DTTF2020 -Digital Twin & Tranceformation Forum- on Web Review

開催日時:2020年9月23日水)13:00〜17:00

ーDXはもう待ったなし。
押し寄せるニューノーマルの波を
乗り切るためにー

新型コロナウイルスの影響で多くの企業がニューノーマル時代を意識した中長期的な施策の検討を始めている。この危機を好機に変え、攻めの経営を推し進めていくべく今注目されているのが、AIやVRによってさらに進化していくIoTやデジタルツインの活用だ。

DTTF(Digital Twin&Transformation Forum)2020 on webでは、収束後の未来で勝利を掴むための、最新のビジネス導入事例や最新動向などが紹介された。

日経クロステック / 日経コンピュータ 副編集長 中田 敦

基調講演

デジタルツイン/DX
この先勝ち残るために必要なものは

日経クロステック / 日経コンピュータ

副編集長

中田 敦

量子コンピューターでデジタルツインの産業活用が加速

「デジタルツインとはコンピューター上に詳細に再現した実物のデジタル版のことです。昨今デジタルツインを活用してテストやシミュレーションを行い、機械学習で予測。その成果を開発やマーケティングなどに生かすことで、実物で行うより早く低コストで、膨大な条件を試すことができると注目されています」と中田は冒頭に説明した。

中田によると現在デジタルツインの活用に最も成功しているのは、「Google」や「Facebook」などのデジタル広告だという。20年前のデジタル広告はグラフィカル(人口動態)なコンセプト、すなわちまずユーザーから年齢や家族構成などの情報を入手し、これを統計データに照らして、年収や住宅ローンの状況などを推定し、広告配信に生かしていた。しかし現在の「Google」や「Facebook」はユーザー情報をオンラインで大規模に収集し、コンピューター上にユーザーごとのリアルなデジタルツインを構築しており、興味・関心をより正確に予測し、広告配信の最適化を実現しているという。

また、現在の製造業は20年前のデジタル広告と似たレベルにある。ゼネラル・エレクトリック(GE)が製造業のデジタル化を進めようとしたが失敗に終わった。この試みは、著書『GE 巨人の復活 シリコンバレー式「デジタル製造業」への挑戦』(日経BP)に詳しく記載されている。

「デジタルツインとビッグデータを使って詳細に観察したり、機械学習で予測モデルを作るところまでは成功しています。しかし、それを具体的なアクションに生かすには、高度な最適化問題を解かなければならず、現在のコンピューターの能力では不可能です」

近年、量子コンピューターが実用化されたことで、この問題を解ける可能性が高まってきた。最適化問題をクリアすれば、デジタルツインの産業活用は一気に進むだろう。

慶應義塾大学 理工学部 物理情報工学科 准教授 田中 宗 氏

特別講演

5年後のDXに欠かせぬ相棒、
量子アニーリングの大きな可能性

慶應義塾大学

理工学部 物理情報工学科
准教授

田中 宗

難解な問題解決で期待される「量子アニーリング」とは

「社会には解かなければならない難解な課題があります」。講演の初めに慶應義塾大学の田中氏はそう述べたあと、「その中には『組み合わせ最適化問題』で処理できることがたくさんあります。例えば、スケジューリングや配送計画、スマートシティ、集積回路の設計などです」と続けた。

組み合わせ最適化問題とは、膨大な選択肢の中から多くの制約条件を満たす最適解を見つけ出すことだ。

例えば、運送会社は顧客に荷物を届ける必要があるが、顧客の要望(時間、場所、届け方など)やトラックの種類(サイズ、冷蔵か冷凍かなど)、交通事情(渋滞や災害状況など)といったさまざまな制約がある。すべての制約を満たし、かつ最も効率の良い運び方を選ぶには、膨大な計算が必要となる。今日の一般的なコンピューターでは事実上不可能だ。

これを高速かつ高精度に解くことを期待されている技術が、量子アニーリングだ。田中氏は説明する。

「カナダのD-wave Systemsによる開発を皮切りに、日立製作所や富士通など、さまざまな企業が開発に成功し、商業利用も可能になっているものです。私自身もオンライン広告の最適化やマテリアルデザインなど、多様な分野で活用しています」(田中氏)

しかしながら、同氏によるとこの新たな取り組みを推進するには、人材育成が欠かせないという。事実、情報処理推進機構(IPA)では2000年から「未踏事業」として、若手IT人材を育成する試みを進めており、量子アニーリングやゲート式コンピューターなどを対象にした人材育成として「未踏ターゲット事業」も立ち上げられた。

最後に田中氏は「よく『量子ネイティブ人材』と言われるが、私は『量子バイリンガル人材』の育成が急務と考えています。その意味は、量子アニーリングは若い人のためだけのものではないということです。別の分野で既に高い専門性を持つ方に、体験、理解、活用してもらい、社会とのつながりをさらに広げていきたい」と抱負を語った。

特別講演

空間・都市型デジタルツインを活用した
スマートな社会とは?

渋谷区 副区長 澤田 伸 氏

渋谷区 副区長

澤田 伸

Symmetry Dimensions CEO / Founder 安藤 類央 氏

Symmetry Dimensions

CEO / Founder

沼倉 正吾

デジタルツインの活用で新しい渋谷区を模索

ハロウィーンや年末のカウントダウンなど、渋谷に人が集まるイベントができなくなった。新しい方法を模索する中で、デジタルツインのようなサイバー空間の活用への期待が高まっている。澤田氏は「まだ実験段階だが、『バーチャル渋谷』に協賛いただいている企業とともに、区の課題を解決していきたい」と話したうえで、次のように続ける。

「リモート化やデジタル変革により、人が都市を避けてコミュニケーションするようになるかといえば、それは違います。デジタルは形式知を交換する場として優れていますが、暗黙知にはクリエイティビティが必要です。だからこそ人のリアルな交流が欠かせない」。都市には人が集まり、職と住が共存している。そこから生まれるカルチャーや発想力は貴重であるのだ。

渋谷区のビジョンは「ちがいを ちからに 変える街」。ダイバーシティとインクルージョンが基本となる。年齢や性別、考え方の違いを超えて互いに認め合い、大勢が自由に参加して、アイデアと想像力をかけ合わせていくことが渋谷の根幹だ。それを象徴するキーワードは「YOU MAKE SHIBUYA」。渋谷というブランドは、皆で作る。このコンセプトのもと、3~5年のスパンで戦略と計画を実行している。

デジタルツインは精度の高いシミュレーションや未来予測を可能にする。Symmetry Dimensionsの沼倉氏は「例えば、コミュニティバスやシェアサイクルのデータを活用すれば、移動困難な場所の特定やルートの効率化を図ることができます。客観的なデータにもとづき、最新テクノロジーを用いたアジャイルな手法で防災、都市開発、公共施設の再建などのほか、アーバニズムの拡張にも期待しています」と展望を語る。

「難解な技術をいかにわかりやすくし、楽に使ってもらうかが自身の使命」。そう沼倉氏は語る。これを受け澤田氏は、「今後もデジタルファーストで区政を進めたい」と抱負を述べた。

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