木造の可能性を拓くJAS構造材 第2回「構造計算の必要な中大規模木造は品質が明確なJAS構造用製材が有利」

JASの「機械等級区分」に関心が高まり

木材製品のなかでも製材は最も多く使われている身近な存在だが、JAS(日本農林規格)の規格に基づくJAS製材の割合はまだ低い。しかし、普及が期待される中大規模木造を建てることになると、多くの設計者や施工者が「JAS構造用製材」を使うことになりそうだ。そこで、6回シリーズの2回目となる今回は、JAS構造用製材に詳しい2氏に、その基本を教えていただく。
一般社団法人 全国木材検査・研究協会 専務理事 佐藤 雄一 氏

ーー木材の基礎知識として、まず「製材」とは、製材のJASとは何かを教えてください。

佐藤●設計・施工の皆さまからは「JAS構造材を使いたいのだけれど、木材や、製材のJASはわかりにくい」という声をよくお聞きします。木材は、建築物に使用する際に、他の構造材料と比較して、軽いわりに強く、適度の保湿性や調湿機能などがあり、人にとって快適な材料です。特に製材品は、他の木質建材と異なり接着剤を使用して製造しておらず、無垢(むく)の木材という自然素材をそのまま生かして製造しています。

 一方、製材品は、自然素材であるがゆえに、他の構造材料と比べ性質にばらつきがあるという課題も抱えています。このため、JAS規格では、製品の寸法の精度や材面の品質のほか、乾燥処理を行う場合は含水率試験、機械等級区分を行う場合は曲げ試験を行って、性能を明確化しています。JAS規格はこれらの検査方法を定めています。

公益社団法人 日本木材加工技術協会 専務理事 黒田 尚宏 氏

黒田●製材は、林業との関わりがとても深い木材製品でもあります。製材工場は全国各地にあり、山に最も近いところに立地しています。一方、集成材などは大型工場が必要なので、全国でも数が限られます。

 建築との関係について言えば、製材は林業と建物を結ぶ最も身近な存在です。私たちは、製材をもっと都市で使ってほしいと願っていますが、その理由は、そうした建物と林業をつなぐチェーンが失われてしまうと、日本の林業が危うくなるからです。それは単に林業の問題にとどまらず、国土保全など森林が持つ多面的機能の不安にもつながってきます。

JASの木質建材は11品目「構造用製材」が製材のJASに規定

ーーそうした製材の中で、これから普及が期待される「JAS構造用製材」とはどのように位置づけられる木材製品なのですか。

佐藤●JAS法令の改正が2018年4月に施行され、製材品などのこれまでのモノ(最終製品)に対する規格に加えて、製法や輸送方法、試験方法など、多様なJAS規格を設けることができるようになりました。現在、飲食料品や木質建材などで70を超える品目にJAS規格が定められています。このうち木質建材では11品目にJAS規格があり(図1)、この中に製材が含まれています。

 製材のJAS規格(JAS1083)では、「構造用製材は、針葉樹を材料とするものであって、建築物の構造耐力上主要な部分に使用することを主な目的とするもの」と定義しています。

図1:JAS構造用製材の位置付け
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目視等級は3段階、機械等級は6段階で区分

ーー製材のJAS規格の6つのカテゴリーを見ると、構造用製材には「目視等級区分」と「機械等級区分」がありますね。

佐藤●そうですね。構造用製材には2つのものがあって、「目視等級区分」は人の目で材面の品質を等級区分することによって、また「機械等級区分」は非破壊的方法で機械によりヤング係数を測定して等級区分することによって、それぞれ構造的な強度を与えています。

 目視等級区分では、高い曲げ性能を必要とする部分に使用するものを甲種構造材、圧縮性能を必要とする部分に使用するものを乙種構造材とし、それぞれ1級から3級までの3段階に分けています。機械等級区分では、曲げヤング係数の測定値によってE50からE150までの6段階に分けています。

黒田●目視等級は、昔からの経験値に基づいたデータで判定するのに対して、機械等級は1本1本を測定するので、より実際的な強度が示されます。製材は自然素材なので1本ずつ異なりますが、判定結果は6段階の等級に区分します。また、目視等級・機械等級ともに、製材の強度を左右する要素として重要な「含水率」についても規定しています。

ーー目視等級や機械等級で区分されたJAS構造用製材を使うメリットはどこにありますか。

佐藤●建築物の構造計算に使用される基準強度が与えられていることが大きな利点です。目視等級区分、機械等級区分それぞれについて、樹種と等級に応じ、圧縮、引張、曲げなどの基準強度が国土交通省の告示で定められています。

中大規模木造の普及で、JAS構造用製材は伸びる

ーー実際にはどの程度のJAS構造用製材が普及しているのですか。

佐藤●当協会が対象とする北海道を除く都府県におけるJAS製材の認証は年間100万㎥ほどで推移しています。その95%が構造用製材で、さらにその7割近くが機械等級区分によるものです。

ーー現状では、流通する製材に占めるJAS製品の割合は十数%に留まりますが、普及には何が必要でしょうか。

佐藤●現状の比率が低いのは、製材品の多くが、木造2階建て住宅などの建築基準法の「4号特例」の対象となる木造建物で使われているためです。4号建築物は構造強度の審査が省略されているので、必ずしもJAS構造用製材を使う必要がありません。

 しかし、中大規模木造などが増えれば構造計算が必須です。基準強度などの品質性能がはっきりしたJAS構造用製材の需要は今後増してくるのではないでしょうか。

黒田●性能がはっきりしているので、設計時に材料を選ぶ際、適材適所で等級を使い分けることもできます。そのことは、設計の自由度を高めることにもつながります。

佐藤●機械等級区分によるJAS構造用製材に対し、製造事業者や設計者などの皆さんの関心が高まっています。私共のWebサイトでは、JASの製材品を製造する認証工場を都府県ごと、品目ごとに検索できるサイトを設けています(図2)。供給情報を提供することにより、設計者・施工者の皆さんとの連携を強めていきたいと考えています。

図2:Webサイトで製材を扱うJAS認証工場が検索できる
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● 本企画は「JAS構造材利用拡大事業(林野庁補助事業)」で行っています ●シリーズ 木造の可能性を拓くJAS構造材
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