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48Vフル活用、BMS無線化、パワー半導体削減 一歩進んだクルマの電動化3つの技術領域でTIが起こすイノベーション

自動運転の頭脳は48V電源で動く

 まずは、①電源システムの48V化によるエネルギー効率向上。48V電源で駆動するモーターを搭載したマイルド・ハイブリッド車の投入が始まった。車両用電源の定格電圧を12Vから48Vへと高電圧化し、エンジンを補助する駆動用モーターの出力を高め、エネルギー効率を高めたシステムである。

 48V化による高効率化の効果は、モーターだけでなく、自動運転用の高性能コンピューターやHVACコンプレッサー、電動パワーステアリングなど大出力の車載電装品にも及ぶ。しかも、廃自動車に関するEU「ELV指令」の2021年改訂に伴い、2024〜2031年の間に12V電源を供給する鉛蓄電池を新型車に搭載できなくなる可能性もある。HEVやEVでは、駆動用モーターをさらに高電圧で駆動するが、電装品向けとして48V電源は残ることは確実。このため12V電源向けに代わる48V対応の新たな電源ソリューションが求められてくる。

 既にTIでは、48V電源に対応した、数多くの車載システム・ソリューションを提供している。例えば、12Vと48Vの電源を併用すると、電源システムの負荷は極めて複雑に変化するようになる。TIは、電源システムの高度化に対応する、負荷変動を高い精度で監視・制御できるソリューションを用意している。

バッテリーを無線で監視・制御

 次に、②BMSの革新。HEVやEVに搭載されるバッテリー・モジュールは、多数のリチウムイオン2次電池セルを連結して構成されている。一つひとつのセルの特性には個体差があり、しかも充放電を繰り返すと個体差がより広がる。安定、安全、かつ高寿命な運用を実現するためには、各セルの状態をモニタリングし、充放電を制御しなければならない。しかし現在は、各セルをケーブルでつなぎ、状態や充放電を監視・制御するデータをやり取りしている。

 有線通信ベースのBMSは、信頼性と安全性は高いものの、多くの課題を抱えている。例えば、セルの交換や断線によるケーブルの置き換えが必要になれば、大きなコストがかかる。また、ケーブルの全長は3マイル(4.8km)にも及び、その重量やコストは大きい。このため、次世代車では、「BMSの無線化が、確実に進むとみています」とスタインメッツ氏は語る。

 TIでは、高精度のバッテリーモニターICとSimpleLink™ ワイヤレスMCUを搭載した、無線通信ベースのBMS評価ボードを既に提供している。高スループット、低レイテンシーの堅牢な2.4GHz無線プロトコルを使用し、各ノードからの100msごとのデータ転送を保証し、さまざまなBMS電圧構成をサポートするスケーラブルなシステムである。

制御統合で高価なパワー半導体を削減

 最後に、③パワートレインの制御の集積化。EVなどの電動車には、オンボード充電器(OBC)、高電圧DC-DCコンバーター、配線ユニット(PDU)、BMSといった、多くのパワーエレクトロニクス・システムが搭載されている。これらは、システムや回路の構成を工夫することで統合可能であり、エネルギー効率のさらなる向上、軽量化、低コスト化などを実現できる。統合は、機械レベル(筐体、冷却など)から、制御レベル(1つのECUで複数のパワー系を制御)、パワートレイン・レベル(回路統合による構成部品の最適化)へと、段階的に進みそうだ。

 TIでは、それぞれのレベルでの統合に向けたソリューションを既に用意している。例えば、同社のソリューションを用いてOBCと高電圧DC-DC、PDUの3つをパワートレイン・レベルで統合すれば、重量約40%減、体積約40%減、電力密度が約40%向上し、さらにはDC-DCの性能も向上するという(図2)。さらには、OBCとEVの駆動用モーターのインバーターを統合するソリューションも保有している。「IGBTやSiCデバイスなど高価なパワー半導体や制御ユニットの共有、磁気部品の統合が可能であり、劇的なコストダウンを見込めます」とスタインメッツ氏は語る。

図2 OBCと高電圧DC-DC、PDUをパワートレイン・レベルで統合するソリューション
図2│OBCと高電圧DC-DC、PDUをパワートレイン・レベルで統合するソリューション
これまでOBCと高電圧DC-DCコンバーターのそれぞれに必要だった、トランスなど磁気部品を統合。さらには、力率改善回路(PFC)段やDC-DC段、高電圧側のDC-DC段、それぞれのパワー・スイッチを共有し、制御用のMCUも共有できるようにした。

 これらクルマの電動化を後押しする先進的な車載システム・ソリューションは、多様な車載用半導体製品を保有し、世界中の自動車業界と深いつながりを持つTIだからこそ開発できるものだと言える。世界に先駆けてHEVを市場投入した日本の自動車業界の声に耳を傾け、さらに効果的で洗練されたソリューションに仕上げて提供していく。