コロナ禍で顕在化した自治体ICTの課題
解決の鍵は住民が自己解決できる
仕組みの創出

ここ数年、各自治体は、手続き窓口のオンライン化や職員のテレワーク対応など、業務のICT化に取り組んできた。しかし、その成果は必ずしも一定ではない。コロナ禍によって発生した膨大な業務が、奇しくもその明暗を浮き彫りにした。住民が望む適切なサービスをタイムリーに提供するためには、住民の自己解決を促すICTシステムが求められる。それを実現するのが、ワークフローの可視化と自動化を実現するクラウドプラットフォームの「ServiceNow」である。

近年、各自治体は、ICTを活用した業務の効率化に取り組んできた。しかし、既存のワークフローの枠組みを変えないまま、RPAやAI・OCRを利用した一部作業の自動化にとどまる例も見受けられる。実はこうした表層的なICT化では、業務の抜本的効率化は実現しないことがこのコロナ禍で浮き彫りになった。

給付金のオンライン申請
どうすれば効率化できたのか?

ServiceNow Japan合同会社 第一営業統括本部 公共、社会インフラ営業部 エグゼクティブセールス 森 義貴氏
ServiceNow Japan
合同会社
第一営業統括本部
公共、社会インフラ営業部
エグゼクティブセールス 森 義貴

例えば、1人10万円の特別定額給付金の申請は、オンラインでも受け付けられた。しかし、申請の受理・内容確認・登録・支給決定・振込データと決定通知の作成といった一連の作業を効率よく実施する有効な手段にはならなかった。それどころか、迅速な給付を期待してオンライン申請した住民が、数週間待たされた挙げ句に申請の不備を指摘され、振り出しに戻って不満を募らせる例もあった。

「給付金関連業務で行われたオンライン申請は、実際のところデジタル化のメリットがなかったと言わざるを得ません。マイナンバーなどのデータを自動入力させるものは少なく、結局オンライン申請された内容をPDFでダウンロードし、郵送されてきた紙での申請と同じ手順、同様の手作業・目視で処理するケースが多発したからです」とServiceNowの森 義貴氏は指摘する。

実際、申請開始後にオンライン申請を中止し、郵送による申請に一本化せざるを得ない自治体も出てきた。それは業務をICT化したことが間違っていたからでも、ICT化の効果が小さかったからでもなく、ICT化が中途半端だったからではないだろうか。自治体業務が抱える非効率は住民の命に関わる問題であることを、コロナ禍の中で住民は実感した。そして、同様の非効率は、地震や台風など災害発生時にも顕在化するだろうし、平時の自治体業務の中にも内在していることを感じ取っている。

住民は必ずしも手厚いサービスを
望んでいるわけではない

オンライン申請での失敗を目にした自治体職員の中には、業務のICT化の難しさを痛感している人もいるだろう。しかし森氏は、「業務のICT化を難しく考える必要はありません。オンライン上では、すべての住民に、役所から必要以上に手厚い行政サービスを提供する必要はないのです。むしろ、困りごとを住民の手で自己解決できる仕組みを作り込んだ方が、成功の可能性が高く、住民の満足感と信頼感が得られます」という。

職員の手をわずらわせず、問題を自己解決できる場と仕組みが用意されるのならば、それを利用した方が解決は早く、ストレスも少ないと考える住民は多いのではないか。これは、小売店であれこれ接客を受けて商品を購入するより、ネット通販で自ら商品を選んで購入する方がよほど気楽で便利に感じるのと同じだ。しかも、デジタルネイティブが増えるこれからは、こうした感覚を持つ住民が多数派になる可能性がある。もちろん全ての住民に同様の対処を期待することはできないが、自己解決できる人に率先して動いてもらえば、自治体業務は飛躍的に効率化されることだろう。

住民の自己解決を促す際に重要なことは、問題解決に際して必要な情報を適切なタイミングで、確実に提供すること。専門性の高い知識が必要な確認や判断を自動化すること。また、住民と自治体の連携を円滑にし、正しく処理が進んでいる様子を可視化することである。

こうした要件を満たす、住民と行政をつなぐワークフローの可視化・自動化クラウドプラットフォームが、ServiceNowである(図1)。ServiceNow内部に貯めたナレッジの中から必要なものを「検索」する機能、「申込」に応じて仕事を自動的に割り振る機能、業務担当者のタイムリーな判断や決済を依頼するための「通知」を行う機能、未決の判断や決済の実行を促す「催促」の機能を備えている。

図1 住民と行政をつなぐデジタルプラットフォーム「ServiceNow」

図1 住民と行政をつなぐデジタルプラットフォーム「ServiceNow」


[図版のクリックで拡大表示]

Withコロナ時代を乗り切る
「三方良し」の行政支援

広島県は、ServiceNowを活用して、「Withコロナ」時代の新しい生活様式を支える行政支援の仕組みのベータ版を構築した。住民、事業者、行政の三者が、できることは自分で自己解決し、大きな負担を負うことなく、安心して生活や仕事ができるようにした、いわば「三方良し」の仕組みである。

この仕組みでは、住民が登録事業者の店舗に貼られているQRコードをスマホで読み取ることで、同じタイミングにいた人の感染が確認された際に自動通知を送る。そして、保健所への連絡を促す。ここまでは多くの自治体でも行われているが、広島県ではその後に、ユニークな仕組みを付加した。通知を受けた人が、現在の健康状態を登録することで、自動的に対処の優先順位をつけるトリアージも可能になる。これによって、保健所の作業負担を大幅に軽減するとともに、PCR検査や隔離などの対処のリソースを管理し、抜けのない対処が見込めるのだ。

何もコロナ対策に限ったことではなく、「引っ越し」や「チャットボットによる犬の登録申請」といった住民サービスの拡充はもちろん、職員の異動手続きや会計年度職員の募集など様々な業務の効率化を実現できるという。

森氏は、「ServiceNowのような目的に合ったアプリケーションを柔軟に構築できるクラウドプラットフォームを予め導入しておけば、タイムリーにサービスを提供できます」という。こうしたクラウドプラットフォームは、非常時だけでなく、平時の自治体業務の効率化にも大いに役立つ。業務に携わる現場の職員が平時から使い慣れておけば、業務の効率とサービスの質は飛躍的に向上することだろう。