近年、多くの企業が注目するデジタル領域の1つがRPAである。最近は、業種や業態を問わず導入され、様々な業務の自動化を実現している。市場でも多くのRPAベンダーがしのぎを削っているが、顧客満足度調査でNo.1を獲得したのはUiPathだ。2017年から、同社は「複雑・少量・多様」な業務の自動化ニーズを持つ日本企業の要求に対応することをビジネスの重要なテーマに据え、日本市場に積極的な投資を行ってきた。また現在は、ロボット フォー エブリー パーソン(一人ひとりがロボットを使いこなす)の実現を目指して製品ポートフォリオ、サービス部門の発足など、多角的な取り組みを進めている。
昨年に続いて2年連続でRPA部門を制したUiPath。Fortune Global 500の上位50社のうち50%が同社の製品を導入しており、日本国内でも2年連続のトップシェアを誇るなど※、急速に発展するRPA分野を象徴する存在ともいえる同社だが、特に近年の成長は日本市場重視の姿勢が大きな要因となっている。
「当初RPAは、『単純・大量・繰り返し』の業務に最適な技術として普及し始めました。それに対して、日本のお客様は、RPAを『複雑・少量・多様』な業務にも会社レベルで適用したいと考えた。このニーズに応えることで、UiPathのRPAは、より多くの業務を自動化することができるようになりました。日本のお客様の声によって育つ『日本型RPA』が世界の標準になると確信して、開発投資などのリソースを積極的に日本市場に投入してきました」と同社の長谷川 康一氏は言う。
日本企業の声を通じて、自動化業務の幅を広げてきた同社が、製品戦略として見据えるのが「ハイパーオートメーション」の実現だ。
「ハイパーオートメーションとは、Gartner社が提唱したコンセプトですが、人間がど真ん中で、RPA、AI、プロセスマイニングなどの技術を組み合わせて利用し、知識作業の業務までエンドツーエンドで自動化の範囲を拡大することを目指します」(長谷川氏)
UiPathは、このハイパーオートメーションの実現に向け、従来の4製品から17製品へと製品ポートフォリオを拡張。自動化に適した業務の「発見」、ロボットの「開発」「管理」、自動処理の「実行」、人とロボットとの「協働」、さらには効果の「測定」を担う各製品でRPAとAI のプラットフォームを構成し、自動化にまつわるプロセス全体をカバー。より多様な業務の自動化、つまりハイパーオートメーションに向けた企業の取り組みを支援しようとしている。
※出典:ITR「ITR Market View:RPA/ OCR/ BPM市場 2019」
ロボット フォー エブリー パーソンの実現に向けて、もう1つ同社が取り組んでいるのがサービスの強化だ。
「以前は、営業とサービスが1つのチームになっていたのですが、それを分離。サービス専門の部門を発足しました。RPAは、お客様の主導的な取り組みによって適用範囲が拡大し、それに比例して成果を上げていくことができる技術です。そのお客様の取り組みを、より強力に支援するのがサービス部門発足の目的です」と同社の家永 和宏氏は語る。
例えば、前述したように同社は製品ポートフォリオを拡充し、新たにプロセスマイニングや効果測定を行うツールなどの提供を開始した。業務プロセスにおけるボトルネックの発見や、自動化で得られる効果の見極めなどは、業務内容を熟知するユーザー自身が最も的確に行えると考え、そのためのツールを用意しているわけだが、成果を上げるには、ユーザーにツールを使いこなしてもらう必要がある。
「リーディングカンパニーとして、新しいコンセプトを私たち自身が発信すべきではないかと考えて、多くのパートナー様と共にお客様を訪問して、製品の特徴や使い方をご紹介したりしています。もちろん、これはサービスの一部。ほかにも、会社横断でAI専任のチームを構成して、お客様と共にAIを活用したPoCを進めるなど、様々な取り組みを行っています」と家永氏は話す。
人材教育やコミュニティの充実にも力を入れている。
まず教育に関しては「UiPathアカデミー」において、完全無料のオンライントレーニングや、より高度な技術の証明となる「UiPath資格認定プログラム」を提供している。
「私たちは、スモールスタートして、全社レベルまで自動化できるのが、UiPathの強みの1つと考えていますが、言うまでもなく、RPAのできる事、できない事、実現していくことに腹落ちした人材がどれだけいるかが、その導入成果を大きく左右します。当社のUiPathアカデミーは、全世界で約70万人、日本国内でも約6万3000人以上の受講者がいるなど、多くのRPA人材の育成に貢献しています」(家永氏)
一方、UiPathのコミュニティには、世界中から7万人以上のRPA人材、333の企業が参加し、自動化に関する積極的な議論を展開している。「クルマを運転するには免許証が必要ですが、それだけで『いい運転』ができるとはかぎりません。RPAも同じです」と家永氏。活発な意見を通じてノウハウを共有したり、ブラッシュアップしあったりできるコミュニティは、よりよい自動化を実践していく上で重要な役割を果たす。また、日本には、「UiPath Friends」という、ユーザー主体の日本独自のコミュニティもある。
「UiPath Connect」というマーケットプレイスもある。ここには、ユーザーやパートナーが作成した自動化ワークフローやコンポーネントが投稿されており、企業はそれを自由にダウンロードしたり、カスタマイズしたりして使えるようになっている。既に稼働実績のあるワークフローなどを利用できることは、企業がロボットの内製、RPAの自律的な運用を実践していく上で大きな力になっている。
このように、同社は製品やサービス、教育、コミュニティなど、多角的な取り組みを通じて、顧客企業の自動化に向けた取り組みを支援している。「自動化は、ウィズコロナ時代の重要なテーマの1つです。UiPathは、これからの社会にリモートワークのその先の自動化をRPAとAIで実現することで貢献していきます」と長谷川氏。2020年、急速に進む新しい自動化を、同社はさらにどこまで進めることができるのか。同社のビジネスに注目し続けたい。
※日経コンピュータ2020年10月1日号より転載