東京工業大学 国際オープンイノベーションシンポジウム2020 レポート

産業界と大学が、共に未来を描き・実現に取り組む 東京工業大学が打ち出すオープンイノベーションとは

日本を代表する理工系総合大学である東京工業大学(以下、東工大)が、産業界と共に、世界を圧倒・リードする新事業と新産業を創出していく取り組みを開始した。技術開発の困りごとを大学の先生に相談する従来の産学連携とは枠組みのスケールが違う、東工大を企業の中央研究所や戦略的技術の開発機関として利用できるようにするものだ。そして、2020年2月10日東京国際フォーラムにて「第1回 東京工業大学 国際オープンイノベーションシンポジウム」を開催。東工大が産業界に向けて提供する機能の価値と、未来を拓く技術を開発する高いポテンシャルについて訴求した。

開会挨拶 産業界に寄り添い共に成長する東工大

東京工業大学 理事・副学長 オープンイノベーション機構 機構長 渡辺 治氏

東京工業大学 理事・副学長
オープンイノベーション機構 機構長

渡辺 治

イノベーションを創出する体制の巧拙が、企業競争力、ひいては国の競争力に直結する時代になった。巨大IT企業はビッグデータを活用した高付加価値サービスから莫大な富を生み出し、自動車産業は異分野技術である人工知能(AI)を活用して自動運転車の開発にまい進している。科学技術立国を自負してきた日本も、これまでの科学技術の研究と産業振興の仕組みや方法論を踏襲するだけでは、世界のメガトレンドに取り残されかねない。

イノベーションの創出には、異分野の知見や異なる視座からの視点の集積と融合が重要だ。自分とは異質な知識、価値観からは、専門家だからこそ見えない気付きが得られる。競争力強化を目指す企業であっても、インパクトのある研究に取り組む大学の研究者であっても、この点は変わらない。東工大は、産業界との共同研究を本格的に進めていく組織「東京工業大学オープンイノベーション機構(OI機構)」を設置。産業界とより密接に連携し、大学が持つ人材・設備・仕組みを有効活用して、新規事業開拓から社会実装まで共に取り組む。

「組織」対「組織」で連携する大きな枠組みでの産学連携

OI機構 機構長である渡辺治氏は、「もはや国立大学に期待される役割は、学術的な研究と人材教育だけではなくなった。東工大での研究・教育を通じて得られた知見と保有するリソースをフル活用し、成果の社会実装のため、産業界と共にイノベーション創出に取り組んでいきたい。そのため、個人同士の関係に基づく産学連携ではなく、『組織』対『組織』で連携する大きな枠組みでのオープンイノベーションに注力していく」と語る。

東工大には、1000人強の研究者が在籍。2016年のノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典栄誉教授、新材料開発で産業界にインパクトのある成果を連発する細野秀雄栄誉教授など、世界のトップを走る研究者が数多くいる中、新たな人材の発掘・育成への取り組みも活発だ。同大学には、挑戦的研究や目覚ましい成果を上げる若手研究者を対象にした表彰や支援研究費の贈与制度などが設けられ、各研究分野に進取の風を吹かせている。

東工大が取り組む研究のテーマは極めて広い。「新・元素戦略」「統合エネルギー科学」「ディジタル社会デバイス・システム」を重点分野とし、特に人材の層が厚い。加えて近年では、「サイバーフィジカルシステム(CPS)」「持続的社会インフラ」「ライフサイエンス」「量子科学技術」に関連した研究を戦略的に強化しており、世界的な成果も多数生まれている。これらの中には、産業界との連携によって、新しいビジネスや産業へと発展する可能性を秘めた種が数多くあることだろう。

学長挨拶 新たな産業の創出これこそ東工大の本分

東京工業大学 学長 益 一哉氏

東京工業大学
学長

益 一哉

「工業工場があって而して工業学校を起こすのではなく、工業学校を起こし卒業生を出して而して工業工場をおこさしめんとした」。これは、1881年に、東工大の前身である東京職工学校の創立時に、創立に尽力した浜尾新が示した設立意図である。この言葉をひも解きながら、「東工大は設立当初から、新たな産業を興すアントレプレナーシップ(企業家精神)を持つ学校だった」と東工大 学長の益一哉氏は語る。企業と共に、新たなビジネス、産業を創出するオープンイノベーションの実践は、まさに東工大の本来の姿であると言える。

効果的連携を進めるために東工大が備えるべき3要素

新しい事業、産業の創出を目指す仕掛けであるオープンイノベーションを実践する場として、東工大は、人材面、設備面、研究成果や知財などの面で恵まれた環境だと言える。ただし、時代の要請と現在の科学技術開発や産業界でのトレンドを鑑みて、効果的オープンイノベーションを実践するためには、「3つの要素を兼ね備えた連携環境を用意する必要がある」と益氏は言う。すなわち、「オープンなプラットフォーム」「グローバルなネットワーク」「持続可能な成長モデル」である(図1)。

オープンなプラットフォームとは、大学と企業が一緒に議論できる場のことを指す。東工大は、2018年に、未来社会DESIGN機構(DLab)と呼ぶ、独創的研究テーマの創出を後押しする野心的組織を設けた。ここでは、「予想される未来とは違う、我々がありたいと思う未来の姿を描き、バックキャスティングして、今取り組むべき研究テーマを考える」と益氏は言う。学内の学生や教職員以外の人たちとも率直な議論を交わし、ありたい未来の姿を具体化していく。さらに、企業や外部研究機関も“DLabパートナーズ”として、この活動に加わることが可能だ。これまでに議論した結果は、24の未来シナリオにまとめ、公開している。

協業の場を世界につなげる海外拠点「ANNEX」を設置

グローバルなネットワークとは、オープンイノベーションに参加する人や、研究開発する技術が世界につながり、広がる仕組みを持つことを指す。現在、東工大では、「ANNEX」と呼ぶ、教育、研究、情報発信の海外拠点の設置を進めており、教育に関しては、タイのバンコクに「Tokyo Tech ANNEX Bangkok」を設置し大学院レベルの教育を行っている。また、2019年にはドイツのアーヘンに「Tokyo Tech ANNEX Aachen」を設置し、現地の大学や研究機関、企業との研究連携を進めている。さらに、東工大が産学連携で果たす役割を世界に向けて情報発信するため、2018年に独立行政法人 日本貿易振興機構(JETRO)と包括的連携推進協定を締結した。

持続的成長モデルとは、プラットフォームに集まった研究者や企業が、様々な支援サービスを活用しながら持続的に成長できる仕組み。プラットフォームの価値は、それを利用する研究者や企業、さらにはその中で提供される支援サービスが増えれば増えるほど上がっていく。成長の核となるサービスとプロジェクトをOI機構が用意し、利用者やサービス・プロバイダーにとっての魅力を高めることで、プラットフォームの自律的成長を促す。

図1 東工大が提供するオープンイノベーションプラットフォーム
							1.オープンプラットフォームに基づいた企業と大学のチーム
							2.グローバルネットワークからの参加者と市場
							3.プラットフォーム上の価値あるサービスが持続的成長を保証
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