定精度を保ちながらウェアラブル化を実現するため、技術革新を重ねた。カフ(血管圧迫用の空気袋)は幅25mmと、従来製品の2分の1以下である。また、本体容積も従来製品に比べて65%と小型化した。空気を送り込む圧力センサーなどの主要部品は独自に開発し、ウェアラブル化を実現した。さらに、高さガイド機能を搭載しており、正確に血圧を測定するために重要となる、心臓の高さでの測定が簡単にできる。測定精度を担保するためには重要な機能だ。

測定回数の増加と継続性向上で薬効確認も

 先行して発売された米国におけるユーザー調査では、測定頻度の増加と継続性の改善が確認された。まず、測定頻度は、従来の上腕血圧計(n=1722)では「週1回以下」が大半で、「1日2回」測定する人は1割にも満たなかった。これに対し、HeartGuide®ユーザー(n=20)は1日平均1.7回で測定回数が増加。測定継続日数も平均75.8日に達した。90日以上続けた人も11人おり、そのうち3人は測定結果にもとづき服用薬剤を変更するに至った。

ウェアラブル血圧計による日中血圧測定が引き起こす行動変容

 オムロンヘルスケアでも、社員を対象に日中の血圧変動を調査した。2020年7月の2週間、起床時と就寝前に加えて日中も2時間ごとの血圧測定を課した。アプリのメモ欄に、測定姿勢、食事、運動、会議中か否かなど、測定のタイミングや状態も入力してもらった。

 時間帯による血圧変動の分析から、興味深い結果が得られた。まず、血圧の上昇傾向のパターンは個人ごとで異なり、日中に上昇する「日中早朝上昇タイプ」「日中早朝やや上昇タイプ」、早朝に上昇する「早朝上昇タイプ」「早朝やや上昇タイプ」の4つの異なる傾向を確認できた。日中の時間帯に血圧が上昇する人が、約75%を占めた。

 次に、期間中に収縮期(最高)血圧が最も高くなった時間帯を、135/85mmHg以上の高血圧群(n=16)、正常範囲内の至適血圧群(n=15)ごとに分析したところ、高血圧群の6割以上が日中に1日の最高血圧を記録した。朝晩2回の測定では、日中に最も高い血圧を示すタイプであるとはわからない。例えば、朝に測定した血圧値が低い場合は、医師は日中の血圧変動を確認することが難しい。

 3点目として、曜日別の分析では、曜日の影響受けない「安定タイプ」が最も多かった。一方、「月曜上昇タイプ」「平日上昇タイプ」の個人差も確認できた。また、平日と休日で分析すると、高血圧群で4人に3人、至適血圧群で9割以上が、平日に最も高い血圧値を記録した。平日は仕事のストレスを抱えており、会議や座りっぱなしのデスクワークなども影響していると見られる。次に、デスクワーク、会議、食事、ストレス、運動という5つの状況別に分析すると、タイプにより血圧が上昇する状況の違いが認められた。

 実際は、仕事の状況だけでなく、食事、飲酒、喫煙など様々な状況における血圧変動があるが、ウェアラブル血圧計でより細かく記録すれば、傾向を見ながらリスク対策につなげられる。渡邊氏は、「アプリの操作性を向上させ、さらなる小型化にチャレンジする。よりシームレスに測定できるデバイスとサービスを連携させ、血圧管理のソリューションにつなげたい」と結んだ。

朝晩に加え、日中の気になった時に血圧を測り
自分の血圧変動パターンを知ることが大切

国際医療福祉大学大学院 医学研究科循環器内化学 教授 岸 拓弥

 血圧は1日を通して常に変動しており、環境や体の状態によって決まる。そのため、時間帯、曜日、置かれている状況によって血圧の変動に差が生じ、同じ人の場合でも、先週の月曜と今週の月曜で値が異なる事もある。血圧を適正にコントロールするためには、自分の血圧変動にどんな傾向があるかを知ることが大切だ。

 日本では成人の約半数は高血圧と言われており、脳・心疾患の原因の1つともいわれている。血圧を測定し血圧を知ることは、多くの人にとって生命の維持に関わる重要で、血圧は生命のトータルライフインデックスだと考えている。

 現在の高血圧治療は投薬を中心に行われているが、個人の血圧の動きがわかると、より最適な治療や指導が行えるはず。そのためにも、"気になったときに血圧を測る"ことから興味をもっていただきたい。

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