デンソーのグローバル経営を支える世界を繋ぐデータ連携基盤とは デンソーのグローバル経営を支える世界を繋ぐデータ連携基盤とは

100年に1度の変革期とも言われる自動車業界の中にあって、高度な技術力を磨き続ける日本有数の自動車部品メーカーであるデンソー。同社はグローバル化が加速する中で、地域を越えた円滑な業務連携を可能にするためデータ連携基盤となる「データ蓄積・交換サービス」を構築した。その連携ツールとして選んだのが、セゾン情報システムズのDataSpiderとHULFTだ。

グローバル化の進展により
求められた世界的なデータ連携

株式会社デンソー 情報システム部 担当係長 中山毅氏

株式会社デンソー
情報システム部
担当係長

中山 毅

 デンソーの事業分野は、エンジン制御を行うパワトレイン事業や自動車用エアコンシステム、ラジエーターなどの熱事業といった自動車関連分野を中心に、ホーム・エネルギー・マネジメント・システム(HEMS)などの生活関連分野、産業機械、さらには農業(アグリテック)分野にもおよび、幅広く事業を展開している。特に主力の自動車関連分野では、熱効率の高い電動化や自動運転、コネクテッドカーなどの先進分野に注力し、様々な研究にも取り組んでいる。

 同社はグローバル化の進展に伴い、現在世界35の国と地域に211の連結子会社を擁している。世界各地の自動車メーカーの工場に部品を供給しているが、従来ほとんどが日本からの輸出か、納入先である自動車メーカーの工場近くに自社工場を建て、そこから直接製品を納めていた。

 しかし、高品質な製品を効率的に製造・供給するため、ブリッジ生産や生産移管など生産・供給体制の見直しが進み、近年は海外の工場から他地域へ出荷することも増えてきた。デンソー 情報システム部 担当係長 中山毅氏は、「ビジネスが日本中心からグローバルなメッシュ型となる中で、グローバルに生産や物流を考える仕組みが必要となっていました。しかし、生産管理の仕組みが地域ごとに個別最適化していたためデータ連携がタイムリーに行えず、メールなどを使って人手を介して情報のやり取りをする場合もあり、受け取ったデータをシステムに入力し直すなど、手間も時間もかかっていました」と振り返る。

地域ごとにバラバラな資産を活かしながら
スムーズな連携を目指す

 世界各地にそれぞれの地域に最適化し、導入時期も環境も異なるシステムが散在する中で、レガシーシステムを含む過去の資産を活かしながらデータ連携を行うため、デンソーは地域ごとに中継サーバーを用意し、そこを介して疎結合で他の地域とデータ連携を行うこととした。これにより、連携する双方のシステムに影響を与えることなく柔軟な連携が可能となる。また、将来的な拡張性も考慮し、エージェントレスで負担なくデータ連携が可能な仕組みを希望した。

ビジネスのグローバル化を進める上で浮上した3つの課題。

ビジネスのグローバル化を進める上で浮上した3つの課題。

 そこで、同社は2016年、データ連携基盤の構築に向け検討を開始した。まず地域ごとのデータ連携基盤を実現するため数種類のツールを比較検討。3つに絞り実機検証を行った上で2017年夏、セゾン情報システムズが提供するDataSpider Servista(以下、DataSpider)を選定した。DataSpiderは、50種類以上の豊富なアダプタを用意し、異なるデータやシステムをノンプログラミングでデータ連携できるツールである。デンソー 情報システム部 担当係長 福井秀徳氏は、「当初から一旦データをサーバーに蓄積し、その中継サーバーを経由してデータ連携を行う疎結合をイメージしていました。これにより送受信の双方システムに影響を与えることなく、柔軟に連携できるようになるからです。DataSpiderは、そのアーキテクチャーに最も適合していました。また、コーディングレスでアイコンを並べていくだけでさまざまな処理が実装でき、開発の生産性向上にも寄与すると判断しました」と語る。

  • 株式会社デンソー 情報システム部  担当係長 福井秀徳氏

    株式会社デンソー
    情報システム部
    担当係長

    福井 秀徳

  • 株式会社デンソーITソリューションズ システム開発統括部 グループリーダー 𠮷村英展氏

    株式会社
    デンソーITソリューションズ

    システム開発統括部
    グループリーダー

    𠮷村 英展

  • 株式会社デンソーITソリューションズ システム開発統括部 シニアプロフェッショナル 河村一宏氏

    株式会社
    デンソーITソリューションズ

    システム開発統括部
    シニアプロフェッショナル

    河村 一宏

 同社は、日本国内で20年以上にわたってセゾン情報システムズのデータマネージメントソリューションHULFTを利用しており、その安定性や品質の高さを評価していた。デンソーITソリューションズ システム開発統括部 グループリーダー 𠮷村英展氏は、「これまでHULFTを利用してきた信頼感とサポート力、製品自体の機能拡張に対するロードマップがしっかりしていたこと、そしてコストパフォーマンスです」と選定理由を補足する。

 また、運用面についてデンソーITソリューションズ システム開発統括部 シニアプロフェッショナル 河村一宏氏は、「画面が分かりやすく操作性も良かったので、これなら上手く運用がまわせると判断しました」と語っている。

 地域ごとのデータ連携基盤をDataSpiderとしたことで、地域間の連携には日本で長年利用し、信頼性の高いHULFTの採用を決定。開発に着手することとなった。構築にあたっては、NTTテクノクロス株式会社がシステムの企画段階から運用支援までを実施。「難しい要求にも応えていただき、展開がスムーズに実現できたことに感謝しています」と福井氏は評価している。

DataSpider×HULFTで、
地域内および地域間のデータ連携を実現

 2019年1月には日本、5月にはアジア、2020年2月には北米のデータ蓄積・交換サービスが稼働。2020年春頃には中国のデータ連携基盤が稼働する予定で、欧州については検討を進めている。地域内のデータ連携にはDataSpiderを利用し、地域間のデータ連携にはHULFTを利用。高速なデータ連携を実現している。地域間でデータをやり取りする場合は、アプリケーション同士が直接やり取りするのではなく、まず送信側のDataSpiderの中継サーバーから受信側の中継サーバーにデータが送られ、そこから目的のアプリケーションに対してデータが送られる。アプリケーションを限定しないので多様な使い方が可能で、やり取りするデータは、生産管理情報や物流情報、会計情報など多岐にわたり、情報を集約して分析するBI基盤への受け渡しなどにも利用されている。中山氏は、「地域のシステム担当者からすれば、送りたいデータをDataSpiderに入れて指定すれば、後はよしなにやってくれるという感じです」と語っている。

地域内のデータはDataSpiderで統合し、地域間にまたがるデータ連携はHULFTで実現したデータ蓄積・交換サービスを利用することで、システム全体をグローバルな1つのサービスとして利用可能に。各サービスの環境や構成を意識する必要もない。

地域内のデータはDataSpiderで統合し、地域間にまたがるデータ連携はHULFTで実現したデータ蓄積・交換サービスを利用することで、システム全体をグローバルな1つのサービスとして利用可能に。各サービスの環境や構成を意識する必要もない。

株式会社デンソーITソリューションズ システム開発統括部 プロフェッショナル 横山裕介氏

株式会社デンソーITソリューションズ
システム開発統括部
プロフェッショナル

横山 裕介

 開発にあたっては、社内ルールに則ったガバナンスを実現するため、利用申請システムを付加した。オンラインの申請システムを開発したデンソーITソリューションズ システム開発統括部 プロフェッショナル 横山裕介氏は、「データの受け渡しがあるので、誰でも利用できてしまうとセキュリティ上問題です。そこで、社内ルールに沿って承認を得た上で利用するための仕組みを新たに構築しました」と語っている。

データの一元管理、標準化、
開発効率向上に効果

 データ蓄積・交換サービスにより、レガシーな仕組みも含めて連携可能となり、既存システムやプロセスを大きく変更することなくシームレスなデータ連携が実現した。運用にあたっては、開発ガイドラインや連携のひな形となるテンプレートも用意。スクリプトの一部を書き換えるだけで、簡単に利用できるようにしている。

 DataSpiderを導入した最大のメリットを𠮷村氏は、「データを一元管理できるようになったところです」と語る。また、河村氏は、「単純にデータを抜くだけなら、慣れると30分~2時間程度でできるようになり、標準化と開発効率向上に寄与できていると思います」と語っている。データのガバナンスと開発効率の向上を両立させた形だ。

データ蓄積・交換サービスにより、開発側も運用側も、ともに多くのメリットを享受。

データ蓄積・交換サービスにより、開発側も運用側も、ともに多くのメリットを享受。

 一方で、世界に展開するにあたっては、苦労も多かったようだ。河村氏は、「グローバルに海外拠点を巻き込みながら進めて行く上で、コンセプトを理解してもらうのは結構大変でした。何度か現地に行って、説明を繰り返しました」と語っている。このようなプロセスを経たことで、各地域でもうまく活用が進んでいる。

 今回構築したデータ連携基盤は、既存システムのデータ連携に加えて、IoTを活用したスマートファクトリーなどの取り組みにも活用が期待されている。その利便性や使いやすさが利用者に認められ、利用を希望する声も多い。最後に福井氏は、「今後サービス利用が進んだ時に、スケールアウトできる構成が必要になってきます。そこについては、セゾン情報システムズにも協力してもらう予定です。また、日本はオンプレミスベースなので、クラウド化の検討も必要と考えています」と抱負を語った。

株式会社 セゾン情報システムズ