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SoftBank World 2020 CEO Summit レビュー ソフトバンクのグループ企業CEOが語るデータとテクノロジーによって変革する社会

ソフトバンク株式会社代表取締役社長執行役員 兼 CEO 宮内 謙氏。ソフトバンク株式会社代表取締役副社長執行役員 兼 COO 今井 康之氏。Zホールディングス株式会社代表取締役社長 CEO、ヤフー株式会社代表取締役社長 CEO 川邊 健太郎氏。SB C&S株式会社代表取締役社長 兼 CEO 溝口 泰雄氏。SBテクノロジー株式会社代表取締役社長 CEO 阿多 親市氏。PayPay株式会社代表取締役社長執行役員 CEO 中山 一郎氏。日経BP 総合研究所イノベーションICTラボ上席研究員 大和田 尚孝

ソフトバンクの法人向けオンラインイベント「SoftBank World 2020」が2020年10月29日と30日に開催された。2日目には、ソフトバンクのグループ企業のトップ6名が集結し、「ソフトバンクのグループ企業CEOが語る、データとテクノロジーによって変革する社会」と題するパネルディスカッションを行った。その一部を紹介する。(ファシリテーター:日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ 上席研究員 大和田尚孝)

場所を選ばない働き方のためには
完璧なデジタルシフトが必要

写真:宮内 謙氏、今井 康之氏

パネルディスカッションは、「最近の企業の働き方の変化」「データ活用の重要性」「ソフトバンクのグループが今後世の中に貢献できることと、日本の未来」という3つのテーマに分けて行われた。

最初のテーマである「最近の企業の働き方の変化」について、Zホールディングスの川邊氏は、自社の例として「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大以降、2014年にヤフーで始めた『どこでもオフィス』という場所を問わない働き方の回数制限を解除し、フレックスコアタイムも廃止しました」と説明。さらに、自由な働き方を実現した社外からの副業人材を招き入れてオープンイノベーションを創出する、「ギグパートナー」という制度をヤフーが導入したことを発表した。

図:移動時間が激減「業務対応可能量/日」が増加、大幅に業務効率UP
								これまでの働き方(2019年4月~9月)、新しい働き方(2020年4月~9月)
Zホールディングスの川邊氏の場合、リモートワークの実践によって、1日の業務時間に占める移動時間が15.6%から3.9%に減り、その分、社内業務の時間が59.1%から78.8%に増えた。生産性向上のメリットは明らかだ。

「私どもも緊急事態宣言の発令後、速やかに原則在宅勤務への移行を実施し、4月の在宅勤務率は97%、5月は98%に達しました」と語るのは、SB C&Sの溝口氏である。

同社は3年前から在宅勤務を奨励してきたが、COVID-19以前の在宅勤務率は10~20%にとどまっていた。「それが一気に変化したわけですが、テレワークのインフラが整っていたおかげで生産性はまったく落ちていません。むしろ、顧客へのコンタクト率やオンラインセミナーの実施回数が以前の1.5~2倍に増えるなど、営業活動は活発になっています」と溝口氏は振り返った。

写真:溝口 泰雄氏、大和田 尚孝

そのうえで「緊急事態宣言解除後も在宅勤務を続ける企業と、元に戻る企業とでは大きな差が出るでしょう。テクノロジーを積極的に活用して大胆に変わり続けるべきです」(溝口氏)と提言した。

同じくCOVID-19の感染拡大後、原則在宅勤務に移行したのがPayPayである。同社の中山氏は、「オフィスの在り方を再定義し、チームワークによって新しい価値を創出する場や、従業員のエンゲージメントを高める場として機能させることにしました。個々の社員による集中作業は、自宅やサテライトオフィスで行うこととしています」と語った。

また、オフィスを活気あるディスカッションの場とするため、働く場所を自由に選択できるオフィスレイアウトを採用したほか、安全第一を旨に、物理的に座席数を減らすといったソーシャルディスタンスの確保や毎日の除菌清掃などを徹底しているという。

中山氏は、「PayPayには約30カ国の外国籍社員が働いています。日本にありながら、グローバルスタンダードを追求した働き方を実現していきたい」と語った。

図:オフィスの在り方の再定義 作業をする場所から、新しい価値を生み出す場所へ。
								作業は自宅やサテライトオフィスなどで。チームワークによる新しい価値を創出する場所、従業員のエンゲージメントを高める場所
PayPayは、COVID-19の感染拡大とともに「オフィスの在り方」を再定義した。オフィスは、チームワークによる新しい価値を創出する場や、従業員のエンゲージメントを高める場とし、個々が集中して行う作業は自宅やサテライトオフィスで行わせるようにした。

在宅勤務に不可欠なセキュリティ強化について提言を行ったのは、SBテクノロジーの阿多氏だ。「クラウドの活用強化とともに、外部からの脅威をファイアウオールで遮断するという境界型の従来セキュリティから、“社内も安全ではない”という前提で、すべての端末の通信・ログを監視分析する『ゼロトラストセキュリティ』への移行が急務になっています」と述べ、クラウド化を進める中でゼロトラストを前提にセキュリティを考えることが、DX推進のためには不可欠であるとの見解を示した。

図:従来の境界型セキュリティからゼロトラストセキュリティへ
									従来のセキュリティ(境界型)、社内は安全という前提 → ゼロトラストセキュリティ、安全な場所はないという前提
業務におけるクラウドの活用が進むとともに、従来の境界型セキュリティから、ゼロトラストセキュリティへと“守り”のレベルを上げる必要性が高まっている。ゼロトラストを実践しないと、DXの推進がおぼつかなくなる恐れもある。

「ソフトバンクの働き方は、どのように変わってきたのか?」というファシリテーター大和田の問い掛けに対し、「ソフトバンクは10年前からペーパーレス化を推進するなど、デジタル技術を駆使しながら、つねに変革の先頭を走ってきました」と説明したのは今井氏である。

今井氏は、「ソフトバンクのグループ内に蓄積されたテレワークに関する豊富な知見や技術を紹介しながら、これからも日本企業の働き方改革を支援していきたい」と語った。

さらに宮内氏は、「場所を選ばない働き方を実現するには、完璧なデジタルシフトが必要です。ゼロトラストによる万全のセキュリティ環境のもと、テレワークを後押しする最新のデジタル技術やソリューションを積極的に採り入れながら、変革を推し進めていただきたい」と提言した。

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