日経クロステック Special
「ニューノーマル」時代のデジタル戦略

デロイト×レッドハット
提案する
“未来に耐える”ビジネス在り方

デジタル技術を駆使したビジネス戦略によって躍進する企業が、グローバルで続出している。しかし、一部の先進企業を除く多くの日本企業は、まだその諸外国のモメンタムに対して十分にキャッチアップできていないのが現状ではないだろうか。加えて、新型コロナウイルスの感染拡大以降は、既存のビジネスルールが通用しない「ニューノーマル」の時代が到来するともいわれる。この時代に日本企業が進むべき道と、飛躍的成長への方法論とはどのようなものなのか。デロイト トーマツ コンサルティングとレッドハットのキーパーソン4人に聞いた。

欧米やアジアに比べ、日本企業のDXは大きく遅れている

――デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、新しい事業やビジネスモデルの創出に積極的に取り組む企業がグローバルで多数登場しています。この状況のもと、日本企業の現状をどのように捉えていますか。
 欧米企業に比べ、日本勢は残念ながら3~5年遅れている印象です。もちろん、キャッチアップできている企業も中にはいますが、それが業界を巻き込んだ大きなうねりにはつながっていません。

金古
 欧米だけでなく、最近はアジアの国々にも差をつけられつつあると感じます。日本企業の多くは、組織が硬直化しており、失敗を許容するカルチャーが整っていません。Small Step(小さな一歩)でも構わないので、リスクを取ってトライアル&エラーを繰り返し、常に新しいことにチャレンジし続ける土壌が必要だと思います。

 同感です。また、我々デロイト トーマツ コンサルティングは金融業界のお客様を多く有しています。その経験からいうと、金融機関のシステムでは自前にこだわるカスタム文化がまだ根強く、結果としてレガシーな仕組みが数多く残っている傾向があります。それがビジネスのアジリティや柔軟性の向上を阻んでいる。これはIT以外の、ルールやプロセスにおいても同様です。

 例えば、今回の新型コロナウイルスは、多くの企業の事業継続を脅かすものとなりました。日本の企業は、東日本大震災などを経験する中で様々なBCP対策を実施してきましたが、今回は、それも使い物にならなかった金融機関が多くあったと聞いています。つまり、従来の業務のルールやプロセスを順守すると、リモートワークが行えない。「無数の対策を講じてきたのに、肝心なときに役に立たなかった」という事態に直面したわけですね。こうしたことを回避する上でも、私たちは今、企業のシステムやルール、プロセス設計に関する、根本的なアプローチを変える必要があるのだと思います。

三木
 特に、IT環境はこの20年で大きく変わりました。スマートフォンが普及し、インターネットは社会にとって欠かせないインフラとなりました。AIやIoT、VR/AR(仮想現実/拡張現実)といったデジタル技術も次々に台頭し、身近なものになりつつあります。そんな中、企業システムだけが時代が止まったように変化せずにいれば、当然やれること・できることはどんどん減っていきます。まさに森さんがおっしゃる通りだと思います。

様々なテクノロジーアセットの組み合わせで、新しい顧客体験を創出

――金融機関が現状を脱却するために、事業構造はどのように変わるべきなのでしょうか。
 我々は、デジタルトランスフォーメーションについて説明するときに、よく“Future-proof your business”という言葉を使います。“未来に耐える”、つまり、不確かで不連続な変化にも耐えうるビジネスの姿を、変化に強く、長く使い続けられる仕組みによって具現化することを目指すべきと考えています。

 この変革のさらなる加速へ向けて、デロイト トーマツ コンサルティングはPlatform Engineeringというアプローチで臨みます(図1)。産業の壁を越えて流通する情報をつなぎ込み、新しいアイデアやイノベーションテーマを次々とサービス化/アプリ化していく加速装置=「クラウドベースのオープンプラットフォーム」が、その要となります。  消費者が力を持つデジタル時代には、優れた顧客体験を速く、継続的に提供し続けることで、市場ニーズをキャッチアップしていくことが、企業の成長に欠かせないポイントになります。要件を定義してプロジェクトを立ち上げ、数カ月、ときには数年をかけてシステムをつくる従来の開発手法では、その要求に完全には応えられません。Platform Engineeringは、要件を素早くサービス化してリリースし、翌日には新バージョンを出すといったスピード感を実現するための方法論。そして、金融業界がこのモデルで目指すべきことの1つが「オープンバンキング」の世界です。

――オープンバンキングとは、具体的にどのようなものなのでしょうか。
吉川
 顧客やパートナーのデータ権利は担保しながら、企業・組織間でのデータの相互利用を促進することで、これまでにない価値を生み出す考え方です(図2)。バンキングと名は付いていますが、銀行が主役というわけではありません。オープンバンキングの世界では、多くの産業がつながることで、消費者の生活シーンに入り込み、暮らしの便利や驚き、感動、社会課題の解決に役立つサービスを提供します。銀行のサービスは、あくまでその手段の1つという位置付けになります。  海外では既に取り組みを進める企業が多くあります。例えば、シンガポールのDBS銀行は、「Invisible Bank(見えない銀行)」というコンセプトのもと、消費者の生活に溶け込む新しい金融サービスの在り方を模索しています。具体的には、ある人が「食事をしたい」、あるいは「旅行に行きたい」と思ったときに使うアプリと、バンキングサービスが連携することで、他産業のアプリの“黒子”となって便利で快適な顧客体験を提供するのです。これはいわば、新しいエコシステムをかたちづくる動きであり、金融機関の新規顧客獲得にもつながるものといえるでしょう。

オープンバンキングのサービス基盤となる「OpenDATA」

――そうしたオープンバンキングのサービス開発に挑む金融業界各社に対し、デロイト トーマツ コンサルティングとレッドハットはどんな価値を提供できるのですか。
 デロイト トーマツ コンサルティングは、オープンバンキングをエンド・ツー・エンドで支援する仕組みとして「OpenDATA」「Alpha アプリケーション」を提供しています。「OpenDATA」はインフラからアプリケーションまで様々な機能を疎結合に構成した統合プラットフォームです(図3)。また、Alpha アプリケーションは、このプラットフォーム上で実現している銀行向けのReferenceアプリケーションになります。自らの力でゼロからつくり上げていくのでなく、実績のある(Provenな)アセットを活用することで、変革の道程を大胆に“近道”することができるようになります。  また、このプラットフォームの構成要素の中核を占めるのが、レッドハットのコンテナ化ソフトウエア群「OpenShift」です。Linuxコンテナ機能はもちろん、そのオーケストレーションを行うKubernetesなど、高速なシステム開発や柔軟な運用を可能にする多彩な機能を有しています。ほかにも、「OpenDATA」のコア技術や重要パーツの多くがレッドハットのテクノロジーをベースにしています。

吉川
 レッドハット様はオープンソースソフトウエア(OSS)やクラウドをベースにしたエンタープライズ向けソリューションを提供するとともに、ビジネス利用を視野にいれた質の高いサポートも提供しています。OSSは、サポートがない点がお客様のネックになりがちですが、その不安を解消できるサービスを具現化する上で、非常に心強いパートナーだと感じています。

金古
 ありがとうございます。当社は、オンプレミス/クラウドの垣根を越えて、あらゆるアプリケーションの可搬性を担保する「オープンハイブリッドクラウド戦略」のもと、マイクロサービス、クラウドネイティブ、自動化の促進などの様々なテクノロジーを提供しています。デロイト トーマツ コンサルティング様はそれらのテクノロジーをビジネスに実装し、お客様のビジネス価値の最大化を実現して下さるパートナーです。特に、企業経営や社会課題という大局的な観点で物事を捉え、ビジネス課題の解決から、社会全体のエコシステムづくりにまでつなげるノウハウは、我々にはない強みです。このように、得意分野の異なる2社が組むことで、お客様により大きな価値を提供できると考えています。

わずか13週間で新サービスの立ち上げに成功した企業も

――「OpenDATA」の活用メリットを教えてください。
吉川
 まず得られるのが、圧倒的なビジネススピードです。SoE領域で難しいことの1つが、どのサービスやプロダクトを使うかという「目利き」です。その点、「OpenDATA」が採用しているサービス/プロダクト群は、過去数年にわたりお客様に提供してきた実績あるもの。安心・確実な仕組みを短期間で構築することが可能なほか、モジュール化された機能を必要に応じて取捨選択できるので、事業構造の変化に合わせた拡張・縮小も容易です。

 さらに、オープンバンキングのサービスにおいて、セキュリティや信頼性は非常に重要です。その点、「OpenDATA」であれば、必要なデータ保護要件を満たすことも容易になります。具体的に、「OpenDATA」はオーストラリア政府が制定したCDR(Consumer data right:消費者データ権)にあらかじめ対応しています。そのため、開発者が要件を理解し、自ら実装に落とし込むといった手間をかけることなく、必要な仕組みをシステム側で担保できるのです。利用者にとって安心・便利なサービスを、簡単に実現できるでしょう。

 例えば、オランダの銀行であるRabobankは、AIによる中小企業向け即時融資サービスを「OpenDATA」で構築しました。従来の開発手法であれば年単位の時間が必要なシステムでしたが、要した時間はわずか13週間。移り変わる顧客ニーズを逃さない、新規ビジネスのリーンスタートに成功しています。

三木
 さらに、OpenShiftはオンプレミスでもクラウドでも同じようにアプリケーションを動かせるため、当然、これを基盤としている「OpenDATA」上のアプリも環境を選ばずに稼働させることができます。例えば、各国で進むデータ保護規制に対応する上では、オンプレミスでデータを管理したほうがいい場合があります。あるいは、オンプレミスのシステムをクラウドに移行したいケースもあるでしょう。これらのニーズにも柔軟かつ機敏に対応できます。

 またOpenShiftは、Microsoft Azureやアマゾン ウェブ サービス、Google Cloud Platformなどの主要なパブリッククラウドに対応しており、各事業者が高品質なマネージドサービスを提供しています。加えて、日本国内では複数のITベンダーがOpenShiftベースのマネージドサービスを提供、もしくは提供開始を計画しており、当社はそのための支援プログラム「Red Hat OpenShift Managed Practice Program」を用意しています。今後は、一層幅広い選択肢から、お客様自身が最適な環境を選択し、マネージドサービスが使えるようになっていく予定です。

――そうなれば、オープンバンキングに向けた施策を、さらに各社が展開しやすくなりますね。そのほかに今後、予定されている両社の取り組みなどを教えてください。
金古
 テクノロジーだけでなく、組織・カルチャー、プロセスの変革が伴わなければDXの実現は困難です。そのためレッドハットは「Red Hat Open Innovation Labs」というサービスを立ち上げ、お客様の組織・カルチャー、プロセス、テクノロジーの変革をお手伝いしています。デロイト トーマツ コンサルティング様はこうした変革の実績やノウハウを豊富に持っているため、この領域でも、共にお客様支援策を検討していければと思います。

 新型コロナウイルスを経た「ニューノーマル」の時代には、従来型のビジネスモデルは通用しなくなるような未来も予見されています。これまでにない顧客体験を、いかに他社より多く、速く消費者に提供できるか――。そのためには、イノベーションすら量産できるような仕組みを確立することが必要だと当社は考えています。

 言ってみれば、Lab(研究所)からさらにFactory(工場)へと、進化していこうということですね。海外の金融機関では、グローバルデジタルファクトリーを立ち上げ、新たな価値を創造したり、新サービスを次々繰り出したりするところも出てきました。日本のお客様がそうした流れをキャッチアップし、さらに追い越していけるようなお手伝いを、これからもレッドハット様と共に行っていければ幸いです。
  • 企業が保有する個人情報に安全にアクセスする権利を消費者に付与するとともに、目的に応じた第三者への情報提供を許可することを定めたもの
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